ラックマンテスト

膝のスペシャルテストの重要性 No.2


膝を評価する上で、特に私が重要だと感じている評価方法に

①ラックマンテスト
②伸展制限評価

があります。

ラックマンテスト(Lachman test)は、本来ACL損傷(前十字靭帯損傷)の有無を評価する時に用いる整形外科テストです。

大腿骨を固定して、脛骨を前方に引き出した時に「コンッ!コンッ!!」と抵抗を感じる場合は、前十字靭帯が機能していると判断します。反対に、「ニュルッ、ニュルッ」と抵抗を感じない場合は、前十字靭帯が機能していないと判断します。

もし、前十字靭帯が機能していないとなれば、健側と比較します。そして明らかに違う場合は、N-testを行います(下記イラスト)。この2つを行うとほぼ確実に前十字靭帯の損傷の程度を把握できます。


このラックマンテストやN-test、そして伸展制限評価の精度が高まると、臨床で色々な事に応用が可能となります(*^-^*)

今回はこうした内容ついて詳しくお伝えいたします。

まず、ラックマンテストはACLが機能しているかを把握るテストですが、実はもっと重要な事が評価できます。

それは…

その人がどういう膝をしているのか

ということが評価できます

さらに、膝だけでなく他の関節の状態も予測できます。
ちょっと知りたくなってきましたね(笑)

まずは、それを説明するために必要な基礎知識からお伝えします。

臨床では
ラキシティー(関節弛緩性;laxity)があるとか、
インスタビリティー(関節不安定性;instability)があるとか、
ジョイントプレイ(関節のあそび;joint play)が大きいとか
様々な表現をしています。


そして臨床では
ラキシティーがあるから関節が緩い」とか、
ラキシティーとインスタビリティー」を同じように表現していたりとか、
関節の遊び(ジョイントプレイ)より、関節運動や角度」に注目しすぎていたり…

こうした解釈をしやすいのかなと思っています。
(実際に私はこれでした;笑)

実はこうした解釈が変わると、

臨床の視点がグッと広がります。


まず、ラキシティーは膝で言うと「過伸展膝」と言い換えることができます。具体的な角度は膝関節伸展10度以上と言われ、10度以上伸展していれば「ラキシティーがある」と表現します。

ここで注意して欲しい事は、

ラキシティーは症状ではなく、可動範囲がただ大きいだけです。


ラキシティーがあると、ジョイントプレイが大きい人が「多い」ため、関節を構成する軟部組織が柔らかく、関節が緩いと判断してしまいますが、これ「思い込んではいけません」。

確認しましょう(^-^)

なぜなら、実際にラキシティーがあってもジョイントプレイが小さい人が存在しています。この場合、関節の遊びが小さいため、関節の可動範囲は大きくても関節を構成する軟部組織は硬かったりします。

つまり、ラキシティーがあるけどジョイントプレイが小さい人は「関節(の軟部組織)が硬い」といえます。

このため一度、膝を怪我したり、手術をしたりした場合は可動域の制限を来しやすくなります。これは、関節を構成する軟部組織の柔軟性が、ジョイントプレイが大きい人に比べて硬いからだと考えています。


このようにラキシティーがあるから関節が緩いという感覚で臨床を展開すると、あれ?なぜこんなに制限が…と困惑する訳です。

是非知っておいてください(^-^)


そして、インスタビリティーは「靭帯が損傷」することで、本来よりも大きく関節が動く現象をいいます。つまり、インスタビリティーと靭帯損傷は一緒に分類されることがあります。

例えばカンファレンスで、「先生、Aさんは膝のインスタビリティーがあって、少し苦渋しています」と言えば、主治医は靭帯損傷の事を想定して、リハビリの方針を決定していきます。

このように、ラキシティーとインスタビリティーの違いを理解したところで、今度はジョイントプレイです。


ジョイントプレイとは、関節を構成する関節包や靭帯などの

軟部組織の前後左右の可動範囲

を意味しています。

先ほど、ラキシティーがあってもジョイントプレイが大きい人と小さい人が存在すると述べましたが、まさにこのジョイントプレイを個々に的確に評価することが膝の可動域回復において重要です。


私はよく「関節の遊び(ジョイントプレイ)より、関節運動や角度」に注目して臨床を展開していました。しかし、関節運動や角度をしっかり獲得するためには、そもそも個々の軟部組織の前後左右の可動範囲を把握したり、左右差を把握する必要があります。


例えば、Bさんのジョイントプレイが大きいと判断した場合は、関節を構成する関節包や靭帯などの軟部組織の前後左右の可動範囲が大きいということです。つまり、関節包内の運動範囲が広いということです。

もし、Bさんの関節可動域制限の問題が膝関節付近の軟部組織であれば、徒手や運動療法で取り除き、後は自主トレを指導すれば比較的苦渋せず改善させやすい環境が作れます。これはもともと関節を構成する軟部組織の柔軟性があるからだと私は考えています。

しかし反対に、Bさんのジョイントプレイが小さいと判断した場合は、同じように関節可動域制限を取り除いたとしても、自主トレの頻度を増やしたり、療法士が介入する頻度を増やさないと、可動域改善が得られにくい場合が多いと感じています。これはもともと関節を構成する軟部組織に硬さがあるからだと私は考えています。


つまり、ジョイントプレイが大きい、小さいが判断できれば、

その人がどういう膝をしているのかを把握することができ、介入方法を考えることができるのです。


ちなみにジョイントプレイについては、恩師である今屋健先生から2年間ずっと研修で学んできたので、大きい・小さいがその場で判断できるようになりました。実技を通してでしか、これは伝えられませんが、一応数値だけ述べておきます。

ジョイントプレイにはもちろん個人差がありますが、

正常は7~8㎜前後です。

(今屋先生の研究データから述べております)


つまり、ジョイントプレイが大きいと言う場合は8㎜以上、ジョイントプレイが小さいと言う場合は7㎜以下となります。
私はラックマンテストを行い、ジョイントプレイが8㎜以上あると判断した場合に関節が緩いと表現しています。また、ジョイントプレイが7㎜以下であると判断した場合に関節が硬いと表現しています。


さらに、緩い関節でも硬い関節でも、もう少し細かく区分けをしています。
それは「End feel(最終域感といい、動きの最後の抵抗感)」の違いで区分けをしています。詳細は実技でしっかりお伝えしたいと思いますが、上記はその実技で用いているスライドです。是非参考にしてください。

さて、ジョイントプレイの重要性について理解できたところで、さらに重要な評価方法となる「伸展制限評価」について次回は述べていきます。

次回もお楽しみに(^-^)


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