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一泊二日でウトロ・斜里・網走に行ってみた。知床の『大自然に圧倒される』だけじゃない旅。【後編】(廣岡俊光)

(前編あらすじ)早朝札幌を出発し、飛行機とレンタカーであっというまに知床到着、『クマ活』でヒグマのことをしっかりと学び、ビブグルマンのラーメンをたいらげ、ワークショップで楽しく考えながら発表もして、美味しいコーヒーと写真絵本で野生動物たちに思いをはせ、めちゃくちゃ面白いメンバーとおしゃべりしました。さあ、夜の部が始まります。

 ※たった数行でまとめられることを何千字も書いてる自分はなにもの・・・?前編はこちらからお楽しみいただけます。

■ トコさんと強烈エピで飲まさる夜

 ホテルに戻って、夕食に美味しいバイキングを堪能したあとは、ホテルから徒歩3分の『ピリカデリック』へGooooo~!!

 いわゆる観光地を訪れると、食事もホテルでとって、なかなか街に出ていくという選択肢はないのではないでしょうか。でもウトロには、地元の人たちも旅人も集うピリカデリックという店があって、夜な夜な楽しい話で盛り上がっていると色んな方から聞いていました。今回必ず行くぞ!と狙いを定めていたのです。


 ここは11月に北見でお邪魔したダイニングバーサイケデリックのオーナーで、知床ガイドのピエさんこと、三浦隆浩さんのお店。ピエさんは北見とウトロ、二拠点な方なのです。(今回は北見にいらっしゃったので残念ながらお会いすることはできませんでした。ピエさんまたぜひ~!)

 お店に入ると・・・「うわ~、めちゃくちゃいい・・・」

 旅先にこんな酒場あったらいいなを詰め込んだ、すてきな雰囲気。カウンターでは北こぶしの支配人(お世話になりました!)や、道外からお客さんを連れてきたガイドの方など、みなさん思い思いに盛り上がっています。と、そこへ昼間にお邪魔したカフェcoffee albireoでご挨拶させていただいた寺山元さんが、奥様と一緒に来店されました。

 みなさん突然ですが、知床トコさんご存知ですか?

 寺山さんは一般社団法人知床しゃりの事務局長として、地域資源のブランド化に取り組まれている方です。このかわいいキャラクター、トコさんを使った地域ブランディングにも取り組んでいる・・・というと何だか難しい話に聞こえますが、百聞は一見にしかず。知床のさまざまな場所で出会えるトコさんのほんの一部をご覧下さい。

 めちゃくちゃカワイイ・・・!
   家にお迎えしたくなる・・・!

結果お迎えしました!
ペロ(コーギー♀3歳)仲良くね。

 家だけでは飽き足らず、仕事中でもトコさんを愛でながらコーヒーを口にしつつ、オホーツクの雄大な海と、森の動物たちにおもいを馳せたいんじゃ!!(岡山弁)

 寺山さんの前職はアジア辺境の地を案内する旅行代理店。ネパール、モンゴル、チベット、ブータン、モロッコ、中央アジアなど。その頃のエピソードは私にとっては旅行代理店スタッフのそれではなく、完全に冒険家のもの。特に山絡みのエピソードは強烈です。

  • 『2000年、ヒマラヤのチョオーユー峰(8,201m)山頂からスキー下山』
    8,000m峰山頂からのスキー滑降は当時日本人としては初めての快挙…レジェンドすぎる!!

  • 『2年前、雪崩に巻き込まれて九死に一生を得た』
    雪崩って本当に怖いですね。誰もが経験できないことの詳細を明るく語ってくださる寺山さん。だからこそ余計にリアルでした…(笑)

 他にも一般人の想像をはるかに超える、自然と対峙しまくってきたからこそのすべらない話がつぎつぎと繰り出されます。それをニコニコと聞いてる奥様。す、すごい。お酒が進んでしょうがない(笑)。

 ピリカデリックで出会った美味しい一杯がありました。『にんじんビール』。にんじんを材料に使ったクラフトビールです。実は斜里は道内でも大規模化が進んでいる地域で、特ににんじんは十勝の音更、幕別などに次ぐ道内有数、オホーツク最大の産地だそうです。

 「ニンジンを、主役に!」
   地域が誇る資源をブランド化したビールなんです。

ピリカデリックさんでにんじんビール🥕🍺 . 皆さまのおかげで大好評のようです😊 . 背後の席にいた東京からのお客様は何と!5杯も飲んでくださいました😳 . 現在、にんじんビールは斜里町ウトロのピリカデリックさんだけでお楽しみいただけます。 . 機会がございましたぜひお試しください🔥 . #北海道 #斜里町 #ウトロ #ピリカデリック #にんじんビール #クラフトビール #ニンジンを主役に #澄川麦酒

Posted by Hokkaido Beer Porter on Monday, November 15, 2021

 私もこの夜、タップで3杯ほどいただきました。にんじんとしての主張はほのかな薫りとやさしい甘さ。想像以上に口当たりがよくてするするといけます。本当に美味しい!これは完全に飲まさるやつ!!

 ピリカデリック店長かねやんこと金田真由美さん、ありがとうございました。決めました、わたくし札幌からピリカ常連になります(笑)。また近いうちに皆さんと乾杯することを誓います。

   こうやって、最高に楽しい夜は更けていったのでした。

■ 知床の森を歩く

 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

 朝です。

 あたり一面、雪景色に変わっていました。

 サウナ、5セット。世界自然遺産の風に吹かれる外気浴で、完璧にととのいます。サウナーはもちろん、ちょっと興味があるという方も一度入るべきです。

 再び村上さんと合流。前日から「なにをするかは天気を見て決めましょう」と話していたのですが、青空が広がってきました。車で10分ほど走ったところにある知床自然センターへと向かいます。

 村上さん「天気もいいし、知床の森を歩きませんか?」

 歩きたい。知床の森、歩きたい!

 往復40分ほどの『フレペの滝』へ向かうことに。

 森と開拓の話(知床の森はそのイメージから自然そのままの森と思われがちですが、一度は人が開拓を目指して樹木を伐採した人の手が入った森です。だからこそ尊い…)、木々の植生の話など興味深い話の数々。

   さらには動物のあしあとを見つけるたびに「これはキツネですね」「これはリス」と教えてくれながら進んでいく村上さん。さすが森を歩きなれてるなぁ。なんて思ってたら、あっというまにフレペの滝に到着です。

フレペの滝

 遊覧船から見たことはありましたが、上から見る滝もすごい迫力。強風にあおられて下まで落ちきる前に霧状になって空中に広がっていく。なんとも神秘的な光景でした。

■ 接近。

 同じようにいろんな話をしながら、歩を進めていた帰り道。

 村上さんが急に立ち止まりました。

 いったいどうし・・・

 さっきまでのテンションではありません。

 村上さん「これは・・・」

 ・・・。 

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

 お分かりだろうか・・・・・・

「これは・・・クマ・・・ですね・・・」

 ええ。

 空気で何となく察しましたよ。。。

   「さっき通った時にはこのあしあとは無かったので・・・」
   「ここ15分くらいの間に通ったってことですね」
   「私たちと同じほうに向かってますね」

 空は青空。澄み渡る空気。
 たんたんと状況を分析する村上さん。
 つい数分前までとは全く違う空気に包まれます。

 大きな声を出しながら、歩く。

 歩く。

 歩く。

 歩く。

 歩く。

 時間にして約5分ほどだったと思います。
 それはそれは長い時間に感じました。

 ・・・・・・。

 視線の先に、人が見えた・・・

 助かった・・・

 ・・・・・・。

 なにかぶらさがってる・・・?

 息を切らして自然センターに戻ると、そこにはきのう『クマ活』でお世話になった佐藤喜和先生が。ごあいさつもとりあえず、いまなにがあったのかを報告すると「それはいい経験したね(笑)」

!?

 自分たちが森に入って20分後くらいにルート内でヒグマの目撃報告があったため、遊歩道は立ち入り禁止に。現在スタッフが調査に入っていて、おかげで先生たちは森に入れなかったのだとか。

(左から)廣岡、ボンバさん、佐藤先生、奥様

 この世界でふつうに生活していて、なかなか感じることのない、自分が生きていることのリアル・・・鳥肌とか恐怖とかを超えた、なにか血管がフツフツ沸き立つような、『生(せい)』を求めるような自我の主張・・・

 とても落ち着いていたように見えた村上さんも、あとから聞くとあの時すさまじい緊張が走ったそうです。それを感じさせなかったのは同行する人たち(今回はわたし)がパニックにならないようにという配慮だったそうです。みなさんも森を歩くときは安全第一でお願いします。

   あらためて佐藤先生ファミリーの皆さん、ありがとうございました。そして知床財団のボンバさんこと中西将尚さん、森のお話めちゃくちゃ興味深かったです。今度もっと聞かせてください。ありがとうございました~!

 さて。知床の森歩きの発着点として親しまれているこちらの知床自然センターには、札幌で大人気のカフェ Baristart Coffee が入っています。

THE NORTH FACE / HELLY HANSEN のショップも入っています。

 天候の影響や、今回のようにクマが出て森を歩けない時だって大丈夫。大迫力の映像で知床を堪能できるMEGAスクリーン「KINETOKO」が皆さんをお待ちしています。

 ここで村上さんとはお別れ。これから向かう斜里・網走界隈の皆さまにも事前に連絡をしてつないでくれているとのことでありがたいかぎり。感謝は最後にまとめます。

■ 2つのマチを包み込むまち斜里

   プユニ岬から、ウトロのまちを望む。いい景色です。ようやくこれぞ知床な画像ですよ~(笑)

 立て続けにこれぞ!な画像。もう全国的にも有名になりましたよね。『天に続く道』。トコさんもいます。

飽きない光景です…

 斜里町は町役場などがある斜里中心部と、ホテルが立ち並び観光客が訪れるウトロにエリアが分かれていて、行き来するには車で約40分かかります。

   街中に山小屋が現れました。『ペンションしれとこくらぶ』です。ここで待ち合わせしていたのが、2020年に清里町出身のパートナーと一緒に東京から斜里へ移住してきたミュージシャンのAIR田さん。ウトロの知床世界遺産センターで働きながら、東京時代から続ける音楽制作、さらには『地図に無い場所』という置物作り。とってもやさしい雰囲気をまとった方です。

 今年7月には斜里の北のアルプ美術館(山の文芸誌『アルプ』の資料、串田孫一氏の著書など展示)で、前編でご紹介した中山よしこさんと一緒にアルバムのリリースイベントも開催しました。

 しれとこくらぶの砂山裕子さんにも加わっていただいて、いろんな話をしました。

 斜里岳の壮観
   オオワシやオオタカが羽をひろげる空
 ウトロまでの道のりの心奪われる美しさ
 流氷の鳴く音

 自然やそれにかかわる仕事が、この地を目指す旅人や移住を決める人をひきつける。それはまぎれもない事実です。ただこの雄大な自然も実は斜里というまちのひとつの側面でしかなくて、それを内包する日常の風景こそがこのまちの魅力だということをじわじわと理解しました。

 知床と聞いて多くの人がイメージするのは、やっぱりウトロエリアのことだと思います。わたし自身この地に足を運ぶのは3度目ですが、今回初めて斜里の中心部に降り立ちました。

 実際に暮らす人たちの話を聞けば聞くほど、たしかに存在するこのまちの魅力を、まちのことを、もっともっと知りたくなります。

 掲げられている『知床』『世界遺産』というのは斜里、オホーツク、道東、北海道にとって、日本にとって大きな大きな看板です。と同時に、そこには1年365日くらしを紡いでいる人たちがいます。その人たちの顔が見えて、ことばをかわした瞬間に、斜里というまちと自分とのあいだに横たわっていた距離を一気に飛び越えた感覚は心地よいものでした。

 Air田さん、今度は教えていただいた深夜食堂のような居酒屋の激旨タン刺しでぜひご一緒しましょう~!砂山裕子さん、栄嗣さんご夫妻。お昼時にとりとめもない話にお付き合いいただき本当にありがとうございました~!のんびりと、いろんなことを考えるきっかけになりました。

 網走に向かう途中、しれとこくらぶで皆さんに激推しされたサチク(佐々木種畜牧場)さんの豚肉『麦王』を購入!

 自宅に送って後日しゃぶしゃぶにしていただいたところ、完全優勝しました。ありがとうございます。おめでとうございます。これはリピート確実です!

■ オホーツクの『場』

 斜里から網走に向かう途中、オホーツクのくらしにまつわるセレクトショップ『uminoba』さんに立ち寄りました。めちゃくちゃお洒落な空間です。

 11月に北見・津別をめぐったときにも、uminobaの名前をいろんな人が口にしていました。前回の旅と今回の旅で出会ったいろいろなモノがここには集まっていて、あの人の顔やこの人の顔を思い出して、なんだかうれしくなります。

斜里と網走のあいだ、オホーツク海に面したお店

 お隣のスペースレンタル、シェアキッチン、コワーキングスペースの『マ・シマシマ』さんも、とても魅力的な場づくりをされていると伺っていました。またつぎに網走を訪れた際にはぜひお邪魔したい場所です。

■ 網走がいま熱い…!

 網走市内にオープンしたばかりの炉ばた燈へ。ここでは3人の方とお会いすることができました。

  • おおぞら三昧・代表 川村淳さん
    某番組でマツコさんにもめちゃくちゃいい反応をもらっていた『しじ美醤油』が爆発的ヒット中です。

※プレゼントキャンペーンはすでに終了しています

  • 大橋牧場・3代目 大橋遼太さん
    大空町東藻琴で知床牛を育て販売しています。ヤバい肉。ヤバい意匠。本当にヤバい精肉店です。

 UHB制作番組『EXILE TRIBE 男旅』では、EXILE SHOKICHIさんのブランド牛生産にご協力いただいています。お世話になっています!

https://twitter.com/exile_otokotabi/status/1469892090390007812?s=20

  • 牛渡水産・代表取締役 牛渡貴士さん
    蟹加工マイスター。お邪魔した炉ばた燈も経営されています。インスタ画像の左が川村淳さんです(笑)

 炉ばた燈の推しメニュー『イバラガニの釜めし』。道外ではもちろん、北海道内でもなかなかお目にかかることができないのは、専用漁船が網走に二隻しかないから。そんな貴重なイバラガニがドーン!!

知床和牛の上品なお味よ…

 エゾシカ肉の担々麺とルーロー飯、ぎょうざ。これらは網走にキャンパスをおく東京農業大 生物産業学部の学生たちと開発したメニューです。9割が道外出身という東農大の学生たちの発想を取り入れながら、一緒に店づくり、名物づくり、そして網走のPRをしていこうという考え方には共感しかありません。

今度は泊まりでビールと一緒にいただきます…!

 帰りの女満別空港のショップで、津別名物クマヤキのサブレが堂々と並んでいる光景を目にして、旅の記憶が溶け合うような感覚を味わいました。北海道のいろんな場所を自分のなかで溶け合わせながら、そこにいる皆さんの顔を思い浮かべたいと思います。

■ ありがとうございました。

 さいごに。今回の旅を組み立ててくれた村上晴花さん、本当にありがとう!前回の中西拓郎くんの時と同様、どこにお邪魔してもやっぱり自分たちのことはさておき・・・

「いろんなコミュニティを飛び回る村上さんすごい」
「晴花ちゃんのコミュ力、はんぱない」
そして本人は恐縮・・・というド定番の流れ(笑)

 もう道東名物、道東しぐさと言ってもいいくらいの、この一連の現象に早めに名前をつけるべきだと思います(1か月ぶり2回目の提言)。

 旅をnoteにまとめる中であらためて連絡をとらせていただいた佐藤先生から「素敵な出会い、村上に感謝です」ということばをいただきました。自分も本当にそう思います。人をつなぐ人に導かれて、今回もたくさんの人と出会い話をすることができました。村上さん、本当にありがとう~!!

またウトロでみなさんと語りたい。
斜里に泊まってみなさんと語りたい。
網走に泊まってみなさんと語りたい。

会いに行くたびに、会いたい人が増えていく。
まだまだこの旅を続けていきます。