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形態構築アプローチの概念と診方 その7

書籍「形態構築アプローチの理論と技術」を持っていない、知らない人は知っていただくために(^^)/
持っている人は書籍の内容がより理解できる様に、そして臨床で活用できる様に、弟子の土屋元明が研修で学んできた事を踏まえて解説。

今回は症例から学ばせて頂いた事を伝えます。是非一読くださいm(_ _)m

動きのこだわりテーション 土屋元明


症例から学ばせて頂く

書籍「形態構築アプローチの理論と技術」をより深く理解し、臨床で使えるようになっていただくためのヒントをいくつか紹介してきました。

ここでは最後に、症例を交えて伝えたいことを記載します。

<基本情報>
 70代女性 痩せ形 
 講師の仕事をしており外出することが多い

<病歴>
 既往に左変形性股関節症、腰部脊柱管狭窄症(右下腿痺れ)が存在。
 数日前から左股関節の痛みが強く出現し、杖をついても痛いため来院。 

<臨床症状>
 疼痛部位は左股関節前面(VAS 7/10 palm sign)
 夜間痛、安静時痛はなく、動作痛のみ出現(特に方向転換時)
 Fadirf、Fabereテストでは、左股関節前面の軟部組織に疼痛を訴える
 ⇒関節内というよりは関節外の影響が強いと考えアプローチを開始

<形態観察による予測(図19)>
自然立位形態を観察しますが、そのヒトの形態がどうなっているのかをただただ観察し、機能を考察します。

この時、理想の形態に誘導したり、再構築しようとしたりするのではなく、形態が逸脱したことでの機能低下を考察し、何をすべきかを歩行動作で確認しながら臨床を展開することが大切であると考えています。

図19の左図は書籍で紹介されているヒトの立位形態です。実際の症例の多くがこの形態から逸脱しています。逸脱したことで機能がどう変化しているのか。その予測の一例を右で紹介していますので、参考にしてください。


<歩行動作で予測を確認し考察する(図20)>
予測したことを歩行動作で確認し、機能がどう低下しているのかを考察します。つまり、実際に目の前で起こっている現象を考察するわけです

そして、考察した内容で優先順位の高いと考えるところからアプローチを行っていきます。

本症例の場合は、左立脚期の体幹前方移動が可能となるよう運動域を確保し、左股関節に荷重が適切に乗るようにすることでした。

これにより左立脚期の臀筋収縮がより発揮され、左股関節前面の軟部組織のストレスが軽減すると考えたからです(図20)

もちろんアプローチは、これが可能となればどんな方法でも構いません。形態構築アプローチの具体例は今後紹介していきます(*^-^*)


<治療効果を持続させるインソール>

左立脚期の体幹前方移動が可能となるよう運動域を確保し、その後歩行を再開すると、疼痛が半減しました。このため方向性は妥当と考えました。

そして、局所的に運動域が足りない部位(本症例の場合は足部と上位胸椎)に対してアプローチを行うと、疼痛はわずかに気になる程度になりました。歩行を観察しても立脚期の体幹の遅れがなく、スムースに流れているのが観察できました(左立脚期の臀筋収縮が発揮され、左股関節前面の軟部組織のストレスが軽減したのだと考察)。

アプローチの最後に、治療効果を持続させるためにパッドによるインソールを処方しました(図21)。

自然立位形態の最終的変化は下記図22の様になり、痛みはVAS7から1となりました。

そして、自宅での簡単な自主トレを指導し、何かあればご連絡いただくよう依頼し終了となりました。


<本症例の経過>

その後の経過として、数か月間連絡がありませんでしたが、ある日突然電話連絡が入りました。

講師の仕事で帰宅した際、再度痛みが増悪したとのこと。

痛みの内容や状況から近位のかかりつけの整形外科へすぐ受診するよう依頼しました。

そこで告げられたのが、股関節の人工骨頭置換術であり、本人も納得され手術を受け、経過は良好であることを報告いただいております。

構造的破綻と機能的破綻の割合は人それぞれですが、その時に適切な対応がやはり大切であると学ばせて頂きました。

形態構築アプローチは機能的破綻に対しての技術であり、構造的破綻には手術が選択肢として適切であることを説明することは忘れてはなりません。


最後に


ヒトの形態の正しさにはある程度の幅(範囲)が存在しており、そこから逸脱した場合に運動機能の低下が起きているように私は感じています。

そしてその範囲は非常に個人差があり、かつ僅かなものです。

このため形態構築アプローチはエビデンスで支えられていません。

しかし、私も結果が出る理学療法技術としていつの日か確立することを信じています。

最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。

形態構築アプローチという考えに少しでも興味をもっていただいたり、再び興味をもっていただければ幸いです。

疑問点などがあれば、Facebookやこのnoteホームページからお気軽にご連絡ください。


動きのこだわりテーション 代表 土屋元明
理学療法士/JMFS常任理事

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