見出し画像

2:最悪な第一印象

私、榎本菜々子(えのもと ななこ)と真己は、幼馴染みということもあり、私が7歳の頃からの付き合いだった。
ちなみに真己とは同い年である。それなのに8年しか一緒にいられなかったのは、私たちが中学二年生の頃、真己のお母さんの仕事の都合で、引っ越しをしてしまったからだ。

真己が転校する時、私は今生の別れかのように大泣きした。でも真己はにこりと笑って「またな」と言った。

この時の私は、「真己はもう私と一緒にいなくても平気なんだ」とか、「冷たいんだから。もうちょっと寂しがってよ」などと一人心の中で憤慨していたが、彼はこんな子供染みたことを考えていなかったのだ。

彼は、私が思ってるよりもずっと大人だった。

これは再会した後しばらく経ってから聞いたことなのだが、真己曰く、私が言ったある言葉がすごく励みになったそうで、ちっとも寂しくはなかったという。その言葉とは『ずっと味方でいる』ということ。

当時聞かれなかったとしても、あんな子供っぽいことを考えていたなんて恥ずかしい。まあ、子供だったからしょうがないのだろうけど、それでも言わなくて本当に良かった。

真己はいつも私の先を歩いているような気がした。世間では女性の精神年齢の方が高いと言われがちだが、私たちの場合は当てはまらないと思う。第一印象こそ最悪だったものの、真己は自然と人に好かれる気質を持っていた。

第一印象……そう、真己は初対面にもかかわらず、私に向かって「ブス」などという暴言を吐いたのだ。いくら照れ隠しに言ったとはいえ、ショックは大きい。どれくらいかというと、15年近く経った今でも忘れていないくらいだ。

それはともかく。

7歳の時の私は、「父と離れて暮らす」か「新しい学校で頑張るか」の選択に迫られていた。つまり、父の転勤で引っ越すかどうかを決めようとしていたのだ。

ここから先は

637字

「側にいてよ。幸せにしてよ。また菜々子って呼んでよ」──失って初めて気付く、その存在の大切さと秘めた想い。人を愛するというのは、どういうこ…

サポートありがとうございます!頑張った証として、素直に甘んじます(*'ω'*) あなたの応援を一つの糧に、より心動かすストーリーを書き続けます!!ひゃっほい!わっほい!嬉すぅいいいいっ!!精神年齢8歳くらいだな私は、うん。