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心象スケッチなるもの

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宮沢賢治を中心とする心象スケッチなるものの研究ノート。ことばの魔術、詩の世界、心の描写を研究。 心象スケッチなるものでどんな風に発展するのだろう。乞うご期待!
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春と修羅、智恵子抄、二つの作品からの「愛」の考察

春と修羅、智恵子抄、二つの作品からの「愛」の考察

春と修羅より
「永訣の朝」
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
その水は、松葉から滴る雪解け水、トシ子の焼けそうに熱い喉を潤すための聖水だった。
それはやがて涙に変わり、若くしてこの世を去らなければならなかった宿命に泣く。賢治にとってなんとか聞き取れたトシ子の最後の言葉が脳裏に焼き付いた。

宮沢賢治の「永訣の朝」から抜粋
       (省略)
 …ふたきれのみかげせきざいに
   みぞれはさびしく

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あめゆじゅとてちてけんじゃ

あめゆじゅとてちてけんじゃ

賢治の春と修羅、永訣の朝にあるトシ子の臨終の詩の文脈にある一つのリズム感をもたらす言葉、あめゆじゅとてちてけんじゃ…この言葉の繰り返しを挿入し、これによって逝く妹をどうにも出来ない焦燥感が増し加えられ、この時代の不自由さに 命が終わってしまう逝こうとする彼女に未だ花を持たせて送りたかった兄の心が突発的にこの詩を促したと感じている。

「春と修羅」より

「春と修羅」より

最近気付いた。「変わらないもの」の正体。それはひたすらに誰かを想い、尽くし、愛すること。命の初めからそれは変わらないもの。そして、魂にとってとても大切なもの。
「変わらないもの」の正体は「愛」なんだ。命の初めから、命以前にあったもの、「愛」。全世界、全人類、共通の財産。「愛」からは、無限に「美」が生まれることも、「真」が生まれることも分かった。だから、宮沢賢治は「ほんとうのさいわい」を求め続けて、

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