見出し画像

【シリーズ】あるじとしもべのダイアローグ(10)

「しもべゴルァ ちとこっちゃこいや
「ハイあるじ どうしたんですか…またお怒りじゃないですか」
「ええからはよこい なに普通に体育座りしとんねん ちゃんと正座せぇゴルァ」
「いったいなにをお怒りになっているので」
「おまい、身に覚えがない言うんかぇ ワイはもうブチギレてます
「ブチギレ… えーとあれですか ごはんに飽きたとか」
「アホか めしはおまい 変なもんもう食べられへんねん 下部尿路ケアのお医者さんが指定してるやつ食うわ 尿結石はもうカンニンやさかいに たまにちゅーる食わしてくれたらもうそれでワイはええねん ワイがキレてんのは別件やねん」
「別件ですか」
「そうや別件 … えーとベッケンバウ…」
そういうのいらないですあるじ」
「そういうのはいらんか ほならおまいの昨日書いた記事出せコラ」

「これですか」
「これやがな 見ろやこのトップの絵っちゅうかイラストゆーか
「いいでしょうこれ(満面の笑み) イラストレーターさんに発注してデザインしてもらいました」
「…」
「イメージまで聞いてくださったんですよ どういうコンセプトのがいいのかっていうから、『オフィスぴの吉はねこと私の二人でやっていく事業だから、人間とねこが登場する感じがいいです』ってちゃんとお伝えしましてね」
「…」
「そうしたら、ねこさんのイラストと私のイラストのテイストはどうしますかというので何パターンか『ラフ』という形でサンプルをいただいたりなんかして おおーすごいわプロ、こういう感じでお仕事進めてくださるんだなーと思いまして」
「…」
「聞いてますあるじ?でね、やはりわたくしめはほら、カッコよく描いてほしいでしょ?ですので、何パターンかのうち『目と鼻くっきり系』で!とお願いしたんですよ。そしたらほら、見てください超絶カッコよく描いてくださいました」
「ハイハイそこストップ Dur bi dakka. (しもべ注:トルコ語で「ちょっと待て」の意です)ワイのほうはなんて言うてん
「え?」
「え?やあらへんがな ほなら聞かれたはずや ネコチャンのほうはどういうテイストで描きますかーいうのん」
「それはもうもちろんですあるじ シンプルパターン、かわいいパターン、ほかにもいくつかありましたがあとコミカルパターンというのがありまして、あーこれだー絶対これだーと思いましてね」
おまいちと待てください ちょっとワイの目ぇ見ろやコラ」
「どうしたんですかあるじそんな血相変えて 何かお気に召さないことでも」
「どう考えてもワイ、カワイイパターンで描かれるべきやんけぇ」
「えー?そうですか?いやほら、なんていうんでしょう あるじがかわいいことはもうツイッターやってるみなさんとかでも周知の事実で…」
「そんなこと言うてんとちゃう💢 ていうかおまい、こんな大事なことなんでワイに一言も相談せんと進めよってん
「…おお。その発想はなかった」
「なかったやあるかいな おまい自分だけハンサムに描いてもらいよって ワイのこの顔見ろや💢 どう見てもいたずら好き系ダメダメネコちゃんやないか」
「そそそそんなことないですよあるじ ほら角度によってはとてもイケメンに…」
「見えるかアホボケカス〜 ワイはこれじゃあ見せもんやないか 客寄せパンダかワイは」
「客寄せネコですね もっというと、日本では招き猫といいまして、ねこは昔から…」
あーあーーー出ました出ました 出羽守(でわのかみ)ってやつやそれが 鼻につくタイプのやつ すぐ外国の話しよんねん おまいらテュル活民はじめ海外経験者各位の悪いクセよそれ」
「外国ってあるじ、ここ日本ですよ」
「アホか ワイから見たらここが外国やないか
「あーーーそうでした そういう設定でしたね あるじはトルコからやってきたネコちゃんという設定でした」
「設定でしたやない 事実やないか おまいが連れてきたんです アンカラから 長崎くんだりまで」
「そうですね おかげでトルコ語勉強したいという人たちがちょこちょこ来てくれていますよ これもひとえにあるじの魅力のタマモノでしょう ほらあごのあたりをモフモフしてあげますから機嫌直して」
「ゲヘヘもうちょっと左のほうやってくれや…ってそんなんで懐柔(カイジュウ)できたと思うなよ💢 ワイもう一つ言いたいことあるねん」
「(怪獣…?)まだご不満が」
「あるに決まってるやろ なんやこのワイのサイズは
「サイズとは」
「ワイ、おまいよりデカく描かれてるやんけ どゆことこれ ちとこのイラスト描いたヤツ呼べ ここに
「そんなムチャな ネットで依頼したんですよ それもとある近い知り合いの知り合いで…」
「そんなん知らん💢 ワイをこれほどデカく描いたわけを説明するべきです」
「あーそれはですね(大汗) えーとそのう… わたくしめのリクエストで…」
「は?おまいがこないに描いてくれいうたんけ」
「これもいくつかラフでアイデアいただきまして、どれがいいですかと言われましてね いやー悩んだんですよ 月の形してるのもあって、なるほどトルコの国旗のマーク考えたら、それもいいなーと思ったんですけど…」
「…」
「やっぱりオフィスぴの吉といえば、大きいあるじとそれに守られるわたくしめ、という、なんというんでしょう、こう…現実を反映した構図がいいんじゃないかなというので」
「即決したんかぇ」
即決しましたですねえ!で、できあがりがこれです。さすがですよね!最高の出来ですよこれ 発注したわたくしめはもう大満足
ワイの気持ちは?
「え?あるじの気持ち?最高でしょ?最高じゃないんですか」
「ワイのこのやるせない気持ちはどうするの」
「やるせないんですか?なんでです かわいく描かれてるじゃないですか やだなーもうハハハ」
かわいく描かれてへん デカく描かれてるねん ワイこう見えても気にしてるねんぞ」
「体の大きいことをですか」
「そうや おまいの知り合いに黒なんとかいうのがおったやろ
「ハイいますね 日本語の研究をやってる、K木さんという方」

「アイツあのボケ、ワイのことなんて言うたかおまい知ってるか」
「ハイあるじ たしか『ライオンの幼児』とか書いてました」
誰がライオンの幼児やねん おまいはそれ見てゲラゲラ笑うし、その話聞かされたおまいのパパンとママンも爆笑したし ワイは悲しかった」
「でもまあ、あるじが大きいのはこれはもう、どうしようもないことです うらやましいですよある意味 ワタクシなんて小柄ですから」
「…」
「"Yapacak bir şey yok"ってやつですよあるじ 「どうしようもない」っていう、トルコ語の授業でもこないだ扱った形動詞の例のやつで…我々、現実を受け入れてやっていきましょ」
「…このトルコの国旗の帽子も受け入れるんか…ワイ、こんなんかぶったことないやで おまいもないやろ」
「まあそこはほら…このほうがトルコに関係することをやるんだなって、わかりやすくていいじゃないですか まあトルコだけにとどまらないかもしれませんけど、我々の出発点、まさにトルコですから これでしばらくいきましょ」
見返りは?
「え?見返り?ですか」
「見返りや おまいそういえば、ワイに給料一度も払ったことないやんけ」
「あー…そこに気づいてしまいましたか でもほら、ごはんが毎日…」
「これは別やないか マカナイってやつや おまい人に仕事してもらったらなにをしますか」
「えーとそれはもう、お給料を払いますね」
「ほならワイには」
あるじ、ネコですからね… 人じゃないし(目を逸らして)」
「でもワイ、働いてるやないか なんならおまいより働いてるやで おまけにワイ、オフィスぴの吉の実質社長やで? なんかこう、報酬みたいなのないとやってられん そうや またおまいの入ることのできん隙間に隠れて困らしたるねん これはホーリツで認められたロードーシャ?のケンリやねん ワイ勉強した かくなる上はワイの怒りと悲しみのすさまじさを思い知れください」
「あーーーーーーーーそれだけはやめてください 私が悪うございました もうしません」
「わかればよろしい で?報酬はおいくら万円ですか」
「…ちゅーる1年分で手を打ちません?(ちょっとしかくれてやらんけどな!)」
「ちゅーる1年分、マジかおまい 本気やな(1年分いうことは365本もか…悪ぅないな)」
「本気ですともあるじ ほら私の目を見て ウソついてないでしょ」
「おまいらニンゲンはそう言いながらウソつくからな おまいなんて特にそう 人間の悪い部分を凝縮したようなヤツやねん もう4年以上一緒におるからワイはよう知ってるねん」
「またまた〜 社長ったら〜」
「触んなください ワイこういう感じで触られるのキライやねん💢 …だがまあ仕方ない それで手をうつか じゃあはよアマゾーンとかいう夢のウェブサイトでポチってくれや」

「ハイもうもちろんですともあるじ さあ2年目のオフィスぴの吉、はりきっていきましょうね あるじはもう、社長としてどでーんと構えてくれてたらあとはもうワタクシがなんとかがんばりますので 自信こそないが」
「論文も早よ書けよ おまい何本抱えとんねん そーいえばAA研の…」
「え?💢なにか言いましたか」
「あたたたたたた痛い痛い痛い痛い ギヤー 怒んなよそんなささいなことで 怒りほどミニクいもんはないねんで
「あるじこそ、冒頭で超お怒りだったでしょ💢」
「…そうやった思い出した そう!怒ってるのはワイやねん ワイのネコパンチをくらえ キャッキャッ」

(論文の締め切りはとっくに過ぎて、しかしこのシリーズは次回に続く!)

この記事が参加している募集

記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。Çox təşəkkür edirəm! よろしければ、ぜひサポートお願いいたします!いただいたぶんは、記事更新、また取材・調査のための活動資金に充てさせていただきます。