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呪術廻戦 感想まとめ

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呪術廻戦の感想記事のまとめです。大幅加筆修正版は有料マガジン「瞼の裏で覚えてる」「瞳の奥に眠らせて」から読めます。
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#呪術廻戦

乙骨憂太と五条悟と人でなしの話

※単行本20巻までの情報に基づきます。だいたい妄想と幻覚です。 ※個人の感想です。乙骨のキャラについてはまだ掴みかねているところがあります(今後の活躍に期待)。 サマリー:人の姿をして人の振りをしているだけの人でなし五条悟を唯一人間扱いした乙骨憂太の成長っぷりに感服した 先にこちらの記事を読むとよりわかりやすいかと思います。 五条悟の頑丈さと悲劇的要素20巻の乙骨の台詞「先生に二度も親友を殺させない」は、乙骨の成長を感じると共に、五条の人間関係の変化を感じた。 五条悟

日車寛見と夏油傑の話

※単行本19巻までの情報で書いています。 ※個人の感想です。 日車寛見と夏油傑は、崇高な目的意識を持ちながらも、救うべき人の醜さに直面して絶望したという共通点がある。 夏油が救うべき弱者の醜悪さに耐えかねて、自らの職務に疑問を抱いた結果、高専を出奔したのは既にたっぷり語られたところだが、弁護士であった日車も依頼人に逆恨みされて絶望する点は夏油とよく似ている。 しかし、二人の選んだ結末は違っていた。 弱者救済とその苦悩弱者は「可哀想」な存在だが、同時に「可愛い」とは限らない

禪院直哉と禪院という家の話

※単行本19巻までの情報で書いています。 幼少期の万能感と甚爾への憧れについて禪院直哉は26代当主・直毘人の息子であり、同じ術式を受け継いでいる。直毘人の遺言がなければ当主になっていたようで、だからこそ地位を横からかっさらっていった伏黒恵を殺そうとする。 直哉はいわずもがなのクズキャラだが、幼少期からなかなかにクズの素養を見せている。 まず、甚爾との出会いからして性格がねじ曲がっている(禪院家の一員としては当然かもしれないが)。 最初、直哉は甚爾を蔑むつもりで近づいた。

禪院甚爾と伏黒甚爾の話

※単行本19巻までの情報で書いています。 伏黒甚爾(旧姓:禪院甚爾)は恵の父親だが、父親らしい振る舞いを作中ですることはほとんどない。甚爾は有り体に言えば息子を虐待(ネグレクト)し、好き勝手に振る舞ったあげく、息子を放り出して死んでしまったクズの父親である。 ただ、彼に親としての情が一切なかったかと言えば、そうではないのだと思う。人として欠落している彼もまた、ある側面においては「弱者」で、悲劇を演じる一人であった。 禪院甚爾と伏黒甚爾禪院家における呪術師ではない者 まず

七海建人と夏油傑の「地獄」の話

※単行本15巻までの情報に基づきます。 ※だいたい全部妄想と幻覚です。 七海と夏油は共に呪術師になる動機を失い、呪術師であることを諦めたという点でよく似ている。 もちろん、二人がその後たどった道は似ても似つかない。夏油は選民思想(もしくは優生思想)に囚われ、呪詛師に堕ちて非術師の鏖殺を決断した。一方の七海は、いったん普通の社会に出て行った後、舞い戻ってきて再び呪術師となった。 この二人の差は、「諦めの良さ」と「感謝の言葉の有無」なのではないかと思う。 七海の諦めの良さと「

伏黒恵と伏黒津美紀の「姉弟」の話

恵と津美紀の関係性について、一から十まで妄想と幻覚。 ※単行本15巻、ファンブックまでの情報で書いています。 ※以下の記事の補足的内容です。 恵と津美紀は親の再婚で義理の姉弟になった。ほどなくして両親は蒸発し(実際には恵の父親は五条に殺されたわけだが)、二人の元には五条が訪れる。 五条のおかげで金銭的には不自由しなくなった二人だが、津美紀が呪われて眠り続けるまでの関係は、とても危ういものだったように見える。 恵は将来呪術師になるという一種の「契約」を五条と交わし、引き換

夏油傑の憧れと理想の話

夏油の着ている袈裟が「五条袈裟」という設定が意図的だったということで、それにまつわる話。 サマリー:隣の芝生は青いけれど、五条悟は夏油傑にはなれなくて、夏油傑は五条悟にはなれなかった。 ※単行本15巻、ファンブックまでの情報に基づきます。 ※だいたい幻覚です。昨日の今日で勢いで書きました。 ※3/21修正 これの続きみたいな話です。というか一連のnoteをお読みになった方がわかりやすいかと思います。 五条と夏油には、互いにないものに憧れて真似しているうちに互いが入れ替わ

五条悟の善悪の判断について(マシュマロ返信)

サマリー: 五条にはもとから基本的な社会規範が備わっていたけれど、夏油と出会ってからは夏油に指針を委ねるようになり、そして夏油が人を殺したところで「夏油に頼りきってはいけない」と目が覚めたのではないでしょうか。 マシュマロ: うぐひすさん、いつもツイートやnoteを楽しく見させて貰ってます!ファンブックでの「善悪の指針」発言は私も衝撃でした。しかし、私の中で一部解釈が定まっていないところがあります。それが新宿で五条が夏油の仕打ちを「悪」だと断じたところで私自身はこの行動は五

呪術廻戦ファンブックメモ/五条悟の善悪の判断基準について他

※自分用備忘録。思い立ったら加筆します。 ※一から十まで妄想です。 3/20加筆修正 ①五条悟の善悪の判断基準について五条悟には強固に社会規範が枷として嵌められており、それが彼を社会性の生き物として規定し、人外の化け物の人たらしめているのではないか、と今まで推測していた。 そこへ「五条は夏油の判断を善悪の指針にしていた節がある」「夏油出奔後の方がしっかりしている」ですよ? とんでもねえな!!! 今までnoteにさんざん好き勝手に書いてきたところでこれですよ。解釈一致しまくり

五条悟と夏油傑の「親友」の話

サブタイトル: 夏油傑が最初で最後の唯一だった五条悟と、五条悟を最初で最後のたった一人にした夏油傑の話 サマリー: 生まれて初めてらしき友人に大はしゃぎでべったりのように見えて、その実、何にも寄りかからないで立てる五条と、世間知らずっぽい友人の手を引いているつもりが置いて行かれてしまった夏油の悲劇的物語 ※一から十まで妄想と幻覚です。 ※単行本14巻までの情報に基づきます。 「五条と夏油の友情の定義もすれ違っている」と下記の記事でさらっと書いて、その後、本でも説明しそび

肉体と魂と心の話、人の呪いたる「真人」を添えて

※単行本13巻までの情報に基づきます。 ※SF的な話題と語用論(言語学)の話題が混じります。書いている人間は象牙の塔で言語学やってました。 肉体が先か、魂が先か。心は幻想か。 「人が人を憎み恐れた腹から産まれた呪い」真人は、魂が肉体より先にあると定義し、心を魂の代謝――まやかしと呼ぶ。 はたして、本当に魂は肉体に先んじる代物なのか。心は本当にまやかしなのか。 肉体と魂、どちらが先か「肉体に魂が宿るのかな? それとも魂に体が肉付けされているのかな?」 「前者」 「不正解。

五条悟の「青春」、あるいは「心」と「意味」と「規範」の話

※単行本13巻までの情報から推察した内容に妄想と幻覚をミルフィーユのごとく重ねています。 そろそろ真面目に五条悟への考察を書いておこうと思ったら8000字近くになった。どうして。 「五条悟と夏油傑の『青春』の話」と「夏油傑の差別感情の話」の続きなので、先にお読みいただくとわかりやすいと思います。 (ちょっと矛盾していることを書いているような気がしますが、気が変わったということでお願いします。そのうちまとめて修正します) 五条の「青春」とは五条にとっての青春はモラトリアム

夏油傑の差別感情の話

※単行本13巻までの情報で書いている自分用メモ ※割とデリケートな話題を含みます。差別を肯定する意図はありません。個人の感想です。書いている人間はそういう方向の研究をしていたので、そういう方向に偏っているのはご容赦ください。 『呪術廻戦』はけっこう丁寧に時代を描写しているな、と感じる瞬間がある。 わかりやすい例だと、スマホとガラケー。言うまでもないことだけど、小道具としてはとても大切な要素だ。 (夏油がスライド式ケータイを持っていたことにとてつもない懐かしさを覚えました。友

虎杖と伏黒の「手の届く範囲」について

※単行本13巻までの情報で書いている。思い立ったら加筆修正します ※アニメ派には一部ネタバレだよ! 虎杖も伏黒も、すべての人を救えるわけではないことを弁えている。ただ、その区切り方が違う。 虎杖は自分の手の届く範囲で命を選別しないで救おうとするのに対し、伏黒は更に命の価値に順位をつけて上位(自分が善人と定義した人)を救おうとする。 虎杖の「手の届く範囲」「誰もかもを救うことはできない」のを最初から理解している主人公はとても珍しい気がする。もちろんこれはごく当たり前のことで