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「ただ行ってみたくて」 ポーランド編⑦

『ポーランド人の血液型』

飛行機に乗れば酔い、枕が変われば、眠れない、食べなれない物を口にすれば、お腹を壊す。そんな軟弱者だが、知らない場所には行ってみたい。冒険などではない、旅と呼ぶのもおこがましい、理由などない、ただ行ってみたいだけだ。

今回は、馴染みの薄いポーランドへ。美人に浮かれ、ビールを飲みまくり、料理に舌鼓をうち、アウシュビッツでは考え込む、ひたすら自由でテキトーな8日間の旅行記。

ポーランド旅行記⑦

「ビールでも飲みに行こうか?」

僕は、妻に言った。

ワルシャワには他にも歴史的な博物館やら何やら見所はたくさんあるのだが、僕らはこれ以上行く気はなかった。

それよりもせっかく雨がやんで、ほんの少しだが暖かくなったのだから、ビールでも飲みたい。

ちょうど旧市街の城壁の側に、感じのいいビアホールがあることをちゃんと調べていた。

「ついでにさ、旧市街も眺めていこうよ」

と、僕は軽く言ったが、この旧市街と新市街からなるワルシャワ歴史地区は、ユネスコ世界遺産にも登録されている場所で、ついで、なんて決して口にしてはいけない場所だった。

特に旧市街の建物は、ドイツにめちゃくちゃにされて跡形もなくなった建物を、寸分狂いなく作り直したものだ。それも当時は設計図などないから、絵画などを見て作りなおしたのだ。これはまさにワルシャワ市民の意地の結晶だった。

ちょうどユネスコ世界遺産の登録の看板があるが、そこには跡形もなくなった戦争当時のワルシャワ 歴史地区の写真があった。

ドイツ人め、本当にひどいことをする。きっとポーランド人はドイツ人のことを好きではないだろう。こういう恨みはいつまで経っても忘れないものだ。

そして、敵とはいえ、こんな美しい街を粉々にしてしまうメンタリティーて、いったいなんだろう、と思う。

もしかして美しいからこそ、壊したくなったのかもしれない。うん、それなら何となく理解できる。これはまさに相手へのやっかみだ。

お前らごときが、こんな美しい街を持ちよって、え~い、みんな壊してやる。そしてもう二度と反抗できない気持ちにさせてやる。

こんなところか。でも、である。往々にして罰は敵の心を挫くことにはならない。一層反抗心を煽るだけだ。

ただ思うのは、日本も中国大陸や朝鮮半島で同じようなことをしているのだろう。日独伊三国同盟。腰抜けだったイタリアは別として、日本とドイツはなまじ真面目なだけにタチが悪い。相手を挫くためなら手段を選ばないところがある。そして真面目ゆえに、手心を加えるなんてことはしない。

もしかしてドイツ人も血液型はA型か?調べてみると、やはりドイツでは四割を越える人がA型らしい。次に多いのがO型だとか。そしてB型が一割強しかいない。そうだよなぁ。ちなみにポーランドもA型の国でした。なるほど。壊された街を意地でもきっちりと直すはずである。壊す方も几帳面なら、直す方も几帳面だ。

そんな世界遺産の歴史地区を眺めているうちに、ビアホールに到着した。入り口は狭いが、中は細長くて広い。席はすでに八割方埋まっていた。様々な言語が飛びかっているところからも、地元の人たちではなく、ほとんどが観光客だろう。

すぐにドラフトビールを注文した。おなかは空いていないので、つまみにはボイルしたソーセージを頼んだ。

やはりビールがうまい。銘柄はポーランド産のティスキエだ。ほんのり甘く、やさしい飲み口で、なかなかいい。調べてみるとポーランドはビール大国らしい。隣国にはドイツやチェコがあるだけに、みんなビールを飲むし、様々なメーカーのビールがある。

しかし、驚きなのが、この店のお通しである。ビールを頼むと、すぐに持ってこられたキュウリのピクルスには驚いた。丸ごとなのだ。

確かに味は悪くないのだが、丸ごとなのにはびっくりする。見るとまわりの人たちは、ビールをぐびぐびやりながら、このキュウリの丸ごとピクルスにかじりついている。僕なんかは半分も食べると飽きてしまったが、欧米人はバリバリ、ボリボリと食べきっていた。

彼らは本当に大食漢だ。ビールを飲みながら、スープを飲み、その間にピエロギをつまみ、最後には手のひらよりも大きいカツレツを食べていた。体が大きいはずである。

時間は午後三時だ。昼食でも夕食でもない時間だ。僕らはボイルしたソーセジでお腹いっぱいだった。

帰り道はもう一度旧市街をブラブラと歩いた。雨も上がり、所々に晴れ間が出ている。

ふと見ると、街のシンボルである銅像にマフラーがまかれている。ここでも銅像にマフラーか…一月に行ったソウルの慰安婦像を思い出した。ここワルシャワでも見るとは思わなかった。

だが、ここワルシャワでは意味合いが違った。

巻かれているマフラーは白と赤、ポーランドの国旗の色だ。つまりサッカーポーランド代表を応援するためのマフラーなのだ。なかなか粋なことをする。


流石にヨーロッパだけあって、ポーランドはサッカーに対する思いが強い。ワルシャワの街の広告のほとんどがサッカーに関するものだ。特にスター選手であるレバンドフスキーの顔は見ないことがないほどだ。いたるところにあった。

ホテルのフロントにも、W杯の結果と日程が一番見やすいところに貼ってあった。

そうだった。今日は午後八時からポーランド対コロンビアの試合がある。そして、その前には、日本代表の試合だ。

確か試合は午後五時からだ。僕らは急いでホテルへ帰ることにした。

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