見出し画像

小説における電話のシーン

 小説における電話のシーンが好きだ。

 特にこれといった理由はないのだけど、多分、電話をするという行為がキャラクターに対してより生活感を賦与している気がするからだろうか。
 ある種のリアリティが感じられるのだろう。

 だから、小説を読んでいる時も自分が小説を書く時も、電話のシーンはなんかいいなあと思い、少しワクワクする。

↓これまでにnoteに投稿した小説に出てきた、電話のシーンの例

①別れたガールフレンドとの通話

『ありがとう。ヘンリーは? あなたには夢ってあるのかしら?』
「夜中の一時に、神経症の元カノから電話がかかってこないことかな。ちなみに、牛糞は安くないぜ。価値がある。肥料に使われてるからな」
『あんたって最低。くたばっちまえばいいのよ』
(短編小説『僕は知らないし、気にしない』より) https://note.com/uekiishi/n/n438301b84335

②謎の男との通話

「あなたは誰? 一体何を言ってるの?」
『俺の言う通りにした方がいい。でないと君は必ず後悔するぞ』
「ちょっと待って、わからないわ。あなたは誰なの? どうして私に母国から脱出しろなんて言うのよ?」
(ショートショート『夜景国家』より) https://note.com/uekiishi/n/n881dc96f92ff

③地下世界案内所との通話

『はい。こちら〈地下世界案内所〉でございます』
 凍結した路面のように冷たく、精密な時計のように無機質な女の声だった。『地下世界の訪問をご希望ですか?』
「ええ、まあ、はい、そうです」私は動揺して、深く考えずに答えてしまった。
(短編小説『夢のトリクルダウン・地下世界の片道切符・溶ける氷主義者』より) https://note.com/uekiishi/n/ncbdd04c40045

 電話のシーンを書く時は、通話をしているという状況を分かりやすくするため、通話相手の台詞は『』で閉じるようにしている。

 そして相手の姿が見えない分、どんな言葉を選び、発するかが、重要になってきそうだ。

 全編にわたって電話のシーンだけで構成された作品とか、激しい口論やディベートが繰り広げられるシーンとか、そんなのも書いても面白いかなと思っている。

この記事が参加している募集

#私の作品紹介

97,506件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?