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道徳科における導入の工夫 NO2

本シリーズでは、授業の入り口である導入の工夫について述べてまいります。導入で失敗すれば、子どもに主体的な授業参加を促すことは非常に難しくなってしまいます。そうならないために、本号では第2弾「当たり前を覆す」についてです。
*前回号と合わせてお読みいただけると幸いです↓

当たり前を覆す問い

1 言っていることとやっていることが違う


 子どもは子どもなりの価値に対する知識を持っています。しかし、その知識は、とても曖昧であったり矛盾していたりします。もっというと、そのことにさえ気付いていません(実は私たち大人もそうかも知れせん)。
だからこそ、「言っていることとやっていることが違う」という状態になってしまうのです。
例えば・・・
○「ルールを守ることは大切」と言いながらルールを破る。
○「嘘を付いてはいけない」と知っていながら嘘をつく。

などです。
なぜこのようなことになるのでしょう。
それは・・・
価値の知識が表面的で薄っぺらいものだからです。

つまり・・・
「ルールはなぜ大切なのか」や「嘘を付いてはいけない理由」などの本質的な知識が身に付いていないのです。
では、どうすればいいのでしょう。

2 あれっと思わせる問い

上記のように、子どもの知識は未熟です。
だからといって、「ちゃんと考えましょう」や「もっと考えてみて下さい」と言っても、子どもは考えようとしません。
そこで・・・
子どもが「あれっ」「うまく答えられないぞ」という問いを投げかけるのです。
例えば・・・
T:どうして廊下を走ってはいけないのでしょう
C:それは、きまりだからです。
T:でも、運動場は走っていいのにどうして廊下はダメなのかな?
このように、これまでは考えもしなかったようなことを問うことで、子どもは「あれっ」「確かにそうだな」「どうしてだろう」と思考が促されるのです。

そして・・・
「だって、廊下は走ると人にぶつかるからダメなんだよ」
「そう、危ないからきまりができたんだよ」
と価値の本質的な理解が深まっていくのだと思います

さらに、高学年だったら・・・
T:運動場でもサッカーをして走っているとぶつかって怪我をすることもあるよね。それと何が違うの?
C:だからサッカーにはサッカーのルールがあるんだよ。
C:場所やものによって、安全安心のためにルールが変わってくるんだよ。

と、さらに高次な価値の理解に繋がるのです。

このように、ルールを守ることは「当たり前」と常識的な考えに、「あれっ」と子どもの頭に「?」を生むような発問が大切です。

3 導入で「当たり前を覆す」

「あれっ」と思いながらも答えが出るとスッキリします。しかし、答えが出ないことの方が多々あります。
それのモヤモヤ感を道徳科の導入では生かして「今日は、それをみんなで考えていこうね」と、学習課題を設定し、目的意識を持たせて教材に入っていけばいいのです。
例えば・・・


【正直・誠実】について導入
T:誠実な人とはどんな人ですか。
C:嘘を付かない人
C:正直な人
T:では、誠実な人と嘘つきはどっちがいい生き方ですか。
C:誠実な人
T:本当に誠実な人ですか。では、絵が苦手な友達が、あまり上手でない絵を持ってきて「どうかな」と聞きました。
 A:真面目に「少し変だね」と答える
 B:嘘をついて「上手に描けているよ」と答える
あなたならAとBのどっちの答えにしますか。
C:Bだと思います。
T:でも、さっきは誠実な人の方がいい生き方をすると言っていたよね。どうしてBなの?
C:こっちの方が互いに幸せになるから。
T:え?ということは嘘つきの方がいい生き方をするってことですか。
C:よくわからなくなってきた〜
T:では、今日は誠実な人の生き方について考えていきましょう。

このように、子どもの常識的な見方(当たり前と思っている見方)をひっくり返すような問いを投げなけることで、子どもの「あれっ」「おかしいぞ」と矛盾が生じて問いが生まれます。
導入で問いを生むことができたら、「もっと知りたい」「他の人はどう思っているんだろう」と子どもの授業への意欲は高まっていきます。
すると、授業に活気が溢れ全員参加の雰囲気作りにつながっていくのです。
この思いを持たせる事が導入の役割だと考えています。

次回は、道徳科における導入の工夫の第2弾「インパクトのある資料を提示する」について投稿致します。
*私のnoteでは、2週間に一度、「道徳科の授業づくり」について書いております。興味のある方はフォローして頂けると幸いです。

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