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【旅日記】2024春、福岡。

4月17日
1.
福岡へ。大好きな彼の、ライブに行くため。
昨日は準備が遅くまでかかったのと、興奮してしまって(すでに・笑)なかなか寝つけず、まあでも朝はちゃんと起きられた。

曇り空のようで晴れみたいな外。鹿児島中央駅の改札の近く、カフェに来ている。クロワッサンとホットコーヒーL。まだ、彼の音楽は聴いていない。なぜかは分からないけれど。もったいぶっている。

コーヒーを飲みながら、仕事しないで遊んでいる自分、に後ろめたい気持ちがよぎる。これから新しく仕事をがんばるためのエネルギーにするんだ、そう決めて私に許した旅行なのに。最近は不安ばかりが大きくなって、楽しいことをするのにも、こんなことしてていいのかなという考えがつきまとう。けれどたぶん客観的に見れば、私の新生活はかなり順調だ。それなりの準備をしてきたし、すでに進行中の仕事だってある。

好きな人と会って、好きなものの話をして、好きなことをして暮らせたら。その望みにちゃんと近づいている、はず。

(11:27)

2.
新幹線に乗った。
宿泊券セットで予約したから、指定席で悠々。ギューンとスピードにのる列車。高速道路でぐーんとアクセルを踏み込むときの、感覚を思い出す。耳がつまる。トンネルの中のゴォーっという響き。

イヤホンの中で流れる音楽に、車内放送が割って入る。あ、これ、「いい日旅立ち」のメロディーだ。日本のどこかに、私にも、待っている誰かがいるかもしれない。そう思えてくるメロディーの威力。ポピュラーミュージックの、威力。

(そしてひとつ、詩ができた)

ポピュラーミュージックとか
大衆小説とか
キラキラうるうるの顔をして
すり込む

わたしの遺伝子
わたしのLOW-HIGH
わたしの中の悪魔 パンク

福岡に着いたら、「天神駅の改札口で」(スピッツの歌詞)写真を撮ろう。

(13:40)

3.
博多駅からの、天神駅。地下鉄空港線に乗って。切符を買う時、現金以外の買い方が分からなくて現金で買う。領収書を発行するのを忘れた。

天神駅の出口が分からない。どうにか地上に出られた、と思ったら、天神駅の改札口を撮るのを忘れていたことに気づいた。帰りに、撮れるかなあ…。

歩いてホテルへ、チェックイン。
なかなか居心地の良さそうな部屋でうれしい。帰って来たらバタンキューだろうな。帰って来たときのことを想像して少しドキッとした。どんな夜になっているのだろう。
荷物を最小限にして、カーテンを閉めて、ホテルを出る。来る前から決めていた珈琲店に行くのだ。

(15:33)

4.
珈琲店への道すがら、ライブがあるドラムロゴスの前まで行ってみる。向かいの公園には人がちらほら。リハの音?がする。グッズ販売のセッティングも終わっていた。
公園側から写真を撮る。まだ咲いていた桜の写真も撮る。ツアータイトルと、彼の名前のサインが出ていた。

庵道珈琲店へ。
親不孝通りを通って大きな通りに出て、筋を入るとあった。思っていたよりこじんまりとした珈琲店。ドアを開くとタバコの臭いがした。
あ、そうだった。ネットにも喫煙可ってあったのに忘れてた…。一応、店内で分煙されているようで、禁煙席に通してもらう。
ナポリスパゲッティーやピラフやバーグやカツ…。ランチという名前なのに22:00まで可、のメニューも。さんざん迷ってハーフサイズができると書いてあったピラフランチ(コーヒー付き)を注文する。人参、たまねぎ、マッシュルーム、卵…ケチャップ味の具だくさんピラフと、ハンバーグ。家庭的な味。おいしい。
お腹いっぱい食べて、コーヒーを出してもらう。
コーヒーを飲んだらやっと落ち着いた。あたたかなコーヒーに、ほっとする。

今夜のライブ楽しみだな、という気持ちがじわじわ湧いてくる。
さあ、そろそろ、お手洗いに行って出ようか。

(16:47)

5.
歩いて会場へ。公園で開場を待つ。
風が強くて寒い。待っている人たちがだんだんと増えてくる。整理券番号が呼ばれ始め、わたしも並ぶ。寒い。楽しみ。ドキドキ。

(そしてライブ)

良かった、とても良かった。
やって欲しい曲は特に考えていなかったし、聴けるなら何でもいいと思っていたけれど、来る曲来る曲、全部好きな曲だった。ああ、私、この曲やって欲しかったんだーと、逆に教えてもらった感覚。

やっぱり来てよかったなあ。
買うつもりはなかったけど、Tシャツを買って帰ろう。

(20:55)

6.
ホテルへ帰る。
途中、コンビニに寄ってココアとコーラを買った。部屋に着いてシャワーを浴びて、備え付けのガウンを羽織ってみた。けど暑い。そうだ、さっき買ったTシャツを着よう。買っててよかった。少しだけ、コーラを飲む。

ぽかぽかスッキリ、ベッドで彼のラジオを聴く。そう、今日はラジオのオンエア日でもあるのだ。さっきまで目の前にいた人が、ラジオで喋っている。今聴いているのは過去の彼の声で、一番新しいのはさっきの彼で…。疲れて、頭が回らない。だんだんとゆるんでいく体。と思ったら「緊急地震速報」のアラームが鳴る。ああ、、、やだなあ。旅先でなんて。最近地震、多いよなあ。

「地震、大丈夫だった?!」妹からメッセージ。あー、福岡に来ること言ってなかったんだよね。「実は今福岡で。揺れたけど、大丈夫だよ」「良かった、こっちも大丈夫だよ。なんで福岡にいるのかは知らんけど、気をつけてね」うん、ありがとう。そうね、言ってなかったもんね。ゆっくりおやすみ。

ラジオを最後まで聴いて、寝る。

(0:38)

4/18
7.
朝、チェックアウトして天神駅へ。ロッカーを探す。夕方の新幹線で帰るから、それまでぶらぶらするのだ。
なんとか見つけたロッカーに荷物を入れて、財布を見たら100円玉がない。さっきからロッカーのチェックをしている管理者っぽいおじさんに声をかけてみる。「あの、この辺りで両替できるところ、ご存知ですか?」するとおじさん、「いくらですか、できますよ」とウエストポーチから小銭入れを取り出した。おお、おじさんさすが。両替できる場所を知っているどころか、両替ができるなんて。500円玉を100円5枚に替えてもらう。「ありがとうございました、助かりました」お礼を伝えて、その場を離れる。

まずは、中村晋也さんの「春を奏でる」像を見に、警固公園へ。ロッカーから意外と近かった。公園内に入ると、あれ?ここ、来たことある!と気づく。ずっと忘れていた記憶がよみがえる。思い出すとつらくなるから、思い出すことをやめていた、そういう記憶だった。
「春を奏でる」像の前で、彼の"(歌)詞集”「春」のページを開き、写真を撮る。数年ぶりに、ここで、写真を撮った。

そのまま隣の警固神社を参拝。社務所の中の、ブルーボトルコーヒーへ。

(9:53)

8.
ブルーボトルコーヒーに来るのを楽しみにしていた。友だち(だと私は思っている)のつくる器が使われているのだ。
モーニングプレートの一番高いのと、ブレンドコーヒーを注文する。食事ができるのを待っている間、店内をぼーっと眺める。海外の、おそらくアジアからのお客さんがたくさん。もちろん地元の人、という雰囲気の若者もいる。みんな、清々しい都会の朝を楽しんでいる。
名前を呼ばれてカウンターへ。友だちの器に、色とりどりの野菜とベーコン、ゆで卵、トーストがのっている。コーヒーと、受け取る。置いてあったなにかしらのお酢(オリーブオイルかと思ったら酸っぱかった)をバシャバシャかけて、サラダをほおばる。トーストは、添えてあったアボカドのディップをたっぷり塗って。うん、おいしい。コーヒーも、やっぱりおいしい。

コーヒーを飲みながら、すべてがうまくいってるのかもしれない、と思った。福岡に来たのは大好きな彼、の音楽を聴くためで、警固公園のすぐそばのカフェに来たのは、友だちの器が使われていると聞いたから、だった。そして来てみたら、そこはもうすでに来たことのある場所で、忘れたはずの思い出の場所で、今、私はその思い出と向き合おうとしているタイミングで。この旅で思い出をたどるつもりなんてなかったのに、いつの間にか私は、この場所で、私の歩いてきた道をたどっている。まるで導かれたかのように、私の人生を正解にするための、旅をしている。
なんだ、私、大丈夫なんじゃん。

イヤホンを外し、ケースにしまうと、店内にJacob Collierの曲が流れ始めた。軽やかであかるい、私のお気に入り。
なんかもう、ありがとうという気持ちだな。みんなに、ありがとうという気持ちだな。この世界は私にやさしい。

もう1杯コーヒーを飲もうと、再びレジに並ぶ。来たときよりも人が増えている。
受け取りの時、店員さんに「2杯目ですね。ゆっくりしていってください」と言われた。うれしくて、「ありがとうございます」と返す。きっと私も、笑顔だったと思う。

(12:00)

9.
店を出て、ぶらぶら、迷いながら天神の街を歩いた。途中で、仕事の参考にとパンフレットをいくつかもらった。なんとなく、これから度々通いそうだから、だいたいの場所を覚えていきたいなあと思う。
久しぶりすぎる都会はやっぱり疲れた。けれど休み休み歩いて、ここ良さそうというお店だけに入って、を繰り返していれば、思ったよりも居心地がいいのかもしれない。すてきなお店ですてきなものが売っていて、お店の方もすてきで。ちょっとした会話をするのが楽しくて、地元ではなかなか見つけられない「手頃なお値段でビビビとくるもの」との出合いもあった。今はまだ知らない街でも、そうやって、だんだんと私の居場所が見つかっていくんだろう。

ロッカーで荷物を出し、地下鉄で博多駅へ向かう。博多駅で新幹線への改札をくぐり、ホームに立つ。
やってきた列車に乗り込んで座席につくと、少し落ち着いた。
帰ったら、あの人とあの人にこの旅の話をしよう。楽しみだなあ。あ、そういえば天神駅の改札口を撮るのを忘れた。まあいっか。きっとまた、来るだろうから。

(16:01)

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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