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お酒を飲みながら、人生で熱狂した瞬間を書きたい

『人生の価値』はどれだけ本気になったか、どれだけ熱を持てたかで値打ちがつくと思っている。今まででどれだけ本気になれたことがあっただろうか。頭が全く働かなくなり、身体がつかれているのに心だけは燃え上がってアドレナリンが出まくった経験をしたことがあるだろうか。

思い返してみると意外にすぐでてくる。

大学のころは、1年間色々あがいて仕上げた卒業研究、先生の思い付きで1週間本気で文化祭に挑んだコンテンツ制作、学科選抜がかかった課題授業、面白いものを作りたいと必死に試行錯誤したビデオ作成、どれも最高の思い出だ。

考えるだけであのときの情熱や思いが今でも込みあがってくる。

先生の思い付きで1週間本気で文化祭に挑んだコンテンツ制作について書きたい

あれは金曜の夕方ごろだった。3回生が文化祭の準備を進めている中、当時4回生の私は卒業研究のため大学に残ってトイレ掃除のVR開発していた。

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ある日、先生がやってきた。

先生は気まぐれな人物だ。自分が話し終えたかと思うとすぐにどこかに行って仕事をするし、寝ないで研究に明け暮れたりしている人だが、生徒への気配りは見上げるところがある。

週次の進捗ではほぼ毎回出席するし、都度コメントや方向性をアドバイスしてくれる。

そんな人がたまにやってきて様子を見に来る。いつものことだと思っていた。

「たなかくん、これVRじゃなくて現実でAR投影させたらおもしろいんじゃない?」

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そうだ、絶対に面白い。

「トイレは特に夜とか小さい子が怖がるからね。幼児向けのほうが受けるから、対象年齢は未就学児くらいで安心材料にかわいいものをつけて、、、」と議論が膨らむ。先生と私が唯一分かり合える点は走り出したら止まらないというところだ。

片方から見ればどちらか止まれよと言いたくなるような、そんな白熱した議論を続けていた。

先生と話すうちにターゲット層、目的、意義、技術面のカバーなどのコンテンツが机上でできてしまっていた。

秋らしさが徐々に見え始める10月のころ、その日の夜は少し寒かった。自転車をこいで帰る私の頭には先生と話したことでいっぱいだ。胸には火がついている。寒さをもろともせず、どんなに荒い風が吹いても自分が消そうとしない限りは消えない火だということを僕は知っていた。そして先生も知っていたに違いない。

「これができたら絶対に面白い、やらない手はない。」そう考えた。

タイムリミットは休日含めて7日。

それを完成させるには1人では時間が足りない。その日の晩、手伝ってくれる人を呼びかけてどうにか1人集まった。7日という時間で2人が完成できるか不安だった。しかし、こういうときの私は意外にポジティブだ。

男ならできるか、どうかじゃない、やるかやらないかだ。

そこからは本気だった。

現実でトイレを作るのは難しいので段ボールで疑似的に作成し、そこにAR投影させようと考えた。大学周辺のスーパーに押し入り、段ボールやいらなくなったものをかき集めた。当然、断られることもあるし、受け入れてくれるところもあった。

断られればへこんだり傷ついたりするがそんなことは構ってはいられなかった。とにかく、急いでいるのだ。全てかすり傷

もうあと数日しかない。そんなときだった。

「あれ、たなかくん何作ってるの?」

どうやら神も私のことが気になるらしい。

ドタバタしている私を見かねたゼミのメンバーが次第に作っているトイレに対して興味を持ち始めた。たかがトイレだが立派なトイレだ。用は足せないダンボールのトイレだが本気で作っている。

私の熱が伝播しているのだ、それで皆が興味を持ってよってきているのだ。そう感じた。

あと数日しかない中でどう考えても間に合わない。事の説明と概要を話すと手伝ってくれるようで心底、感謝した。

この時に口癖にしていた言葉が『持つべきものは友』

完成と夜明け

みんなの甲斐があって7日で走りきることができた。犬も歩けば棒に当たるとはよく言ったものだ。何かをしていると幸運が向こうからやってくる。

歩かないと棒には当たらないのだろう。今の自分と重ねて見てみると、全然歩いていないことがわかった。自分の足跡が見えないのだ。

当時、文化祭の出し物と卒業研究を控えていたので夜通しで寝ずに熱中した。人生で40時間も起きていたのは今も昔もこのときが始めてだ。

その時の感覚は、身体は重くて疲労しており、頭もあまり働ていないように感じるが、心は熱く、まったく眠気がしなかった。

刻々と眠りに近づいているのがわかり静かに目を閉じたが、翌朝になって目をあけると消えたはずに火はまだかすかに残っていたので、最後は少しの余韻を楽しんだ。

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