Netflix_マッドバウンド_哀しき友情_場面写真_

『マッドバウンド 哀しき友情』Netflix配信中

https://www.netflix.com/title/80175694 ★★★★★ 原題:Mudbound

血も汗も涙もすべて無に返す泥の沼、留まり続ければ、はまり込んでいく

これは素晴らしい、傑作といえるNetflixオリジナル映画。昨年11月から配信されていますが、正月休みに観て衝撃を受けました。2018年ベストに入れたいレベル。

監督は、大好きな海外ドラマ「Empire 成功の代償」のエピソードや、スターチャンネルで放送されていたクイーン・ラティファ主演のTV映画「Bessie/ブルースの女王」ほか短編やドキュメンタリー、TVシリーズで活躍してきたディー・リース。本作が長編2作目。1977年生まれで、今後が期待される黒人女性監督です。

レズビアンの少女を主人公にした初の長編作品『アリーケの詩(Pariah)』がサンダンス映画祭で絶賛され、黒人映画批評家協会賞では監督賞を受賞。クイーン・ラティファが伝説のブルース歌手ベッシー・スミスを熱演した「Bessie」はエミー賞最優秀テレビ映画賞を獲得。もちろん、本作も昨年のサンダンス映画祭で話題を呼び、Netflixが1,250万ドル(約14億円強)で買い付けたそうです。


あらすじ

時は1940年代、ミシシッピ・デルタ。綿花農場を買い、越してきたヘンリー(ジェイソン・クラーク)とその新妻ローラ(キャリー・マリガン)のマッカラン一家と、先祖代々の土地でわずかながらも農業を営んできたハップ(ロブ・モーガン)と妻フローレンス(メアリー・J・ブライジ)のジャクソン一家。

やがて真珠湾攻撃があり、アメリカも大戦に参戦。ヘンリーの弟・ジェイミー(ギャレット・ヘドランド)が空軍パイロットとして、ジャクソン家の長男・ロンゼル(ジェイソン・ミッチェル)は陸軍戦車大隊として従軍。やがて受勲し、戦争の英雄としてデルタへ帰郷してくる。戦場で苦難を共にした2人の若き退役軍人は、人種隔離政策が社会に根深く染み付いた南部の田舎町で、予想外の友情を育んでいくことになるが…。


ヒラリー・ジョーダンによる原作をディー・リース監督が共同脚色。米脚本家組合賞にもノミネートされており、アカデミー賞でもノミネートされるでしょう。

また、壮絶で泥沼な世界観の撮影を手がけたレイチェル・モリソンは、『ブレードランナー2049』のロジャー・デーキンスや『ダンケルク』のホイテマさんと並んで、米撮影監督組合賞に女性として初めてノミネートされました(そろそろこういう表現はやめたいですが)。

「おお~」と思って過去作を調べてみたら、『フルートベール駅で』『チョコレートドーナツ』『CAKE/ケーキ 悲しみが通り過ぎるまで』『DOPE!!』と見事にドンピシャな大好きな作品ばかり。しかも次作は『ブラックパンサー』です。楽しみすぎる。


ミシシッピの泥だらけの農園、友情が生まれたのは奇しくも戦争がきっかけ

泥というのは不思議なもので、よく子どもは泥だんご作るじゃないですか、泥んこ遊びが大好きじゃないですか?

人間としてのそもそものルーツがそこにあるというか、時におもりのように身にまとわりつきながらも、時に胎内のように温かい、人間の本質的な生まれ故郷のようなもの、のメタファーだと思うのです。

戦争に生き、ようやく帰ってきても、その故郷には戦地にあったような平穏がない黒人のジャクソン。そして、かつての自分を戦地に置いてきてしまったジェイミー(『ダンケルク』の震える兵士のように)、もう取り戻せないんですよ。

そんな2人が友情を交わせるのは、当たり前のこと。

戦地であるのに「海の向こうにはこんなことはない」というジャクソンのセリフが哀しい…。

また、キャスティングが絶妙なのです。

PTSDを抱えた帰還兵を演じるギャレット・ヘドランドは、彼史上最高の演技だと思います。彼と友情を育むのは『ストレイト・アウタ・コンプトン』『キングコング/髑髏島の巨神』のジェイソン・ミッチェル

差別主義者で夢想家で高圧的な兄よりも次第に弟に惹かれていくキャリー・マリガン

メアリー・J・ブライジは全ての台詞がブルースそのもの。

個人的にはやはり「ベター・コール・ソウル」「ブレイキング・バッド」のジョナサン・バンクス氏に助演賞あげたい。こういうおじさんは、現在にも、日本にもごまんといる。

こうした作品を、もっとちゃんと宣伝してほしかった。

今からでも遅くはないはず。ぜひ予告編からご覧ください。


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