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妻の顔色を窺う毎日が辛い▶家庭内ガラパゴス

 結婚生活というのは、傍から見ていると順調そうでも、実情というのはなかなか分からないものです。第三者だけでなく当の本人たちでさえ、夫婦の正解とは何かを手探りしながらの日々なのではないでしょうか。

【相談内容】

40代 男性 Aさん
結婚13年、一男一女あり
仕事も順調で生活も安定しているが、いつも妻の顔色を窺いながらの生活
特に子育てで少しでも間違った対応をすると激しく叱責される
家事はできる範囲で手伝っているが下手だとダメ出しされる
自分の家なのに心から寛げず毎日辛い

■主訴

妻の顔色を窺う毎日が辛い

■人物像

AC、NPが高い
波風のない平穏な日々を望む平和主義
人当たりが良く、何でも卒なくこなせる優等生
禁止令:実行してはいけない、考えるな
ドライバー:人を喜ばせろ

■見立て

Aさんと妻とでは感覚にギャップがあり、それに気付けていない。
家事を手伝っているというが、出来る範囲でというのは妻の感覚ではゼロに等しい。
家事・育児を一手に引き受ける妻は、子供の成長と共に進化していくが、Aさんは外の社会で過ごす時間が生活の主軸であるため、タイムラグが生じている。
自分中心の視点で見ているため、家族というチームを客観視できていない。
家族基準から外れた父親が孤独に陥る瀬戸際の状態。
愛と所属の欲求のステージから落ちてしまいそうなのに、現状の問題から目を逸らし、自己実現欲求に目線が行ってしまっている。

この分析をもとに、共感して主訴に応えた一言がこちらです。      

「家庭内ガラパゴスですね。」


 Aさんとしては、ほんの些細な不満程度の認識だったのでしょうが、わざわざカウンセリングで話してくださるくらいですから、無意識に危機感を抱いておられるのだろうと感じました。

Aさんとご家族とで1対3の構図が出来上がっているため、疎外感や寂しさによる苦しみが、妻への不満という形で表面化したのだと考えました。やっぱりご夫婦ですから、甘えるのも不満を言うのも、一番言いやすい相手なのです。

Aさんはのんびりする時間がない、と『無いものを満たす』ことに焦点を当てていましたが、実は十分満たされていることが見えていませんでした。独身時代と同様に思い切り仕事ができるのは、妻が家庭内や子供達の安全を1人で死守してくれているからです。妻の存在がなければ、家事や育児の負担を自分1人で背負うこととなり、フルタイムで仕事だけに専念するなど不可能ですから。

男性と女性は身近なようで実は遠い存在

目の前に居ると自分と同一視してしまい、相手が自分とは違う存在であることをつい忘れてしまいます。

・日々新たな1日を生きるために、その都度リセットが必要な人
・危機管理を強化するために、その都度経験を蓄積し進化していくことを望む人

Aさんのご家庭内においてだけでも、このようにご夫婦の生き方は全く異なります。自分の尺度を押し付ければ衝突が起こるのは容易に想像ができますよね。

仕事が終わったらのんびりしたいという主張は、Aさんの価値観からすれば正論です。その一方で、子育てには仕事の終わりという概念は存在しません。では、Aさんの価値観の中では、妻はいつのんびりする時間が持てるのでしょうか。

Aさんの奥様は、Aさんがのんびりすることに対して反対したりはしていません。ということは、のんびりはしていいのです。非難されてもいないのに妻の視線が気になるというのは、Aさんが家族から疎外されているという孤独感で猜疑心が強くなっていたためでした。奥様としては、Aさんが自分の希望だけを主張し、家族に対する理解や思いやりが感じられないことに苦しみを感じ、叱責やダメ出しなどの強い態度として表に出てしまっていたのではと推測しました。

子供達の両親として唯一無二のパートナーであるにもかかわらず、育児の喜びや苦しみを共有できないというのは、本当に孤独です。お2人は、同じ場所にいるのに違う世界で生きていると感じられる程、その存在は遠いものとなってしまっていました。

子供達が自立した後は夫婦で支え合って生きていかなければならないのですから、今回の不満は、その危機を教えてくれるアラートでもあったのだと思います。

欲すれば与えよ

 誰にも気兼ねせずにのんびりしたいということは、家族に自分の存在を丸ごと受け入れて欲しいということです。そう望むのであれば、まずは自分から妻や子供達のありのままを理解することからです。家族というチームの中には自分以外のメンバーの生活もあり、お互いに尊重し支え合うから成立できているということを、まずは父親が体現しなければ。お子さん達は、そんなお父さんの優しく力強い背中を、きっと見てくれているのではないでしょうか。

※実際のケースを基にしていますが、お名前や年齢などの設定は仮のものです。


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