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管理職のマネジメント力強化。本当に必要な「打ち手」とは?

経営や組織運営を支える役割を期待される「管理職」。多くの企業で管理職の負担増やマネジメント力強化などの課題が聞かれます。そんななか、企業が今「打つべき手」はなんなのか──国内だけでも1万人以上の従業員を抱える、パナソニック インダストリー株式会社が目指すマネジメントの在り方と支援からヒントを探ります。

企業名:パナソニック インダストリー株式会社
事業内容:電気部品・電子部品・制御機器・電子材料等の開発・製造・販売
従業員数:約13,000人(国内)、約29,000人(海外) ※2023年4月1日時点

<コーチング導入の詳細>
対象者:部長、課長
対象人数:100名
導入期間:1年間(1期)


真逆の時代に挟まれた管理職。「教える」から「引き出す」マネジメントへ


――業界や会社の規模に関わらず、最近はあらゆる企業で管理職のマネジメント力強化が課題になっているというお声をいただきます。どの企業もなんらかの過渡期を迎えているのかなと思うのですが、黒木さんはどうお考えですか?

黒木さん:今の時代、部長や課長をはじめとする管理職に求められるマネジメントの難易度は非常に高いと感じます。というのも、管理職に就いている多くの人たちはちょうど真逆の時代に挟まれた世代なんです。「同一」であることが求められる時代と「多様性」が求められる時代、その両方を当事者として経験しています。

これまで自分が受けてきたものとこれから自分が与えるべきものが違うのだから、どうすればいいのかと悩むのは当然ですし、それが組織の課題として浮き上がってきているのだと思います。

――そもそも「今の管理職には難易度の高いことが求められている」という前提を認識することが、まず一歩ですね。昔と今で、マネジメントの在り方はどう変わったと思われますか?

黒木さん:多様性のある組織では、これまでのような画一的なマネジメントで対応していくのは難しく、よりパーソナルなマネジメントが必要とされていると思います。

私が入社した頃は、今のように中途採用が活発な時代ではありませんでした。ほとんどの社員が新卒一括採用で一斉に教育訓練を受けて経営理念や仕事の仕方を学んでいたんです。でも、それがいつからか「どこを切っても同じ、金太郎飴」と揶揄されるようになりました。経営理念が浸透していることの裏返しとも言えるので悪いことばかりではないのですが…。時代がダイバーシティ重視になり組織が変わる必要性が出てきて、当社でも2000年以降、当時のパナソニック電工や三洋電機との事業統合・組織再編等を経て現在のパナソニックインダストリーの姿となっています。

結果的に、今はさまざまな価値観を持つ人がパナソニックグループの一員となって働いています。当社も、新卒以上に中途採用で入社してくる人の数も増えました。中途社員は、当社に共感して門を叩いてくれたという意味では同じビジョンや考えを共有していると思いますが、新卒のようにまっさらな状態で入ってくるわけではありません。前職で身を置いてきた環境も培った価値観もさまざま。異なるバックグラウンドやベースを持つ人たちを、1つのマネジメント方法で束ねられるはずもありません。これからは、上意下達に「教えるマネジメント」ではなく、個々に寄り添い「引き出すマネジメント」が求められていると思います。

管理職に必要なのは「コーチング研修」ではなく「コーチング体験」


――「引き出すマネジメント」として、mentoの1:1のコーチングを導入していただいたということですね。

黒木さん:はい。エンゲージメントの高い職場に共通して感じるのは、メンバーそれぞれが思いを持ち、行動を起こしていること。そのためには、メンバーの特性を見定め、思いを引き出し、行動を変えていくパーソナルなマネジメントが必要なのではないかと思っています。

「引き出すマネジメント」「パーソナルなマネジメント」が必要だということは多くの企業や経営層が気づいていると思うのですが、重要なのはマネジメントの方法や考え方を教えるだけでは管理職は実践できるまでに至らないということです。なぜなら、管理職の誰もが自分の内的動機と業務ミッションを繋げるような「引き出される体験」をしたことがないからです。

当社では、グループ創業者の松下幸之助が残した言葉「物をつくる前にまず人をつくる」にもあるように、人材を組織の中心に据えるというカルチャーが根づいています。そのため、人材への投資には積極的で、管理職に限らず社員を対象にさまざまな研修や学びを促進するためのプラットフォームを用意しています。コーチングに関しても、「コーチングとは何か」「傾聴をするためのhow」などを学ぶコーチングの研修を何度も行ってきました。

ただ、“1:多数”で学ぶ一斉研修は知識をインプットするのには有効なのですが、今の管理職に足りない「引き出される」という体験には至らないと気づいたんです。「自らが体験せずして、人に与えることはできない」ということで、今回初めて一人ひとりに寄り添った“1:1”の支援を導入しました。「なるほど、これが引き出されるということか」「これがコーチングか」と、コーチとの対話や問いから潜在的な気づきを得て、心理的にも行動にも変化を起こす体験をしてもらうことが目的でした。

管理職を救うのは、日々の課題に伴走できる支援


――今回、部長・課長100名を対象に1年間を1期として導入いただきました。継続して2期の導入も決定いただきましたが、管理職へのパーソナルな支援の結果、どのようなことが見えてきましたか?

黒木さん:知識や教育以上に、管理職には、日常的に実践的に扱える「武器」を授けることが何より課題解決になるのではと感じました。

管理職は、事業目標の達成、他部署との連携、さらには人間関係などあらゆるマネジメントが求められ、それぞれに大小さまざまな課題が押し寄せてきます。

今回の支援では、単にコーチングを疑似体験するのではなく、実際に日々向き合っている課題や悩みに実践的に活かせる体験であったことが管理職にとって心強い武器になり得たのではないかと思います。

期間を数ヶ月ではなく1年間に設定したこともよかったと感じています。引き出される体感をするまでの個人差にも対応ができますし、気づきを得たあと「心理的な変化→行動の変化」を起こすまでのトライアンドエラーをコーチに伴走してもらえるのも魅力です。さらに、1期の受講者の結果を見て、コーチングによる変化は回数と比例して起こるというよりも、ある日突然ポーンと跳ね上がる瞬間があるということも分かってきました。実際に、導入から半年後の振り返りではまだ変化の自覚がなかった受講者が、7ヶ月目にして開眼したかのように行動が変わり始めたというレポートも報告いただいています。

2期でも期間は1年間に設定し、1期とは別の部長・課長に経験してもらう予定です。当社には管理職は1500名ほどいるので、継続的な支援を続けることで管理職からチーム、チームから組織へと大きな変化へとつなげていけたらと思っています。

――mentoでは、コーチング効果を定性インタビューでも測定していますが、管理職の方々にさまざまな変化が見られる結果になって、とても嬉しく思っています。皆さんの表情からも伝わってきました。

黒木さん:もちろん、それぞれのメンバーが重要な役割を果たしてはいますが、組織のパフォーマンスを左右するという意味で、管理職は組織の要です。管理職が生き生きと働けていることが、部下へのマネジメントにも影響し、部のパフォーマンスひいては強い組織づくりにつながっていくと信じています。


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