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【読書メモ】『心理的安全性のつくりかた』(石井 遼介著)

▶今回の書評本『心理的安全性のつくりかた』

・『心理的安全性のつくりかた』
・石井 遼介著
・日本能率協会マネジメントセンター

▶読書メモ

第1章 チームの心理的安全性

  • 「心理的安全性」とは、組織やチーム全体の成果に向けた、率直な意見、素朴な疑問、違和感の指摘が、いつでも、誰もが気兼ねなく言えること

  • Googleのリサーチによると、真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」だということ。

  • 心理的に安全なチームは、パフォーマンスと創造性が向上する、メンバーの離職率が低く、収益性が高く、多様なアイデアを効果的に活用することができる。また、チームへの満足度、エンゲージメントを向上させる。

  • 正解のある「これまでの時代」→正解のない「これからの時代」

    • 人材・チーム:

      • 優秀なチーム:
        早く安くミスがないチーム→模索・挑戦し失敗や実践から学べる

      • 必要な人材:
        言われたことがきちんとこなせる→変化を感じ、工夫や創造することができる

      • コミュニケーション:
        トップダウン→さまざまな視点からの率直な対話

    • マネジメント:

      • 目標設定の仕方:
        昨年対比で数%向上→現状の延長線上にない意義あるゴール設定

      • 予算の配分:
        選択と集中→探索と実験

      • 努力の源泉:
        不安と罰を与える→適材適所と働く意味、サポートを与える

      • チームへのスタンス:
        今儲けろ→未来を作ろう!

  • 対人関係の4つのリスク

    1. 「無知」→必要なことでも質問をせず、相談をしない

    2. 「無能」→ミスを隠したり、自分の考えを言わない

    3. 「邪魔」→必要でも助けを求めず、不十分な仕事でも妥協する

    4. 「否定的」→是々非々で議論をせず、率直に意見を言わない

  • 心理的安全なチームというのは、外交的であることでも、アットホームな職場のことでも、単に結束したチームのことでも、すぐ妥協するヌルい職場のことでもないチームのためや成果のために必要なことを、発言したり、試してみたり、挑戦してみたりしても、安全である(罰を与えられたりしない)ということである。

  • 「心理的安全性」×「仕事の基準」の4象限

    1. 高い×高い=「学習する職場」
      学習して成長する職場。
      健全な衝突(ヘルシー・コンフリクト)と高いパフォーマンス

    2. 高い×低い=「ヌルい職場」
      コンフォートゾーン。仕事の充実感はない。

    3. 低い×高い=「キツい職場」
      不安と罰によるコントロール。

    4. 低い×低い=「サムい職場」
      余計なことをせず自分の身を守る。

  • 組織論における3つのコンフリクト(衝突)

    1. 人間関係のコンフリクト
      =人の好き嫌い

    2. タスクのコンフリクト
      =同じ問題や事象について意見が異なる、意見が衝突する
      →基本的にはパフォーマンスに悪影響を与えるが、実は心理的安全性が担保されている状況下では、タスクのコンフリクトだけは、業績にプラスの影響がある。
      =「健全な対立(ヘルシー・コンフリクト)」

    3. プロセスのコンフリクト
      =「それはうちの仕事ではない」というたらい回し

  • 日本の組織では「①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎」の4つの因子(話助挑新)があるとき、心理的安全性が感じられる。

    1. 話しやすさ=仕事と相手の状況を把握し、多様な視点から状況を判断し、率直な意見とアイデアを募集するために重要な因子

    2. 助け合い=トラブルに迅速・確実に対処・対応するときや、通常より高いアウトプットを目指すときに重要な因子

    3. 挑戦=組織・チームに活気を与え、時代の変化に合わせて新しいことを模索し、変えるべきことを変えるために重要な因子。
      チームによる「模索」「試行錯誤」。アイデアを思いつき、深め、発表し、フィードバックを得て、共創することのブレーキとなるような環境を外していく。
      やってきたことを、振り返り(リフレクション)、改善や撤退の判断につなげることまでを1セットとして「挑戦」に取り組むと良い。

    4. 新奇歓迎=メンバー1人1人がボトムアップに才能を輝かせ、多様な観点から社会・業界の変化を捉えて対応する際に重要な因子。
      「③挑戦」因子より、人に焦点を当てた因子。
      多様性と包摂(ダイバーシティ&インクルージョン)、所属意識(DIB:Diversity, Inclusion, and Belonging)とも深い関わりがある。

  • 心理的安全性の変革の3段階

    1. 行動・スキル(→変えやすい)

      • 一人一人が行動をとるかどうか

      • また、的確なタイミング・品質の行動がとれるかどうか(スキル)

    2. 関係性・カルチャー

      • 組織・チームが背負った歴史に起因する、チームとしての習慣・行動パターン

    3. 構造・環境(→変えにくい)

      • 会社や事業・ビジネスの仕組み自体に起因する構造・環境要因。

      • 「パワーバランス」「組織構造」「ビジネスプロセス」「業態上の制約」の4つに大別できる。

      • 例えば「ビジネスプロセス」の上流(例:要件定義)で決まったことを下流(例:テスト)で覆すことは難しく、徐々に裁量や自由度が減っていく。このとき、裁量「多」ならば心理的安全性が高く、裁量「少」ならば心理的安全性が低い。

      • 直接のアプローチは難しい。「前提」と捉えた上でその中で何ができるかを検討する。

      • 「パワーバランス」「階層構造・権力格差と承認プロセス」の2つについては、結果として変えることができるかもしれない。

第2章 リーダーシップとしての心理的柔軟性

  • 「関係性・カルチャー」を変えるには、リーダーシップが必要

  • 「リーダー」とは立場・ポジションのこと。「リーダーシップ」とは「他社に影響を与える能力」のことで、立場に依らない。

  • 4つの「リーダーシップスタイル」=影響の与え方

    1. トランザクショナル(取引型)・リーダーシップ
      アメとムチ・成果主義

    2. トランスフォーメーショナル(変革型)・リーダーシップ
      ビジョンと啓発

    3. サーヴァント(奉仕・支援型)・リーダーシップ
      メンバーの支え、活躍を支援する

    4. オーセンティック(自分らしい)・リーダーシップ
      自分らしさを発揮する・弱さも見せられる。

  • 良いリーダーはいくつものリーダーシップ・スタイルを使い分けている

    • トランザクショナルとトランスフォーメーショナルは補完関係にある

    • トランスフォーメーショナルは組織の効力感(有能感)に寄与し、サーヴァントは、組織の心理的安全性に寄与するが、良いリーダーは、変革型・サーヴァントの両方のリーダーシップを持っている

    • オーセンティック・リーダーシップの文脈でも、高いパフォーマンスを発揮しているリーダーは「本来の自己」「役割の自己」が高い次元で統合されている。

  • リーダーシップとしての「心理的柔軟性」の3要素
    ①必要な困難に直面し、変えられないものを受け入れる
    大切なものへ向かい、変えられるものに取り組む
    ③それら変えられないものと、変えられるものをマインドフルに見分ける

  • 4つの「リーダーシップスタイル」「心理的柔軟性」の関係性

    1. トランザクショナル(取引型)

      • 状況に応じた報酬を与える=②大切なもの、③マインドフル

      • 成果を上げる部下を重用する=①受け入れ

    2. トランスフォーメーショナル(変革型)

      • ビジョン・ミッションで人を動かす=②大切なもの

      • 個別化した成長支援=②大切なもの、③マインドフル

    3. サーヴァント(奉仕・支援型)

      • 部下の目標達成、自己実現を支援=①受け入れ、②大切なもの

      • 部下の強みを引き出す=②大切なもの、③マインドフル

    4. オーセンティック(自分らしい)

      • リーダーが自分自身を知ること=①受け入れ、②大切なもの

      • マインドフルに「いま・ここ」に存在=③マインドフル

  • 影響のためには「性格・心の中」のことより「行動」にフォーカスした方が効果的である。
    例えば「明日のプレゼン、自信ないです」というメンバーがいた場合、「頑張れ、自信持っていけ、絶対大丈夫だ!」と勇気づけてもその声掛けがけではなかなか厳しい。
    このような場合、「自信」という心の中や性格のことではなく「行動」にフォーカスすると、役に立つ、つまり影響を及ぼしやすい
    「自信それ自体は存在しない。いくつかの行動パターンに、自信というラベルを張っているだけだ」と捉える。つまり「彼は自信がある」といったラベルは、一連の行動の要約に過ぎないという立場をとる。
    つまり、自信があるかどうかを論点にするのではなく、準備・練習・対人スキルの習得という具体的な行動をとれるかどうかを論点にするべき
    このような自信ややる気など「心の中」のことは「ブーケ」に例えられる

    • 一つ一つの行動 = 一本一本の花
      アイコンタクト、良い姿勢、流暢に話す、大きな声・ジェスチャー

    • 行動を束ねたもの = ブーケ
      「自信」

  • 人々が互いに信頼し、尊敬し合っていることを、チームの心理的安全性の前提条件となるが、「信頼」も「尊敬」も心の中のことであり、「お互いを信頼するようにしよう」「みんな、お互いに尊敬し合ってくれ」などと、指示や命令することで影響を与えることはできない。だからこそ「信頼が大事、尊敬が大事」という影響を及ぼせないことを重視するのではなく、結果としてそのような信頼や尊敬が生まれるような、具体的に取れる行動を重視する必要がある。

  • 「役に立つ行動」と言ったとき、行動それ自体が必ず役に立つわけではない。役に立つかどうかは、状況・文脈による

  • 心理的安全性の4つの因子「①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎」も行動に分解できる。

    1. 話しやすい
      ⇒ 
      話す、聞く、相槌を打つ、報告する、目を見て報告を聞く、雑談する、報告という行動自体を褒める

    2. 助け合い
      ⇒ 
      相談する、相談に乗る、問題を見つける、自分一人では対応できないことを認める、トラブルを楽しむ、ピンチをチャンスへ変えるアイデアを出し合う、解決のためのアイデアを広く募る、個人ではなくチームの成果を考える

    3. 挑戦
      ⇒ 挑戦する、機会を掴む、機会をつくる・与える、試す、実験する、模索する、仮説検証、改善する、工夫する、新しいことをする、変化を歓迎する、世の中・顧客の変化に直面する、挑戦自体を褒め歓迎する、失敗を歓迎する、現実のフィードバックを受け入れる、常識を疑う

    4. 新奇歓迎
      ⇒ 
      個性を発揮する、個性を歓迎する、強みに応じて役割を与える、常識に固執しない、ステレオタイプを避け本人の行動を見る、月並みを拒否する、批判を一時脇に置く、自分自身のものの観方をフラットに共有する・される、違いを良い悪いではなくただ違いとして認める

  • 心理的安全性にとって、望ましい4カテゴリの行動を増やし、望ましくない行動を減らすことが、組織・チームに心理的安全性を構築しようとリーダーシップを発揮する人の仕事である

  • 心理的安全性とは、組織・チームの「関係性・カルチャー」(または風土・文化など)である
    「関係性・カルチャー」は、実際には一つ一つの行動の集積、つまり「学習の産物」であり、チームとしての行動パターンであると捉え、その行動をどう変えていくかを論じることで、はじめて「何をしたらいいか」が分かるようになる。
    行動へフォーカスするという一歩目を踏み出すことで、やがては「関係性・カルチャー」を変えうる

  • リーダーシップとしての「心理的柔軟性」の3要素
    ①必要な困難に直面し、変えられないものを「受け入れる」
    たとえ困難な思考や感情が現れてきたとしても、それらにオープンであるということ。
    ビジネスを前に進めていく上で、さまざまな想定外のミスやトラブルが起きるが、すでに起きてしまったのであれば、起きたという事実自体は変えられない。そのような時でも、ミスやトラブルへの対応は、前向きに検討し、工夫することができる。「やれることをやる」ことは可能。しかし、この前向きな検討や工夫を阻害してしまうのが、困難な思考や感情との「戦い」である。
    「大切なもの」へ向かい、変えられるものに取り組む
    ⇒チーム・組織として向かいたい方向や大切にしていることに、エンゲージ(従事)して行動に移している。
    「大切なこと」を言葉にする、言語化するというプロセスが重要で、組織としてのビジョンやミッション、またチームやプロジェクトレベルとしての仕事の意義・目標として言語化されることが大切。
    そして、それらの意義・目標と、一人一人の個人の大切なこと、向かいたい方向、やり続けたい行動の繋がりが整うことで、たとえ困難があったとしても行動を促し、仕事に意味づけすることができる
    ③変えられないものと、変えられるものを「マインドフル」に見分ける
    変えられないもの(例:心)変えられるもの(例:行動)見分けることは、意外と自明ではなく、習得にはいくらかの訓練が必要
    仕事には、いくつもの「大切なこと」があるが、この瞬間、この状況では「どの大切なことを、いま大切にすると良いか」に意識的であること。
    「マインドフル」とは気づきに満ちている状態、状況を客観的・俯瞰的に見ることができる状態のこと。

  • 心理的柔軟性を身につける方法
    ①必要な困難に直面し、変えられないものを「受け入れる」
    【1-1】「思考=現実」から脱出する
    ・「思考=現実」とは思考と現実が混じり合い、境目がない状態。色付きのメガネ、つまり思考や感情でつくられたバイアスを通して、世界を眺めている状態。
    ・現実のフィードバックよりも思考を優先させてしまうことと、現実のフィードバックを繊細に受け止める感受性が低下することが問題
    ⇒「思考=現実」に気づく。
     「問い」を変える(クローズド→オープンな問い)
    【1-2】イやな気持ちを、コントローするのではなく受け入れる
    ・「イやな気持ちのコントロール」とは、ネガティブな思考・感情・感覚・記憶と戦い、回避・コントロールしようとすること。コントロールは役に立たず、むしろコントロールこそが問題を作り出している
    ・トラブルが起きたとき「それはちょーど良かった」と唱える

    「大切なもの」へ向かい、変えられるものに取り組む
    【2-1】大切なことの明確化・言語化
    ・大切なこととは、向かっていきたい方向を指し示すコンパス
    【2-2】大切なことへ向けた、具体的な行動
    ・行動を続けるためには、これまで取っていなかった行動の選択肢が増えることが大切

    ③変えられないものと、変えられるものを「マインドフル」に見分ける
    【3-1】「いま、この瞬間」への気づきと集中
    ・問題は、言語が発達した私たち人間は、あまりにも「いま、この瞬間の体験」をすることが少なく、過去と未来、言語の世界を生きてしまっている
    ⇒座禅・マインドフルネスの実践
    【3-2】「物語としての私」から「観察者としての私」へ
    ・対人リスクとは、自分自身が「無知、無能、邪魔、否定的」と思われるというリスクのこと(無無邪否)。つまり「私=○○○」が毀損されるというリスクのこと
    ・チームの中で、この「私=○○○」が壊れることへの不安があるために、成果を出すための仕事よりも、対人関係に対処しようとしたり、弱さを隠す仕事に従事しようとしたりする
    「観察者としての私」とは、自分の思考や感情、感覚や記憶を、他人の思考や感情、感覚や記憶を眺めるかのように、距離を取って観察すること。自分自身がカメラという視点だとして、ファインダー越しに、嗜好や感情を覗いてみる。
    ・「ACT MATRIX(アクト・マトリクス)」
                五感の体験
              (目に見える行動)
           
    自信のある  ↑ 企画書を書き
           企画書に酷い | 会議にかける
     離れる   FBをされた  |         近づく
     逃げる  ←ーーーーーーー+ーーーーーーー→ 獲得する
     回避する  どうせ傷つく | 新しい企画   向かっていく
           から止めておこ| に挑戦したい
           うという考え ↓ という考え
               内的・精神的体験
            (目に見えない心の中のこと)

                五感の体験
              (目に見える行動)
             減らす
      ↑  増やす
           役に立たない | 実感する
     離れる   繰返しに気づく|         近づく
     逃げる  ←ーーーーーーーーーーーーーー→ 獲得する
     回避する    気づく  |言葉で明確にする 向かっていく
            受け入れる | 具体的な行動
                  ↓ (右上)にする
               内的・精神的体験
            (目に見えない心の中のこと)
           

第3章 行動分析でつくる心理的安全性

  • 行動は「きっかけ」と「みかえり」で制御されている
      きっかけ ⇒ 行動 ⇒ みかえり
              ↑     |
              +ーーーー+

  • 好子(こうし)」=次回同じ行動をとる確率が増えるみかえり
    嫌子(けんし)」=次回同じ行動をとる確率が減るみかえり

  • 「きっかけ」とは行動の文脈を特定するもの

    • 仕事や何かを学ぶことは、適切な「きっかけ→行動」の繋がりを学ぶこと

    • 適切な文脈で適切な行動を学習するという観点からは「きっかけ」の「場合分け」を学ぶことが重要

    • 無意識のきっかけが行動に影響を及ぼすことに気付くことが大事

  • 「行動」と「行動ではないもの」

    • 行動とは「とれる行動」のことで「やってみてください」と言われてできる行動のこと

    • できない行動は、「受け身」「否定」「結果」の3種類

  • 「みかえり」

    • 4タイプ
      行動の可能性  みかえりのタイプ  みかえりの出現・消失
      強化(増加)↑  ①好子が      うまれた
      されるとき   ②嫌子が      なくなった
      弱化(減少)↓  ③好子が      なくなった
      されるとき   ④嫌子が      うまれた

    • ①の例(上司の立場)
      きっかけ:トラブルが起きる
      行動  :怒鳴り散らす ↑
      みかえり:部下が「すぐ対応します」と言う(①好子が生まれた)

    • ②の例(部下の立場)
      きっかけ:上司に怒鳴られる
      行動  :上司に「すぐ対応します」と言う ↑
      みかえり:怒鳴られるのが収まる(②嫌子がなくなった)

    • ③の例
      きっかけ:テストを受ける
      行動  :カンニングをする ↓
      みかえり:出席店やレポートの点が取り消される

    • ④の例(部下の立場)
      きっかけ:ミスが発覚
      行動  :上司に報告に行く
      みかえり:問い詰められた

  • 「嫌子」による効果は疑わしい

    1. 効果は一時的なものになりがちだから

    2. 相手にネガティブな感情が生まれるから

    3. 叱る強さを上げていかないと意味がなくなっていくから

  • 行動分析で行動を変える。個人を攻撃しても何も解決しない。自分の行動習慣を変えてみる

  • チームの行動変容でつくる心理的安全性
    ①話しやすさ
    ・行動:話す、意見を言う、報告する、連絡する…
    ・みかえり:ネガティブな反応(嫌子出現)を全面的にやめる。
          好子出現を目指す。
    ・例:
     ×「君の報告はわからん。ちゃんと分かりやすく報告してくれ」
     ○「報告ありがとう」
     ⇒「行動の品質」と「歓迎したい行動自体」の切り分けが大事
      
    なぜなら「行動の品質」を評価すると、望ましい行動に、
      すぐに罰を与えてしまうから。
      「分かりやすく報告してくれ」と指摘を受けてすぐにできるなら
      その人はすでに分かりやすく報告しているはず。
    「何でも言ってね」は役に立たない。
     重点的に「きっかけ」を作った方が良い。
     おすすめは「文脈に応じた、より具体的な投げかけ」
    ②助け合い
    ・シンプルに「聞く」という行動を取る
    ・「相談/報告してほしい」と伝える
    ・「なぜ」「どうして」という言葉は細心の注意を払う。
     
    なぜなら「なぜ?」が聞かれる文脈がネガティブなものが多いから
    ③挑戦
    ・挑戦を歓迎することを率直に伝える
    ・「範囲を限定」し、工夫・改善を依頼する

     (何でもいいから、広く、面白いアイデアを募ると逆に集まらない)
    ・学びをシェアして「サクッと試してみる」雰囲気づくり
    ・挑戦を阻害する「みかえり」

     ・できなり理由、難しい理由、考えられるリスクを並べる
     ・他社事例・成功事例を過剰に聞く(後追いしかできなくなる)
     ・「本当にうまくいくのか?」「失敗しないか?」と聞く
     ・小さな施策を試す段階で、ROIを追求される
     ・手を上げると、一人ですべてやることになり、孤独な戦いになる
     ・失敗したら責任問題となるかのような発言をする
    ・挑戦を促進する「みかえり」
     ・チャレンジ自体を称える(例:ファーストペンギン賞)
     ・経過、プロセスを見守る
     ・結果をともに振り返り、ともに学ぶ姿勢を持つ
     ・一連の挑戦を事例として、組織内に周知する
    ④新奇歓迎
    ・新奇歓迎を阻害する「きっかけ」
     
    ・上司の意見が絶対で、個性を発揮する余地がない
     ・○○(職位や職種)は「こうあるべき」という周囲の強い信念
     ・上位役職者の頭の中にある「正解を当てるクイズ」になっている質問
     ・強み/弱み、得意/不得意などの個人差を勘案しない悪い平等主義
    ・新奇歓迎を阻害する「みかえり」
     
    ・目的や達成・実現よりも、細かい手段・プロセスに拘り指摘される
     ・工夫するより、言われたことをやるだけの方が評価される
     ・イエスマンや、太鼓持ちが評価される
     ・「常識で考えろ」というような異質を拒否する対応
     ・理解できないとき、そこで対話が止まる
    ・率直に個性を発揮することを促す
    ・「価値づけされた行動」を見抜いて、最適配置する

第4章 言葉で高める心理的安全性

  • 「きっかけ→行動→みかえり」は動物でも使える「動物行動」で、体験から学ぶ(体験学習)。

  • 「言語行動」は言語で行動を変える。つまり言葉で教えてもらえれば、まだ行動していないのに適切な行動を学べる。人間しかできない。「言語行動のアドオン」こそが、個人の体験学習を言語化しチームの学習へと昇華できる。

  • 言葉の力のポジティブな側面は、優れた会社のミッションや、事業のビジョン、優れたリーダーの声掛けによって、人々が協働できるということ。一方で、言葉のダークサイドは、時に過去の成功法則に縛られ、新しい行動へ挑戦できないことにつながること

  • 言葉は「いま、ここにない現実」を創り出すことができる(例:小説)

  • 言語という能力の本質は、現実とシンボルを関係づける力(シンボル操作能力)をいう。
    (例)シンボル=スターバックスのロゴ
       現実=コーヒー、サード・プレイス、接客、居心地の良い場所

  • ルール支配行動=言語により行動を支配・コントロールできるような能力

    1. 言われた通り行動=言われた、ルールどおりに行動
      ・「行動そのもの」からの「みかえり」を手にしていない行動
      ルールを提示した人が与えてくれる「みかえり」の方を重視
      ⇒ルールを守ると「みかえり」をもらえるので、「行動そのもの」からの「みかえり」がなくても、行動を持続できる

    2. 確かにそうやな行動=ルールに従って得られる「みかえり」によって行動する
      ・ルール通りの行動をとるものの、「行動そのもの」からの「みかえり」を実感している点が「言われた通り行動」と異なる
      ルールが間違っていることに気づくことができたら、他の目的を探したり、迂回したり、目的地にたどり着くための適切な行動を模索できる
      ・職場にあるさまざまな「不十分な仕事」の多くは、メンバー1人1人が「言われた通り行動」を取っており「確かにそうやな行動」になっていないから
      ・ルールを作る時でも、メンバーがルールに「接触・実感」できる「確かにそうやな行動」を増やし、「言われた通り行動」を減らすことが大切
      ・「こうすればいい」「こうしてはいけない」のように「行動のルール」だけを伝えるのではなく「きっかけ」と「みかえり」をセットで伝えることが「確かにそうやな行動」を作る

    3. そんな気してきた行動=「みかえり」の強さが変わる
      ・単独ではなく、他の二つと組み合わせて効果を発揮するようなルール支配行動
      ・「みかえり」の持つ好子・嫌子としてのパワーを、増強または減少させることで、行動が起きる確率を増やす/減らすような「言葉のルール」
      ・(例)
      プログラミングと言う好きな仕事(行動)に取り組んでいて、好きな仕事なので仕事自体が楽しいという「みかえり」がもともとあった
      ⇒尊敬している上司から「君のしている仕事は、当社にとって重要だ。ソースコードの一行は、時に重要な経営判断と言ってもいいくらいだ」と言われた(きっかけ)。そうすると、好きな仕事により多く取り組むようになり(行動)、仕事自体が楽しい+重要なことをしている実感(みかえり)が組み合わさって効果が増強されるようになる

  • ルール通りの行動を起こす2つの方法

    1. 「言われた通り行動」では、実際に行動が起きるかどうかは、ルールを提示する人の影響力・信頼性に依存する。過去の歴史が影響力・信頼性を左右する。ルールを守らなくても何も起きない状況が続くと「ただ言っているだけ」となり、メンバーの行動を変容させる力をやがて失う。○○さんの言うことならみんな動くが、△△さんの言うことはみんな聞かないといったことは、このようにして起きる

    2. 「確かにそうやな行動」へと、転換していくこと。あらかじめ「行動」+起きるだろう「みかえり」のセットを特定したルールを提示した方が、実感しながら従ってもらいやすい

  • 「みかえり」が適切な大きさで確実なものは従いやすいが、「みかえり」が小さく確率が低いルールは従いにくいことが分かっている。従いにくいルールは改良することが大切。

  • 言葉で「旗」を立てる。「大切なこと」を明確にして、行動を増やす。

  • 「大切にしたいこと」と「行動」が関係づいたそのとき、単なるタスクが意義ある仕事へと変貌する。これがルール支配行動「そんな気してきた行動」の力

  • 大切なことを言語化する3ステップ

  • (例1)自分自身の「大切なこと」を言語化する3ステップ

    1. あなたの「コア業務」つまり、しごとでいつもやっている「重要なこと」は何ですか?

    2. その業務には、どんな「大切にしたいこと」や意義や意味をこめることができそうでしょうか?

    3. あなたの、その業務の影響を受ける人々や社会について、より広く・深くイメージしてみてください。その人々に、どのような良い影響をもたらすことができそうでしょうか?

  • (例2)機能別チームの「個々人の大切なこと」の言語化3ステップ
    ⇒必ず「個人でステップ1~3まで手元のメモに書き切ったうえで、チームでシェアしてディスカッションするのが大切」。ディスカッションから入ると、最初に発言した人や、職位が高く、経験が長い人の意見を承認して終わってしまうから。

    1. あなたの業務をあまり知らない学生さんから質問されたと想像してみてください。あなたの業務で目覚ましい成果を上げる上で、特に大事なことはどんな行動を取ることですか?

    2. その行動をとると、どのような意義がありますか? その意義から考えると、いま・この時代にあって「何をすること」が重要ですか?

    3. 素人は、一見「大事」と勘違いをしがちですが、本当は「大事ではない・やるべきではない」ことは何ですか?

  • プロジェクトチームは「大義」。大義を考えるときはあえてトップダウンで考える。

    1. あなたは、このチームは、このプロジェクトは、何を変えるのか

    2. その変革は、誰の、どのような幸せを作るのか

    3. それは、何が「すごい」のか。シンプルに表現できないか

  • 良い言葉のきっかけは、次の三つのような特徴を持つ

    1. 「みかえり」の影響力が上がる。つまり、行動量が増える

    2. 行動レパートリーが増える。つまり、新しいアイデアが湧く

    3. 迷った時の北極星になる。つまり、判断基準になる。

第5章 心理的安全性 導入アイデア集

  • 「行動・スキル」レベルで心理的安全性を作る

    • まずは自分微震が率先して行動を変える

    • 感謝から始める。
      理由をつけて感謝を伝える3ステップ。

      1. いつ、どんなときに(状況)、だれが、何をしてくれたのかという出来事自体を思い出す。

      2. 「あなたが素晴らしい」ではなく「私が助かった」という自分を主語にしたメッセージ(I message)で、感謝の伝え方を考える

      3. 実際に伝える(チャット、メール、ビデオ会議、対面)

    • 「当たり前」から「有り難い」へ
      心の中の感謝の気持ちを直接、コントロールすることはできないが、一つ一つの人の手、作業、工程に思いをはせることは、自分だけで意図的に「とれる行動」。

    • ポジティブに気にかけている・見ていることを示す
      理由をつけて感謝を伝えるためには、実際にメンバーを「よく見ている」「普段から気にかけている」必要がある。続けることで、自分自身が実際にメンバーをよく見ている良いリーダーへ変われるという効果がある。

    • 話しかける
      「感謝から始める」、「今日はどう?」、「作ってもらったあの資料、お客様に好評でした。ありがとう」

    • ハードルを下げ、相談を促す
      ×「いつでも相談して」
      ○「カレー作って来なくていいからさ、ニンジンとじゃがいもの段階でもってきて!」
      ⇒この段階で「誤字脱字」などの細かい指摘をするなどの「間違った見返りを与えない」ことも大事

    • 「のび太力」を上げる
      「何でも知っていなければならない」「何でもできなければならない」と思わない
      ・助けてもらおう=メンバーに助けてもらう
      ・自己開示=単なる失敗談ではなく「その失敗から学んだおかげで今がある」というような文脈に接続することが望ましい
      ・相手より、一枚薄く鎧を着る=相手より少しだけオープンに。また「この人はなぜ鎧を着ているのだろう」とその人に鎧を着せたきっかけや、過去のみかえりに想いをはせてみる

    • 1on1(聞くことは3つ)

      1. よいニュースは何ですか?

      2. 悪いニュースは何ですか?

      3. いま、不安や不満なことありますか?
        ⇒2,3でメンバーと一緒に困ることが大事

    • メンバーの立場から、心理的柔軟なリーダーをつくる

      • 行動分析を丁寧に適用してみる

        1. 問題行動を具体化・特定する

        2. 望ましい行動を明確にする

        3. きっかけ・みかえりを分析する

        4. 対応の分析

      • 心理的安全性の重要性を率直に伝える

  • 「関係性・カルチャー」レベルで心理的安全性を作る

    • 「宣言と環境整備」で心理的安全性に目を向ける「きっかけ」を作る

      • 朝礼や会議の場で「心理的安全宣言」をする
        「この場所は、安全な場所です。どんな意見やアイデアを言ってもいい場です。失敗やトラブルの報告があれば、それを叱る場ではなく、どうするか前向きな検討をする場です。この場の安全性は、私が担保します。」

      • 環境を整える

        • 心理的安全性4つの因子のポスターを貼る

        • (例)4つの因子をもっと具体的に書く

          1. 意見を言っても大丈夫(①話しやすさ)

          2. 質問しても大丈夫(②助け合い)

          3. 失敗・間違いを認めても大丈夫(③挑戦)

          4. 自分らしくいて、大丈夫(④新奇歓迎)

      • フォーマットを作る・変える

        • (例)日報や業務報告書のように、すでに組織やチームのメンバーの多くが「見る・やる」ことになっているルーティンに、「今日のコンディション=頑張る、ワクワク、しょぼん、お手上げ(顔文字)」という項目を組み込む。

        • アラートを上げる「きっかけ」を軽くすることで、

          1. いつも記載する日報に含まれている(わざわざアラートを上げる必要がない)

          2. 深刻さが少なく、気軽に選択できる

      • 新規プロジェクト創造

        • 何か新しくプロジェクトを始めるときは、新しい関係性、新しいカルチャーを作り始めるチャンス

        • 「大切なことの明確化」を行っておくことが大事

        • プロジェクトとは「始めが合って終わりがあり、お客さんとの約束をきちんと果たすこと」であり、「すごい!きれい!革命的!インパクト!熱狂的ファン続出」なプロジェクトを創出することが大事

        • プロジェクトで大切なのは

          1. やってみなければ、できるかどうか分からない

          2. すごいことをやってみたいと思わなければ、すごいことは何もできない

        • プロジェクトで大切なことを明確にするための問い

          1. このプロジェクトは、誰に何をもたらすものか

          2. それには、どんな意味や大義があるか

      • 日常業務の文脈から切り離す

        • (例)研修として、職場のチームで料理をする
          ⇒固定化した役職・階層が解きほぐされ、チームを新しい観点で捉えなおせる

      • 「話しやすさ」について、みんなで対話するワークショップ

        • きっかけ    行動   みかえり
          話しやすい 「報連相」  もっと話したくなる
                 が増える時 Happyな「みかえり」
          話しにくい 「報連相」  もっと話したくなる
                 が減る時  UnHappyな「みかえり」

        • 「このチームならではの知見を集める」ことと、「それぞれの人が感じた、その真実の瞬間を可視化する」ことが重要

      • 価値づけされた行動を見出す

        • 価値づけされた行動を見つけるときの注意点

          1. 価値づけされた行動は「行動分析」の「行動」
            「受け身」「否定」「結果」のように行動でないものを選択しない

          2. 「判断」ではなく「選択」する
            「判断」=基準をもとに選択肢を比較し、裁量のもの、最適なものを選ぶこと。理由付けや正当化ができるもの
            「選択」=ただ選ぶこと。理由付けや正当化は不要。「好きだから好き」でよい。
            人生で大切なことは、「判断する」よりも「選択」した方が良い場面がある。「人生のパートナーを判断」するなら、よりよい選択肢が出てくるたびに乗り換えることになるが、そうではないはず。
            「価値行動」も、ただ選択されるもの。

          3. すでにあなたは価値行動に生きている
            誰にも強制されていない時に、自然にやってしまう行動は価値づけされた行動を表現している可能性が高い。

        • 価値行動を見出す5つの質問

          1. 一般的なものより高級品を持ちたい、またはたくさん持っているものは何ですか?

          2. この領域の仕事は「任せろ」と言えるような仕事は、どんな仕事ですか?

          3. 同じ職種の人や周囲の人と比べて、「相当な量をやっているな」と思える仕事は何ですか?

          4. ついつい、引き受けてしまう役割はありますか? その中ではどんな行動を取っていますか?

          5. あなたが、すでにお金と地位があったら、それでもいやり続けたい「みかえりなしで、とれる行動」は何ですか?
            ⇒私の価値づけされた行動は「     」です。
            (参考)プレゼンする、質問する、攻略する、料理する、泳ぐ、走る、投げる、打つ、運転する、戦う、勝負する、企画する、スケジューリング、選択する、準備する、練習する、歌津、充てる、予測する、モデルを作る、説明する、撮影する、書く、話を聞く、カウンセリング、コーチング、教える、コンサルティング、調べる、分析する、描く、飲む、ゲームする、立ち上げる、コンセプトをつくる、名づける、デザインする、組織する、眺める、鑑賞する、磨く、記録する、想像する、アレンジする、治す、調整する、指令する、育てる、まとめる、整理する、紹介する、案内する、ガイドする、始める、壊す、隠す、贈る、広げる、撃つ、賭ける、旅をする、登る、訳す、言語化する、検証する、修正する、確認する

        • メンバーの価値行動を見つける

      • 心理的安全性を阻む制度から、育む制度へ

        1. 行動分析の観点からは「やらなかったら罰を与える」制度を止め、「やったら褒める」制度へ変えるべき

        2. 望ましくないことを禁止するより、望ましいことをやり続けたくなるように設計する

        3. 「確かにそうやな行動」「そんな気してきた行動」を組み合わせ、ルールや制度の意味意図が伝わり、そのルールを守ることが意味がある状況を作ることが重要

▶感想

行動心理学、行動科学の観点から、心理的安全性をつくるための考え方、ヒント、導入アイデア集がふんだんに書かれた本だと思います。
とても参考になりました!

以上です。

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