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8:君がいたから

「ふっ、う……うう」

急に涙が溢れ出た。次々と零れる涙を、カードを持ったままの手で拭う。むせ返るように溢れる感情をもはや止めることは出来なかった。

私だけに向けられた優しさも、喜ばせようとしてくれたことも、幸せを願ってくれたことも全部そうなのだ。

そっと父に肩を抱かれ、耐え切れずに私は声を上げて泣いた。

「これ、小学生の時に約束したの。真己が幸福のクローバー潰しちゃったからって。真己のせいじゃないのに、先に見つけたこと悪いと思って、それで……」

後は何を言っているのか自分でもわからなかった。子供のように泣きじゃくる私の背中を、父は何も言わず優しく撫でてくれた。

私は真己に愛されていた。こんなにも、愛されていたんだ。

気が付かなくてごめんなさい。もっと愛せば良かった。もっと早くに気付けばよかった。

今じゃ遅い。今じゃもう——真己はいないんだから。

——…

突然目眩と共にどこかへ堕ちていく感覚がした。自分だけ空間が切り離されたような孤独と恐怖。真っ暗闇に裸同然で放り投げられ、ただただ不安を抱くだけの、そんな感覚。

この感覚は…あの時と同じだ。お骨を納めようとした、あの時と。

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1,684字

「側にいてよ。幸せにしてよ。また菜々子って呼んでよ」──失って初めて気付く、その存在の大切さと秘めた想い。人を愛するというのは、どういうこ…

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