見出し画像

熱い心



実はこのnote投稿の他に、仕事系のブログをほぼ毎日書いている。
以前は「愛の辛口劇場」と称して、かなり厳しいことを、ちょっと厳しいおばさん風の語り口で書いていて、私と同年代か、または少し下の世代の人たちに好評だった。

それはおそらく、会社の後輩などに言いたくても言えない、と思っていることを私が代弁していたからではないか、と勝手に思っているのだが、本当のところはわからない。

しかし、最近はこの辛口をほとんど書かなくなってしまった。

「時々はいいのですが、頻繁に書かれるとちょっと凹むかも」
と生徒さんが言ったこともあるが、一番は「怒ってまで伝えたいことがなくなった」のだと思っていた。

この愛の辛口劇場の元になるのは、「怒り」と「伝えたい気持ち」だ。


何でそんな変な噂をみんな信じているのか
何でそんな嘘を面接で言って受かると思うのか

など、ある意味余計なお世話で怒っていたことに気づいたのかもしれない。
ある意味「何を信じるかは、それぞれだから」と突き放したように、でも余計なお世話は焼かないと言う、良いのか悪いのかわからない状態になっていた。

先日、仕事系ブログを書いている時、最初はテーマを見つけてスムーズに内容を書くことができたのだが、だんだんと「あれも伝えたい」「こんなんじゃ受からないよ」と思ったりしていると、出来上がったものがかなりの「辛口」になっていた。

このブログを今日アップするかどうかをためらったが、試験も近いから思い切ってアップすることにした。「辛口版」と書き、「メンタルが弱い方、褒められると伸びると思っている人は読まないでください」と言う注意書きまで入れた。

翌日のアクセスは伸び悩んだ。
「やっぱりな。辛口って求められてないんだよね」
と改めて思った。まあ、たまにしか書いていないからいいか、と思って。

ところがその翌日、アクセスがぐーんと伸び、いつもの3倍くらいになった。
さらにハッシュタグランキングで17000投稿くらいの2位や、3位にあらゆるジャンルで入っていたのだ。

何で?

と正直思った。
その後冷静に考えてみて「実はみんな辛口でも、本当のことを知りたいと思ってくれた証」なのではないか、と思ったのだ。


私が若い頃は、「怒られるうちが花」と言われ、大人の人から注意を受けることはむしろありがたいことで、凹むこともあったが教えていただきありがとうございます、と言う気持ちを持っていた。
それでも私が先輩から言われた言葉で、最もショックだったのは、
「あなた大体ガサツなのよ」
と言う言葉だった。

確かに、新人客室乗務員時代は、仕事は遅いし、失敗は多いし、目の前のことで精一杯で、お客様にものをお渡しするときに指を揃えたり、急いでいるときにはバタバタと足音をさせて歩いていた。
とても自分の所作にまで気を配ることはできなかったのだ。
だから「ガサツ」と言われたことはショックだったが、反論はできないくらいに納得していた。

ただ、あまりにもショックだったので母に愚痴を聞いてもらって慰めてもらおうと思って電話をしたほどだった。

「あなた大体ガサツなのよ、って言われたんだよ。酷いと思わない?」
というと、ケラケラと母は笑ったのだ。
人が落ち込んでいるのに。

「まあー先輩はよくみとるねー、お母さんいつも言いよったよね?あなたが階段を降りてくるときにドタバタ降りるな、とか、洗面所を使った後の水滴は吹きなさいとか。でもお母さんが言ってもあなたは全然言うこと聞かんかったよね?今あなたは会社からお給料もらいながら、それを直してもらいよるんやろ?文句言いなさんな」

返す言葉はない。
母に慰めてもらおうと思った私が甘かった。
そう反省して、先輩から言われた所作を真剣に気にするようになっていったのだ。


時代は変わり、「褒められると伸びるんです」と言うことを、みんなの前で言う人が増えた。
私も生徒さんにアドバイスをする際には、かなり気を付けて言うようになった。
もう一言言いたい、と思ってもその手前でやめてしまうことも増えてきた。
決して良いことではないと思う。
でもこれを繰り返していると、「怒り」や「どうしてもわかってほしい」と言う情熱さえもだんだん消えていくことに気がついた。

今日映画館で「TOP GUN」を見て、最初で泣き、途中で泣き、最後も泣いた。
まだトムクルーズが若かりし頃の「TOP GUN」は、現役客室乗務員時代で、同じパイロットであるキャプテンたちが「あれは見た方がいい」と言っていて、ステイ先の名古屋で一回目を見た。
飛行機のシーンと、命をかけて国を守るパイロットたちの「熱さ」が、お客さまのために命を張っている自分の客室乗務員という仕事とリンクして、泣けたのだ。
あれから30年以上経って、教官役のトム クルーズを見て、そして戦闘シーンを見て、飛行機を、パイロットたちの熱い思いを見て、何度も泣いたのだと思う。

つまり私の心の中には、まだまだ熱いものがちゃんと残っているし、伝えたいこともある。
ときにはそれを伝え、わかってくれる人だけがわかってくれればいいじゃないか、と思っている。怒りや感動は、熱い心の表れなのだから。


おそらく誰にでもある、熱い心。
蓋をしているだけで、眠らせているだけで、炎はちゃんと残っていた。
もう少しその炎を確認するために、あと3回は「TOP GUN」を映画館で見ようと思う。


サポートありがとうございます!いただいたサポートは、次の良い記事を書くために使わせていただきます!