見出し画像

葛藤を抱えるマネージャーが本当に必要としている支援とは何か?

葛藤を抱えるマネージャーが本当に必要としている支援とは何なのでしょうか? 株式会社mento代表の木村が解説します。
マネジメントに課題を感じているマネージャーの方、事業変革に向けてリーダー育成に問題意識をお持ちの育成担当の方にお読みいただけたら幸いです。


本内容は2023年9月6日(水)に実施したリンクアンドモチベーション社との共催セミナー『事業成長のカギとなる「人事によるマネジメント変革」 ~マネジャーをチェンジリーダーに変える2つのポイント~』より抜粋しています。

マネージャーが抱えている葛藤と陥りやすい状況

マネージャーはコトのマネジメントとヒトのマネジメントにおいて、様々な葛藤に晒されています。具体的には、プレイングマネージャーとして自身も結果を出しつづけなくてはいけない一方で、各メンバーの状況を把握し、適切にマネジメントもしなくてはいけないという葛藤が挙げられます。

マネージャーが抱く葛藤について、以下の図をご覧ください。*1
業績向上への要望を縦の軸、人間性の尊重を横の軸にとって4象限で整理しました。業績だけを追求して人間性を無視するようなノルマ偏重型のマネジメントに陥ってしまったり(図左上)、また人間性を重視するあまりに業績に対する強い引力を働かせることができず、形式的もしくはぬるま湯のマネジメントになってしまったり(図右下)という状況になりやすいです。ここでマネージャーに求められるのは葛藤克服。

矛盾を統合する自己変容段階に到達する難しさ

マネージャーは、業績向上と人間性の尊重を両立するための、葛藤の克服をどのように乗り越えていけば良いのでしょうか。目標管理や業務の推進というハードスキル面は大事である一方、その矛盾を統合していく知性の発達が必要となります。これがロバート・キーガンの提唱する成人発達理論です。

成人発達理論は、子どもだけではなく大人も知性が発達するという前提に立っています。初期の段階では環境に適応するというリアクティブ、周囲からの刺激によって動いている①環境適応型の段階です。その次の段階である②自己主導の段階においては、自分自身の価値観や考えに基づいて判断したり行動する、自律的に動いている状態。その先の③自己変容段階は、自分自身と他者の考え方など矛盾することを受け入れ統合する状態です。*2

基本的に知性の発達段階が高ければ高いほど、高いパフォーマンスを仕事で出していることが裏付けられています。しかし、自己変容段階にたどり着く人は全体の1%と言われており、なかなか狭き門です。

自己変容段階は、特定の技術やスキルを身につけてインプットすれば到達できるものではありません。ものの見方などの思考様式や他者との関係性の作り方が変わらないと解決できない問題、言い換えると適応課題であるとされています。この適応課題を解決するためには、自分自身が変わっていく、自分にベクトルを一度向ける必要があります

ロナルド・A・ハイフェッツ「最前線のリーダーシップ」(英治出版)を参考にmentoが作成 *3

マネージャーの葛藤克服のプロセスに伴走する、パナソニック株式会社の事例

そこで役立つのがコーチングであると考えています。一人で自分のことを考えていても客観視することはなかなか難しいです。コーチングでは、置かれている状況を捉えたり、どうしたいのかをメタで考えたりすることで、自己変容の段階を経験し、知性が発達していきます

ここでパナソニック株式会社(以下、パナソニック)の事例をご紹介します。パナソニックは元々新卒文化でしたが、昨今VUCAの時代において多様性を大事にするため、中途比率を約2割程度から7割にするという変化がありました。

結果、暗黙知、いわゆるツーカーな状態が通じなくなってしまいました。メンバーはマネージャーに対して当たり前だったことを質問するものの、マネージャーは困惑してしまうといったコミュニケーションが多発していました。マネージャーは、「自分が非常識なのかもしれない」「なぜわかってくれないのか」と、価値観が揺さぶられていました。

85%の方が成長を実感、マネジメントに対する考え方や行動に変化

導入の意思決定をした本部長であるパナソニック萬田さんは、管理職の育成によって組織の熱伝導率を上げたいとおっしゃっていました。萬田さんが熱を持ってビジョンを語ったとしても、それをさらに伝えていく、現場に落とし込んでいくのは管理職です。そういった方々がメンバーに熱量を伝え切るのは難しいですし、また、管理職からメンバーへの一方通行になってしまうことも課題として挙げられました。

相互に熱を交換しあえる、循環していくマネジメントや組織に変わっていきたい、そのためにはトップダウンのマネジメントスタイルから対話型のマネジメントに変わっていかなければいけないとの思いがありました。そこで、管理職自身が対話の可能性を信じることができる状態をつくるため、コーチングの施策を実施されました。

実際には、1年間の間、本部長以下の管理職の方全員にコーチングを受けていただきました。テーマは指定しませんでしたが、マネジメントの話が66.7%、ご自身のキャリアについてが33%とという結果でした。

最終的には、85%の方が成長実感をして、マネジメントに対する考え方や行動が変わったとお答えいただきました。対象の方からは「自分が持っていたマネジメントの課題に向き合うことができて、新しい発想から解決策を考えられた」「ちょっとしたこだわりみたいなものを手放せて、すごく生産的にものを考えられるようになった」といったコメントをいただいています。

コーチングを受けられた方の声をおひとりご紹介します。この方は、技術職から人事部に異動になり、右も左も分からない状態でマネジメントを任されていました。
これまでは

  • マネージャーはメンバー以上に業務を全て把握するべきである

  • 答えを持つべきである

など、「べき」に悩まされていたものの、この状況から抜けられなかったそうです。

しかし、コーチングで対話を重ねていくことで「べき」を手放してマネジメントスタイルをアンラーニングされたそう。そして、知識や経験に基づく指示命令型のコミュニケーションから、部下に対して傾聴や質問を中心に話すようにしたことで、部下自身が仕事に主体的に取り組むようになったそうです。

パナソニック萬田さんは自信を持てるメンバーが増えて行動のスピードがすごく早くなったとおっしゃっていました。特に課長職の方は上下に挟まれやすいという特徴もあり、自分の想いを話す機会がありませんでした。しかし、自分の想いを中心に部下に自信を持って話せるようになったそうです。人の変容を促すためにはコーチングのようなアプローチが役立つとお話しいただきました。

コーチングがどのように葛藤克服から行動変容に寄与したか

コーチングという「第三者と何の縛りもない対話」という刺激が入ることで、自分自身のメタ認知が促され、自分を理解したり価値観がわかったり、課題を言語化できるようになります。それによって、眠っていた内発的なモチベーションや自己肯定感、やりたいことや腹立たしいという感情が発露されていきます。

それをきっかけとして、自分が実現させたいビジョンが生まれたり、部下に対する意識が変わっていったり、新たな目標が設定されたりと、最終的に行動が変わっていきました


まとめ

葛藤を抱えるマネージャーが本当に必要としている支援とは何か?のひとつの解としてコーチングをご紹介しました。スキルを習得するだけでは乗り越えることができない、変化の大きい時代の適応課題に立ち向かうためには、管理職・マネージャーの行動変容が重要です。mentoは葛藤克服をしたいビジネスパーソンに伴走していきます

▼mentoのサービスにご興味のある方
下記サイトよりお問い合わせください。

▼記事内でご紹介したパナソニックの事例にご興味のある方
資料ダウンロードはこちらです。
https://forbiz.mento.jp/case/view/panasonic

参考文献
*1 坪谷 邦生,図解 目標管理入門 マネジメントの原理原則を使いこなしたい人のための「理論と実践」100のツボ,2023,ディスカヴァー・トゥエンティワン
*2 ロバート・キーガン,2013,なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践,英治出版
*3 ロナルド・A・ハイフェッツ,2018,最前線のリーダーシップ――何が生死を分けるのか,英治出版

いいなと思ったら応援しよう!