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読書感想文第3弾「スカーレット」


そろそろ読書感想文を書いてみようと思った。
昨日友人から「最近どんな本を読んでる?」
と聞かれたのがきっかけだった。

昨年末ごろから、膨大な量の電子書籍やら、
紙の本を読んでいて、1ヶ月10冊くらい
平気で読んでいる。
小説から、ビジネス書まであるのだけど、
もちろん感動して続きを紙の本で買ったものもある。

しかし、私が読書感想文を書きたいと思うのは、
ボロボロになるまで何度も何度も読み返した
「私の中での名作」
だけだ。

最近読んで感動した小説の紹介だと、感想が
浅い気がする。

そこで、私がおそらく最も読み返しているだろう
本を紹介したい。

その前に、第一弾は「上流階級」高殿 円著

第二弾は「君たちに明日はない」 垣根 涼介著

を書いているが、第一弾は私が知る限り二人の人が
実際に本を購入して
「とても良かった」と言っていただいた。
実際に読んでくださった方々は女性なので、
もしかすると女性は女性作家の本が好きなのではないか、と思っている。
(私もどちらかというと、読むのは女性作家の本が多い)

そこで、今回も女性作家の作品を選んだ。
この本は、私のバイブル的なもので最近はあまり
読み返していないが、40代後半に何度も読み返していた一冊だ。
なぜなのか、は理由はなんとなくわかる気がする。
今よりもずっと迷いが多く(今でも十分迷いはあるが)背中を押して欲しい、
と思っていたので何度も読み返したのだと思う。

この記事の写真は、実際に私が所有している
本の写真だが表紙が残っているのは、
第一巻だけで、第二巻以降は表紙さえなくなり、
本当にボロボロだ。
でも捨てられない大事な本だ。

前置きが長くなったが、タイトルは
「スカーレット1~4」」

お気づきの方もいるだろう。

あの「風と共に去りぬ」の続編だ。

スカーレット オハラとレッド バトラーの恋の物語であり、奴隷制があった
頃のアメリカ南部を舞台にしたあの不朽の名作が、著作権が切れる際に、
「風と共に去りぬ」の著者である「マーガレット ミッチェル」の遺族が続編を
書いてくれる作家を募集した。

すると、マーガレット ミッチェルと同じく
アメリカ人女性の「アレクサンドラー リプリー」
が選ばれ、この「スカーレット」を書いた。

調べると、マーガレット ミッチェルは自身の
故郷であるアトランタを舞台にして書き、
同じくアレクサンドラ リプリーも自身の故郷である
チャールストンを舞台にして書いている部分がある。

物語は、「風と共に去りぬ」の最後「タラへ帰ろう」とスカーレットが故郷へ
帰るシーンの続きから始まる。

(ここからはネタバレもあります)

タラに戻ってスカーレットには、多くの課題が
待ち受ける。
自分の母親のように自分を育ててくれた乳母の
マミーも病に伏せ、母親も親友だったメラニーも
亡くしたスカーレットには、絶対にいなくては
ならない存在だったマミーも亡くなる。

お嬢様として、良家の奥様に収まっていても
良かったスカーレットが夫も亡くし、
全ての家の責任が彼女の肩にかかってくる。

この辺りは、女性の社会進出が1991年に出版されたこの本には
投影されている。
スカーレットに現代女性の姿が重なって見える。

レットとの結婚も互いの意地の張り合いにより、
なかなかうまくいかない恋愛部分も描かれていて、
物語の舞台もアトランタのタラ、
サウス カロライナ州のチャールストン、
スカーレットの祖先の地とされている
「アイルランド」
その首都のダブリンへと広がり、
その慣習や文化の違いも面白い。

私がこの本をたびたび読み返したのは、
スカーレットの繊細さと
強さの両方に惹かれたからかもしれない。
決してあの時代の女性らしくない(良い意味で)
時代に合わせようとせず、自分が正しいと思うこと、自分がやるべきことを淡々と力強く、賢くやっていく姿は、とても勇気をもらえる。

その中でも私が何度も生徒さんたちにも話したことがある、印象に残っている
言葉が二つある。

1つ目は、スカーレットの父親が生前スカーレットに伝えた言葉。

「人生においてどちらかを選ばねばならない時は、辛い方を選べ」

スカーレット第三巻より アレクサンドラ リプリー著 森 遥子

この言葉を思い出し、スカーレットは一つの辛い決断をする。


そして、もう一つ。
スカーレットが、従兄弟のコラムに決別の際に言った言葉。

「ひとつだけ言えるとすれば、何もかも失ったような気がする時は、それは他人に期待していたからなのよ。他人はいつか裏切るわ。立ち去るか、先に死んでしまうか、ほんとうに裏切るかするわ。でも自分だけは自分を裏切ることは決してありません。だから私は、自分に期待したの。自分に賭けたの。(途中略)そのかわり、その分自分に期待したのよ。もっと働け、もっと考えろってね。」

スカーレット第四巻より アレクサンドラ リプリー著 森 遥子訳


今こうして書いていても、その言葉の力強さに
感動する。
原書ではどのように書かれているのか、をいつか確認したいと思いながらもまだできていないが、図書館にあるのは発見しているので、いつか借りてみようと
思っている。

結局この「日本語訳」が素晴らしくて、
私は何度も何度も読み返したのだと思う。

私が当時大好きだった、森 遥子さんの訳だ。
雑誌のインタビューで、森さんがスカーレットが
出版されるのを聞いて、売れっ子作家であるにも
関わらず、自ら出版元である新潮社に行き、
この訳を自分にやらせて欲しいと直談判したと
読んだ。
スカーレットとレッドの大ファンだった森さんが、
スカーレットのことはあまり好きではなかったと
言われる、アレクサンドラ リプリーの原作を
意訳した、と言われている。
真偽は、実際に原書を読んでみないとわからないが、私は森さんの訳した
「スカーレット」に惚れ込んだと言っても言い過ぎではない。

森さんがスカーレットを理解し、スカーレットを
愛していたからこそ、できた訳だと思っている。
この訳をするにあたり、アトランタ、アイルランドにも
実際に行ったと言う森さん。
実はこの時すでに病に冒されていて、それを押しての旅であり訳であったと
読んだ。

そしてこの訳を終えた一年後に亡くなっている。

余談だが、森さんが亡くなった時は、ほぼ全ての著書を手にしていた私にとっては、本当に衝撃で、もう新しい作品が読めないのだ、という絶望感を味わった。
今でも数冊は手元に残していて、時々読み返しているが、本当に大好きな女性
作家だった。
私の小説好きは、森さんによって開花した、と
言っても言い過ぎではない。
森さんにこのスカーレットの訳をしてもらって、
本当に私は良かったと思っている。

書けばキリがないくらいの読書感想文だが、
女性は必ず共感できると思う。
それはスカーレットの生き方、考え方は例え時代が
違っても、十分今に通じる部分がたくさんある。
1936年に出版された「風と共に去りぬ」が
時代を経て、1991年に続編が書かれたことに
よって、時代を超えて多くの人たちに読まれることになったのは、
マーガレット ミッチェルのご遺族に感謝する他ない。

強く生きる女性のお手本としても、スカーレットはきっと参考になるし、
勇気をもらうことだろう。

私も、また改めて読み返してみようと思った。
読書感想文を書こうと思わせてくれた友人にも感謝だ。


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