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会社の破産、事業再生に関して整理する


倒産・・・というのは会社の終わりでもあり、始まりでもある。

ダイナミックな動きですね!

倒産を整理すると、

破産(清算)と事業再生(会社更生)に大別できるでしょう。今回はその事を整理しておこうと思います。

1.破産とは?

破産とはざっくりいうと、会社の清算手続きになりますね。

破産とは清算を目的とした債務整理手段の一つ。債務超過などによって継続的な経営が困難になった会社は、破産手続きを行うことで原則的にすべての資産・負債が清算される。

破産は、次に説明する事業再生(会社更生法、民事再生法)の結果として、「あ、こりゃ駄目だ」となって破産の手続きに切り替えられることがあります。

例えば、NOVAはそうだったみたいですね。

2007年10月26日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請し、保全命令を受け経営破綻。そのまま倒産した。負債総額は約439億円。その後、受け皿会社となるジー・コミュニケーションへの事業譲渡の結果、事業の実態がなくなることから、同年11月15日に会社更生手続きを棄却し、11月26日に大阪地裁は職権で破産手続開始決定した[3]。

破産という手続きには至らなくてもひっそりとなくなった会社もあります。例えば、ライブドア

目標であった会員数100万人を大きく上回ったものの、黒字化へは結びつかず、またブロードバンド定額化の波に対応出来なかった事も要因となり、2002年(平成14年)に民事再生法の適用を申請した。無料ISP事業、ISPブランド名及びサービスをオン・ザ・エッヂへ譲渡した(その後オン・ザ・エッヂはエッジを経てライブドアへ商号を変更)。オン・ザ・エッヂへの事業譲渡後、ライブドアは「株式会社ヴ・ナロード」へ商号を変更、2003年(平成15年)7月に民事再生手続が終結した。しばらく休眠状態で登記上は存在していたが、その後正式に解散した。

今の世代は、ホリエモン(堀江貴文)さんは知っていてもライブドアは知らん!という人も多いと思いますので、この辺りも。

ちなみに、ライブドアショック(2006年1月17日)とも呼ばれる株価の暴落も起こりました。一企業の動向がここまで株価に影響を及ぼした事例はそうないんではないかと。

2006年1月16日(月)夕、東京地検特捜部は証券取引法違反の疑いでライブドアを家宅捜索し、17日(火)の東京株式市場は「ライブドア・ショック」に見舞われた。同社が株式を上場していた東証マザーズなど新興3市場の株価は大幅下落。午前中は一部企業の問題と受け止める参加者が多く株価への影響は新興市場に限られたが、後場に入ると個人投資家のろうばい売りが主力銘柄にも波及。東証1部の値下がり銘柄数は9割に達した。
18日(水)は「ショック」がさら拡大した。大幅な株式分割で、売買単位でみれば東証全体の45%を占めるまでになったライブドア株に大量の売り注文が殺到し市場は混乱、東京証券取引所は午後2時40分に株式の全銘柄の取引を停止した。東証は同月に1日当たりの注文件数の処理能力を引き上げたばかりだったが、午後2時25分に約定件数が取引を円滑に処理できる上限を超えた。日経平均株価の終値は前日比464円安の1万5341円。2日間の下げ幅は926円(5.7%)に達した。
東証は19日(木)、後場の取引開始時刻を午後1時からとし立会時間を30分短縮した。日経平均は4日ぶりに反発し、前日比355円高の1万5696円で取引を終えた。同日の約定件数は390万件と東証が当時、取引停止の目安としていた400万件をかろうじて下回り、2日連続の取引停止を免れた。東証は時間短縮を4月21日まで続け、この間に売買システムを大幅に増強した。

話がそれました。

つまり、会社の清算という手続きが破産と理解してもらえればよいかと。

そして破産はいわゆる法的整理が必要になるため(会社は

そもそも会社というのは、法律上で、登記されて法人格が与えられるわけです(会社法第911条)。


株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
一  第46条第1項の規定による調査が終了した日(設立しようとする株式会社が委員会設置会社である場合にあっては、設立時代表執行役が同条第3項の規定による通知を受けた日)
二  発起人が定めた日
商業登記は,会社(株式会社,合名会社,合資会社,合同会社)等について,法人登記は,会社以外の様々な法人(一般社団法人・一般財団法人,NPO法人,社会福祉法人等)について,その名称や所在地,役員の氏名等を公示するための制度です。会社・法人は,設立の登記をして初めて法人格を得ることができますし,基本的な情報を登記することによって信用の維持を図ることができます。また,商業登記は,取引の安全と円滑に資することにもなります。実体に合った正しい登記がされるため,登記申請に際しては裏付けとなる書類を添付する必要があるほか,虚偽の登記申請や登記申請の懈怠に対する罰則も定められています。

商業登記と法人登記は営利目的かどうでないか?によって異なってきます。

いずれにしても法務局に届け出て、初めて会社が設立されます。清算するときもやはり法律上の手続きがいるわけです。

法的整理においては裁判所が仲介して債権などの整理が進められていきます。

法的整理には、破産と特別清算の2つがあります。

破産は破産法に基づいて手続きが行います。この際に、裁判所が選任した破産管財人(多くが弁護士が選任される)が、法的整理対象の会社の財産を清算します。

なお、特別清算という制度もあります。特別清算を利用できるのは株主会社のみで、特別清算人(破産法における破産管財人に相当する)を申し立てている会社が選任できるのが特徴です。破産管財人のように法律の専門家(弁護士)ではなくてもよいことになってます。

なお、会社を破産させる場合には、予納金(破産の規模に応じて、数十万円から数百万円)が掛かってくるため、特別清算の場合、予納金が低額ですむ(5万円ぐらい?)

特別清算のためには、債権者の過半数の同意かつ総債権額の3分の2以上の同意が必要です。

おそらく特別清算が利用できるのは、債権者が分散しておらず、破産手続きの費用を低額で、簡略的に清算したいケースに限られるでしょう。

破産の場合は、いわゆる債権者集会(残った財産をどのように分配するかを話し合う場)が開催されますが、特別清算では開催の必要なく、会社を清算できるので、結果として処理期間が短くてすむでしょう。

詳しくは、この辺りも参照してみて下さい。


2.事業再生の手続き

事業再生に望みをかけるが会社更生法、民事再生法になります。

 ・会社更生法

 ・民事再生法

バブル期には産業再生機構による産業再生法もありましたね。

産業再生機構主導で有名なのは、ダイエーですね。

今ではこちらでしょうか(こちらは産業再生を主目的にしたものではないですが)?

産業革新機構⇒産業革新投資機構

って、間違え探しみたいですが、産業革新投資機構なんていう組織があります。こちらの主導で設立された会社は、

産業革新機構の主導で、ソニー・東芝・日立のディスプレイ部門が統合されて誕生し、2012年4月1日に事業活動を開始した[2]。

というジャパンディスプレイですね。

ジャパンディスプレイの不適切会計に関する第三者委員会の原文はこちらから。


3.事業再生の手続きに関する考え方の整理

事業体によっては特殊な経緯で事業再生が行われるケースがあります。

たとえば、先のダイエーもそうです。ダイエーは、本来であれば会社更生法を適用されてしかるべき、だったとは思うのですが、適用されませんでした。

なぜか?

それは経済に与える影響が大きいとみられたからです。当時、バブル崩壊後の日本経済の状況を鑑みると、思い切った会社の事業再生ということに躊躇していたことは一定の理解はできます。

ただ、結果として、経営者ならびに株主、債権者の責任があいまいになったまま処理されるということになりかねません。

え!

事業の運営責任って、株主、債権者も問われるの?

と言われれば、その答えはイエスです。

会社更生法では、「更生」の範囲に株主、債権者も含まれます。

といっても安心してください。いわゆる有限責任なので、出資した以上の責任を問われることがありません(企業が粉飾だらけだったとしても、その粉飾に直接関わっていなければ、あなたが責任をとわれることはありません。*粉飾を主導したら話は別ですが)。

株主は減資といった処理が行われ、債権者は債権放棄が求められます。

減資が何%か?

減資は、資本金の額を減少させる手続き、です。

(例)資本金10百万円を減少させ、欠損金10万円を補填させることになった。

(借方)資本金 10万円 (貸方)その他資本剰余金 10万円

(借方)その他資本剰余金 10万円(貸方)その他利益剰余金10万円

減資においては一旦、「その他資本剰余金」に振り替えて、その後、「その他利益剰余金」に振り替えます。

ですから、

(借方)資本金 10万円 (貸方)その他利益剰余金 10万円

と処理しても○ですね。

こうした措置が行われる場合、「繰越欠損金」、いわゆる利益剰余金がマイナスになっている状況です。その穴埋めに、使われるわけです。

余談ですが、倒産関係を除けば、減資が行われる状況は・・・資本関係の整理、税務関係がほとんですね(たぶん)。

会計処理をみても気づくように減資したからといってキャッシュリッチになるわけではないです。

この辺りは内部留保に関連する誤解とも似てます(これは別途触れる予定です)。

内部留保が多い≒借金が少ない、とはいえそうですから(おそらく相関している)、安全性が高い企業とは少なくとも言えそうです。

ただ、ハイリスクを取っている企業であれば、内部留保を増やしながら、有利子負債を増やすというパターンもありそうですから(ソフトバンクもそうかな?)一概にはいえそうにはありません。

ちなみに、もう一つ、債権放棄という処理もありえます。

債権放棄の会計処理も確認しておきましょう。、

(例)売掛金A社の300万円に対して債権放棄を行った。なお、A社に対する貸倒引当金100万円を引き当ていた

(借方)貸倒損失 200万円 (貸方)売掛金 300万円

    貸倒引当金 100万円

となる訳です。ちなみに・・・A社はこれで収益が発生します。

(借方)買掛金 300万円 (貸方)債務免除益 300万円

なんか納得しにくい処理ですが、借金をチャラにしもらうということはA社にとっては払う予定のお金がなくなったので、その分だけ収益に計上され、税金掛かります。

もちろん!繰越欠損金を計上するような企業、つまり、こうした企業はそもそも事業がとして行き詰まっているでしょうから、税金はかからない(いわゆる赤字の企業は税金は払わなくてよい、ので)と思います。

ちなみに・・・会社更生法で立ち直った企業の代表例は、JAL(日本航空)でしょう。

JALは、100%減資を行いました。

こちらでも詳しく解説されてますが、

既存株主の持っている株券が全てなくなるわけです。持っていた人は何ともやるせない形にはなりますね。

ちなみに磯崎さんもこちらで解説されているように100%減資と99%は異なります。既存の株主がいなくなるのが100%減資ですね。元の株主が100分の1にされたものに価値が見いだせるかどうか・・・は別で議論するとして、まさにフレッシュスタートということで、全く新しい株主構成となります。

ちなみにJALは会社更生法の適用を受けるとともに、「企業再生支援機構」(現在の地域経済活性化支援機構)からの出資も受けています。この出資を受けるための必要条件が、この100%減資だったわけですね。

会社更生手続きは、株式会社のみが利用できる強力な手続きです。

債権者、株主の権利が制約し、更生計画に含めて、合併、減増資等の会社の組織再編行為も簡易に行うことができます。

かなり痛みが伴う。

わけですね。一方で民事再生法についてはこちらで既にふれた通り。

民事再生法は、従来の経営陣が事業の経営権を喪失し、管財人がその経営に当たる会社更生法と違い、経営陣の刷新は、法律上必須ではない。」

とあるのが魅力です。

ただし適用条件が、


早期の黒字化が可能
手続き費用や運転資金を用意できる
債務カットの対象とならない税金・社会保険の滞納額が少ない

ですので、いわゆる経営状況が極めて悪化した企業は適用できないでしょう。

レナウンも民事再生法を適用予定ですね。

こちらで更生した企業は、スカイマーク!ですね。


3.責任の行方

(1)経営者の責任を問わない形での再建

会社の再建において誰も痛みが伴わない、ということはあり得ません。ですから、誰かが損をしない話が進みません。

損というには、株主であれば、株主の権利の喪失(出資金の消失)、債権者であれば、貸したお金がなくなる(もしくは減免)になります。

借金とかチャラにしてフレッシュスタートするけど、経営者は責任を取らなくていいよね?とはなりません。

ですが過去の事業再建においては曖昧にされてきた事例はあります。

例えば、ダイエーです。

主力銀行が、1200億円の優先株を受け取って、かつ債権放棄を含む4000億円を支援したりと、2000年から2002年にかけて積極的に支援しました。

会社更生の枠組みでは行われないまま、曖昧な形で最終的にイオングループの傘下になりました。

この事業再生の在り方としてどうか?は分かりませんが、元いた経営者が居座ったまま(最終的には中内さんたち、創業者一族は退任されましたが)、では再建に向けたスピード感が失われます。

先ほどの減資は、経営者に責任を取らせる効果もあります。創業者は株を持っていますからね。

この権利が失われるわけです。

あとは、東京電力ホールディングスもそうですね。

こちらも会社更生法の枠組みではなく、原子力損害賠償支援機構(現 原子力損害賠償・廃炉等支援機構)が50.11%の議決権付き株式を保有する筆頭株主となっています。この機構は官民共同出資といいながらも理事長と幹事の任命権は内閣が有していますので、国主導といってもよいでしょう。

一旦、破綻させて・・ということもありえたとは思いますが、東京電力を保有している株主、債権者は、多岐にわたります(大手金融機関を含む有力企業が保有しています)。その状況下で、責任を取りましょう!ということについては消極的にならざるをえないかったわけです。

事業再生においては、法的な整理手続きを行わなくても再生した事例はあります。直近でいえば、シャープですね。

シャープは3888億円の出資を鴻海(台湾企業)から受け、鴻海が議決権66%を持つ筆頭株主になりました。この結果、V字回復を遂げるにまで至ってます。ただ、本当に意味で再生されたのか?という点はもう少し慎重に見極める必要がありますね。

粉飾の事例ばかりで取り上げられているオリンパス。そのオリンパスを救ったのはソニーでした。


ソニーを割当先とするオリンパス普通株式の第三者割当増資を実施して、11.46%を保有する株主となりました。先ほどの鴻海のケースとは異なり筆頭株主というわけではありませんね。

そしてもう売却している笑

素早い。オリンパスの医療、カメラ事業での資本提携で得られたところは多かったでしょう。さらに、当時安かったオリンパスの株はその後、上昇しましたから、かなりの株価の値上がり益を得たとみてよいでしょう。

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2012年9月に資本提携して、2019年8月に売却していますのでちょうど良い時期に売ったことになりますね。


(2)経営者の責任は問うたうえでの再生

民事再生法において、必ずしも経営者の責任は問われない、と書きましたが、実は多くの場合は問われています。

例えば、スカイマーク。

民事再生法申請時の社長であった西久保愼一氏は退任しました

インテグラル代表の佐山展生氏が会長に、日本政策投資銀行でエア・ドゥなど航空会社の再建を担った市江正彦氏が社長に就きました。

彼らは西久保さんとは全く関係をもたない経営陣です。

当たり前のことですが、出資者は元の経営者に居座ったままで経営改革が行えるとは思っていません。ですから多くの場合において、経営陣の刷新が測られるわけです。民事再生法においてもこれは共通です。

いわゆる損をしたくない、という強力なインセンティブが働いているので、必死に事業再生をしようと試みます。これがすごいところです。

これは鴻海から出資をうけたシャープにおいても共通していたことですね。

鴻海精密工業出身の戴正呉氏が、2016年8月13日にシャープの社長に就任しました。

2020年5月19日付で、社長に交代を発表しています。

*ちなみに株主総会をもって交代が発表されるので、まだ社長は、戴正呉氏のままです。

オリンパスにおいても2012年に社長が交代しています(笹 宏行氏に)。

そう考えると、大塚家具においては、大塚久美子氏は退任せずに未だに同社の社長を務めている訳ですが(ヤマダ電機の出資を受けているにも関わらず)・・・過去の経験則(ダイエーなどの事例)でいえば、まず上手くいかない、ですが、どうなるでしょうか?

普通退任が求められるはずなのですが、出資を集め、出資者を説得するという技量において大塚久美子社長の技量は凄いものがあります(私が出資者だったら納得しませんが、どうやって説得したんだろう・・・)。

4.事業再生の在り方に正解はない

事業再生の在り方には正解はありません。経営陣の責任を取ろうが取るまいが、事業が再生出来ればよいわけです。

ですが、事業の責任の所在を問わない形での再生は、なかなかうまくいかないのが実情です。

ダイエーなどはその典型的な事例でしょう。

近年の事業再生の事例、JAL、スカイマークなどをみると経営責任(出資者の責任も含む)を取った上で、法的整理を行い、フレッシュスタートをした方が比較的早期に再生できているように思われます。

経営者の責任という意味では、経営者を交代して、外部からの出資を受けて再生したオリンパス、シャープにおいても同様です。

出資は受けるけど、現経営陣の体制はそのままよ♫ということはけじめがなくなり、結果として経営組織そのものが弛緩するともいえるでしょう。

ですが、この辺りはまだ研究で実証されているとはいいがたいケーススタディに過ぎません。

差し当たっては、大塚家具、東京電力などの事業再生がどういった形で行われていくのか?ということを見ていくことが重要かと思います。東京電力はやや特殊な事情を抱えているので、比較が難しいですが・・・。

新型コロナウィルス感染症に伴う事業再生において、どのような形で事業再生を行うべきか?

その際に、どのような経営責任が問われるべきなのか?

もしくは問わないべきなのか?

考えてみると面白いです。

レナウンの事業再生にも着目していきたいですね。


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