見出し画像

【シリーズ】あるじとしもべのダイアローグ(15)

「あるじ」
「…」
「あるじってば そろそろおねむのお時間です」
「いや無理 今日はこれ、寝られへんで」
「どうしてですか 早く寝ましょう 夜中に運動会されると困るんで」
「そんなもんおまい、毎度のことやないけ」
「ないけてあるじ… まったくなげかわしい どこでそんな文末表現覚えたんですか」
「しもべのコピーやないか ワイはおまいを見て日本語を習得しています」
「習得と言えば、昨日ここで本を紹介したんですけどね。いい本ありますよ」

「言語学のほうのヒロセ先生かいな」
「左様です。アゼルバイジャンのほうのヒロセ先生にも今年はお世話になりましたね」
「おまいがな それにしても積読だらけやなおまいは ちょっと買いすぎちゃうんか」
「こればっかりはもう 大変申し訳ないのですがしょうがありません しもべの仕事柄なので大目に見てください」
「積読が仕事ておまい、仕事してないから積読になるんちゃうんか」
「…」
「まあそれはそうと、ワイが寝ない理由をお教えしましょう」
「ハイもう(さっさと寝てほしい…)」
「待っとんねん」
「誰をですか こんな夜中にですか」
「そうや サンタのおじさん クリスマスに来んねやろ ワイググった」
「あー。クリスマスですもんねえ。そういう俗説、ありますよね」
「俗説てなんやねん 子どもの夢壊すようなこというな せやからおまいは全裸中年男性とか言われんねん」
「それはネット上の自称なんですけどもね… というか、どなたが子どもなので」
「…ワイやないか まだ5ちゃいやで??」
「ねこの5歳って、人間で言ったらもうアラフォーくらいじゃないんですか」
「アラフォーてなんやねん」
「40歳近くっていう意味です アラウンドフォーティの略語だそうですよ」
「なんでもかんでも略すのよくないよな~ 最近の若いもんはけしからんよ 日本語の乱れです ワイは日本を憂いておる」
「あるじそんなこと言ってはいけません ことばは乱れではありません 変化していると言いましょう 外来語の影響もその一環です」
「難しいこと言いなや ワイにとってはそんなことどーでもえーねん ワイはその、サンタのおじさんからやな、クリプレだけもらえたらええねや」
「クリプレ?なんですかクリプレって」
「クリスマスプレゼントの略語やないか おまい日本に住んでてそんなことも知らんの」
「いや知ってます(💢) そういうことじゃなくて、あるじも今まさに略語使ったじゃないですか」
「細かいことやいやい言うなや ワイの出身地はどこですか」
「…トルコでしょ?一緒に日本にやってきたじゃないですか」
「そう!それ!ワイにとってはな 日本語は母語とちゃうねん おまいらに合わせてやってんのやで もうちょっとそのへん気を遣ってっていうかよぉ、やさしくしてもらわんと」
「やさしくしてるでしょ?毎月あるじにある意味でサブスクしてますし」
「サブスクも略語ちゃうんけ まあしかしせやな 課金ガチ勢や せやけどねこちゃんのサブスク商売、あれはようないな~」
「よくないですね ねこさんたちをもっと尊重しないと」
「そのとーり その点、サンタのおやじどんはたぶんワイのことも見捨てへんと思うねん あんなりっぱなヒゲのおっちゃんやもん 煙突からおうちの中に入ってきて、しもべの靴下かなんかにこう、ワイの好きそうないい感じのおもちゃを…」
「うち、煙突なんかありませんよ」
「…煙突、ないの…?」
「ないでしょ 見たことあります?」
「…しまった うかつやった ほならサンタニキ、どないしてうちの中入ってくるねん」
「(サンタニキ??)…無理ですよね」
「ムリですよねやあるかいな 煙突作ってくれや サンタが中に入ってこいください」
「あるじ、日本語がおかしくなってます トルコ語の干渉では?」
「そないなことどーでもえーねん サンタさんからプレゼントもらわなあかんのに」
「おもちゃのプレゼントなら、こないだわたくしめがしたじゃありませんか あるじの大好きなねずみのおもちゃ もうあれで十分でしょ」
「あかん あれはあれ それはそれやねん」
「あるじ、ちょっとわがままですよ 家の中がおもちゃだらけになるでしょ」
「おまいかて、読みもせんのに趣味で本買いまくるやないか あれはわがままちゃうんか」
「…」
「今ある本も読んでないのに次から次に買いおって もうあれで十分でしょ」
「…」
「ギャ―わかったわかったごめんて 肉球ぷにぷにはやめろください」
「あるじ、肉球触られるのホントにキライですよね なんでなんですか」
「おまい、そこ触るときは99パー爪切るときやないか」
「あ、バレてましたか?(舌打ち)」
「舌打ちすんなください ていうかバレバレやねん ワイをいくつやと思てんねん 5さいやで??5さいいうたらおまい、人間でいうたらえーと…25歳くらいちゃうかな」
「なにサバ読んでるんですか さっきと数字が違います まるで自分を若者のように言うんだから」
「うるさいな もうワイもりっぱな大人やねん そーゆーふーに扱ってくれんと」
「そうですか…わかりました しかしじゃあ、残念ですね」
「なにがやねん」
「サンタさんがプレゼントをあげるのは、いい子にしてる子どもだけなんでしょたしか あるじはもう大人なんだから、対象外ですね」
「…」
「うちは煙突もないし…」
「…」
「さ、寝ましょう寝ましょう 明日になったらまたナフコかどこかでおもちゃかなにか買ってあげますから」
「マ?そマ??やったー」
「(我ながら過保護というか親ばかだ…)アドヴェントカレンダーも全部埋まったことですし、お祝いをしましょうお祝いを だいたいクリスマスって、25日のほうがメインと言うかその日そのものなんですからね」

「トルコ語でノエル・ババやんな サンタはん しかもアナトリア出身らしいやんけ」
「よくご存じで… ああそうか、ググったんでしたね(いつ…?)」
「せやで 世の中だいたいのことはググったらわかんねん 日本語のことわざでもいうやろ 『ググレカス』って サンタはん、トルコに関係ないようであるようでまあないかもしれんけどないこともないねん」
「(めんどくさいねこだなこいつ…)…ともかく、あるじはクリスマスのプレゼントさえ受け取れたらいいんですよね?」
「まあ…そうとも言えます ゲヘヘ」
「じゃあまあ、それはもう明日以降ナフコで解決するとして。そろそろ寝ましょう寝ましょう」
「いや、やっぱり寝えへん」
「どうしてですか」
「ワイ、さっきまでいい子にして寝てた子やねん ね こ だ け に」
「オチになってませんあるじ」

というわけで、最終盤は怪しい内容が連続しましたが、どうにかこうにか一人アドヴェントカレンダー完走を達成いたしました!

期間中、応援してくださったみなさまに心より感謝を申し上げます。連日駄文を重ねてしまいましたが、ほんの一部分でも楽しんでくださった方がこの世のどこかにいらっしゃるであろうことを祈ります。

今年も残り少なくなりましたが、弊オフィスのあるじとしもべの活動を引き続き応援していただけますとうれしく存じます。どうぞよいクリスマス、よい年末をお過ごしください。
Noel bayramımız kutlu olsun!

記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。Çox təşəkkür edirəm! よろしければ、ぜひサポートお願いいたします!いただいたぶんは、記事更新、また取材・調査のための活動資金に充てさせていただきます。