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旅と私 #05 〇〇の聖地

誰にでも、故郷以外に思い入れのある土地はあるだろう。思い出の地、憧れの地。
そう、仮に野球部であれば甲子園、吹奏楽部であれば普門館の様な、目指していた地が私にもある。
学生弓道の聖地、伊勢だ。

なお、吹奏楽部経験者だが、当時普門館を目指してはいなかった(というか弱小過ぎて名前すら知らなかった)ことはここでは捨て置いておく。

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FaceBookやTwitterで後輩達の戦績が流れてきて、普段なら6月に開催される全関東学生弓道選手権大会が、今年は11月に開催されていることを知った。

本来であれば、11月の連休近くで行われるのは、全日本学生弓道王座決定戦と、東西学生弓道選抜対抗試合だ。(今年は代替大会が12月に行われるらしい)
学生時代はこれに出場することを目標に4年間を過ごした。結果、一度も選手としてその地に赴くことはできなかったのだが、今でも私の中で伊勢は他の地とは違う特別な所である。

初めて行ったのは2年生の時。
2つ上の先輩が個人選抜で東西対抗に出場することが決まり、その介添えとして選んでもらった。いずれ選手として来る時の下見になるように。
試合会場と宿泊場所は、伊勢神宮隣の神宮会館弓道場だ。大会開始前、参加者・大会関係者全員で神宮への参拝を行い、憧れの先輩が、引退前の最後の大会として弓を引くその姿を目に焼き付けた。

弓道の試合では、基本的に的を外さなければ負ける事はない。自分と的の距離は変わらない。
ただただ自分と向き合い、的に矢を中て続ける。言うのは簡単だが、それをやり続けることができる人達しか、王座・東西には出られない。


2度目に伊勢に行ったのは、4年生の時。
目標叶わず、部活を引退した身で、友人達の応援に。ライバル校、学校は違えど共に4年間同じ目標に挑み続けてきた戦友達だ。
王座決定戦は、各地区リーグの優勝校と全日本大会の優勝校でのトーナメントとなる。知り合いもそこそこ来ていたので、彼女達のタイミングに合わせておかげ横丁でお昼食べたり息抜きしたり。

次にこの場所に来る時は自分の弓を持って来る、つもりだった。なのに手ぶらで来て居ることが悔しかった。だが、その場に立つに相応しい実力に至らなかった。ただそれだけだ。
この舞台を目指せる位置にいた幸せも、後になって気付くこと。

王座は友人達が勝ち取った。


3度目は、出張ついで旅。
松阪で仕事の翌日休みを取り、神宮会館に泊まった。様々な思い出が交錯するそこには、穏やかな五十鈴川の変わらぬ流れがあった。

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一つだけ、心に決めている事がある。
伊勢でしか、赤福は買わない。
私の中で伊勢は特別な場所だから。

次はいつ、伊勢に行こうか。

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