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セクシュアリティの葛藤

ずっと気になってる台詞があった。 1巻で矢代さんが百目鬼に言った「そういうの芽生える前に父親にやられたしなぁ あ、義理のな 開発されたはいいが高校上がる頃には相手してもらえなくなって…..」の所である。 性自認が確立していない小さい時に無理矢理犯される。多分痛いだけで何をされているのかさえも分からない。おまえは女だと認識を植え付けられて、そしてその行為は悪い事、母を裏切る行為だと呪いをかけられる。自分が男だと性認識が出来る年になると歪みが生じ始める。行為の意味を知り心が拒否し

    • 初恋

      組の奴らがサプライズのつもりで用意してくれたのだろう。 うちのシマのクラブでのささやかなパーティ。もてはやされるのを正直居心地悪く感じながら、俺は奥のソファに腰を沈める。若い衆のせっかくの厚意を無下にしたくはないけれど、誕生日くらいは一人でゆっくりしたいなんて思うのは枯れてる証拠だ。 隣に座ったホステスの甘ったるい香水が鼻腔に纏わりつき、猫なで声が耳元をくすぐる。 「ねー、竜崎組長の初恋っていつ?」 「ん?んー……覚えてねーな……」 初恋なんて甘ったるいの俺にあったっけ……

      • R 「ええっ?」

        「ええっ?マジで?めっちゃロマンティックじゃん!」 座って目線が隠れるほどの仕切りの向こうに女子高生らしき3人組。ヒソヒソ話してるつもりなのだろうが、その話し声は店内に流れる音楽より鮮明に聞こえてくる。 「でもねー___を食べる事で願いが叶うらしくってー」 「えー、さすがにそれはグロいんですけどーあははっ」 カスタネットのような小気味よい笑い声がボリュームを上げる。 逢魔時、鬼の血相をして機敏に動いていた店員の表情に疲れが見えだす。 「ご注文、お決まりででしょうか?」

        • R「矢代は言った」

          矢代は言った、 「7番と8番、この後ホテルへ直行!」 ヤッタァーー、7番俺じゃん!この抗争劇のドタバタでしばらくそっち方面はご無沙汰だった俺は、ガッツポーズで立ち上がる。 「七原ウルセー」 俺にはわかる。今夜の社長は機嫌が悪い。そしてこういう時はこんな悪趣味のゲームをやりたがる。どうせあれだろ、百目鬼だろ…….ったくあいつどこに消えたんだよ。 今夜は桜一家からの接待って名目の飲み会。こっちからは社長と俺、桜一家からは連さんとあのキャンキャンうるせー奴、あと百目鬼もさっき

        セクシュアリティの葛藤

          百目鬼は走った!➖甘栗の苦難➖

          百目鬼は走った….. 一点を見つめて、ただ走った。 ハッ…ハッ..ハッッ…ッ… 息が上がる….逃げ切れる気がしねぇ….. 真夜中の湾岸倉庫、恐ろしく静まりかえった建物に響く逃げる足音。背後から迫り来る黒い影に足がもつれそうになる。無我夢中で踏み出す足がスローモーションかの如く、背中に感じる殺気が早送りで迫ってくる。 後ろから足をタックルされもつれる様に倒れ込み、額が硬いコンクリートに叩きつけられる。羽交い締めにされ、のしっと全体重をかけてきたその大男は俺の左手首を掴む

          百目鬼は走った!➖甘栗の苦難➖

          飴玉

          小さい頃、家に男の人の写真が飾ってあった。 派手な開襟シャツから覗く刺青、焼けた頬に薄いそばかす、写真の中のその人は優しい目をしてた。 その人は年に一度この時期になるとやって来た。 母親は朝から念入りに化粧をし、3人でファミレスに行き食事をする。 家に帰る途中、いつもポケットから湿った飴玉を取り出し「母ちゃん大事にしろよっ」と言って頭を撫ぜた。 大きな手の温もりが心地良かった。 次の日起きるともうその人は居なく、抜け殻のような母親の姿が何日も続いた。 ある年からその人

          飴玉

          揺らぎ

          階段が苦手だ 降りる時に平衡感覚を失いそうになる ラッシュアワーを避けて出勤したその日 時計に気を取られもつれた足は階段を踏み外しそうになった 後ろから不意に掴まれた腕 視界に入った黒皮の手袋 引っ張られた瞬間呼び起こされる記憶 ツクツクボウシの鳴き声が子守り唄に聞こえてきた放課後 私はいつものところに向かう 体育館の2階にあるベンチ 誰も居ない風通しが良いこの場所が好きだ その日は隣町の高校との剣道の練習試合が行われてて いつもの特等席は誰かのものになっていた

          揺らぎ

          紫煙

          涙雨に濡れるアスファルト モノクロの世界 ふと鼻腔に絡む甘い煙 振り返り彷徨う 見上げた濡羽色の空 頬を伝う甘い雨 あの人が生きている この街で