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雨の思い出


晴れ女である私は、雨に降られる確率が、他の人に比べてかなり低い。
それでも年に数回は雨に降られることがある。2週間ほど遅い梅雨入りをした日は、まさにそんな日だった。

土砂降りという言葉がぴったりで、素足で履いてるサンダルもびしょびしょに濡れていた。
一旦濡れて仕舞えば、慣れてしまい、なんとも思わなくなる。
傘はお気に入りの傘なので、気分も良い。
何より明日は晴れる、今日1日限りの雨、とわかっていれば、久しぶりの雨をむしろ楽しめる。
さらに雨によって気温は下がり、小止みになれば過ごしやすささえ感じさせてくれる。

滅多に遭遇しない雨の思い出は、案外少ないが、一つ思い出した雨の記憶がある。

台風直撃で、高校が授業を切り上げ早退したことがあった。
今の時代ならば、台風予報が出た時点で、学校は休校になるが、昭和の時代は、
天気予報が正確でなかったのか、なにがあっても学校に行くべきだと
いう風潮があったのかはわからないが、鉄筋校舎の中で
台風の過ぎ去るのを、全校生徒は待っていた。
ようやく台風が過ぎ去り、雨も止んだ頃帰宅することになった。
しかし、台風直撃の雨で川が氾濫し、道路は冠水。当然バスも路面電車も走っておらず、(走れない)歩いて帰るしかなかった。

友人と2人で冠水した道路に出てみると、なんと膝までの水位になっていて、
制服のスカートが濡れないようにたくしあげて、まるで子供用の浅いプールの中を歩くかのように、水に足を取られないように慎重に歩いて帰った記憶がある。
当然冠水した水は濁っていて、考えてみれば不潔極まりない中歩いていたのだが、そんなことは学校の先生も、親たちも全く気にせず、子どもたちが無事に帰り着くことを信じて疑ってなかった時代だ。

今ならば、休校になり、休校にならなくても電車やバスが動いている間に、帰宅させていただろう。
しかし、当時の友人も私も、むしろ浅いプールの中を歩くような、異常な帰宅時間を楽しんでいたと思う。

時代が違う、と言われればその通りだが、あの時代だったからこそ、こんな経験ができたのだとも言える。
雨や台風の思い出は、災害にならない程度ならば、あってもいいものではないかな、とどんなに傘をさしていても、腕や洋服が濡れてしまうほどの雨に降られながら、思い出していた。




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