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1:帰宅

 6月28日。
 その日は梅雨時にもかかわらず嫌味なほど晴れていた。
 火葬場から天へと昇る煙を見つめ、私は一時間程前に別れを告げた人を思い出した。

 本橋真己(もとはし まさき)。
 私の幼馴染みで、家族のような存在でもあった彼は、一言で言えば面倒見のいい人。言葉は少ないけど、人のことを思いやれる優しい人だ。側にいると、暖かく穏やかな気持ちにさせる雰囲気も持っていた。

 享年21歳だった。

 人の死というのは、多少なりともやりきれない思いが残る。その原因が事故──とかく人命救助をした挙句に失ったとあると、その思いは強くなる。
 助けなければよかったのにと言えるほど無情ではないし、救助された人の命が無事でよかったというだけで片付けられるほど寛大でもない。

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「側にいてよ。幸せにしてよ。また菜々子って呼んでよ」──失って初めて気付く、その存在の大切さと秘めた想い。人を愛するというのは、どういうこ…

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