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高専進化論|社会課題解決に挑む高専人たち

都立高専OB、高専GCON公式サポーターの内山です。教育系NPOで、中高生のキャリア支援や探究的な学びの場づくりを行なっています。

前職のリバネスでは、高専特化型の研究費「リバネス高専研究費」や、高専生が社会課題解決に挑戦する「リバネス高専チャレンジ」の立ち上げ・運営を行なってきており、現在も「高専アンバサダー」と名乗り、ライフワークとして、高専生が挑戦できる場づくりと伴走支援を行なっています。

このnoteでは、ディープテック・研究開発の世界において高専人が持つポテンシャルや、高専特化型プログラムを立ち上げた背景、ディープテック業界で活躍する高専人の事例などに触れながら、高専教育が社会に生み出している新たな価値と、高専教育の進化の可能性を「高専進化論」と題して、つらつらと書いていければと思います。

高専出身だけど、いわゆる王道ではないキャリアを歩んできた自分だらこそ、できること / 伝えられることがあると思っているので、マイペースに更新していきたいと思います。

ライフミッション|一人ひとりに世界を変える力が備わっていると信じ伝える
<経歴>
・高専の機械工学科卒業
・大田区の中堅メーカーで7年間エンジニア(設計&サービスエンジニア)
・働きながら大学院にいきデザイン/エンジニアリング/ビジネスを学ぶ
・機械工学→人間中心設計に専門性を拡張
・デザイン会社に転職|サービスデザイン&UXリサーチ
・リバネスに転職|ディープテックベンチャー/研究者/中高生の研究開発伴走、高専生のキャリア開発
・教育NPOに転職|困難な状況におかれた中高生のキャリア支援、探究活動への伴走支援

↓高専特化型プログラムの一例

ものづくりで社会課題を解決する高専人との出会い

リバネス時代には、社会課題解決に挑戦するディープテックベンチャーの創業前後〜社会実装における伴走支援や、中高生研究者の伴走支援など「研究・開発・実装」に関わるプロジェクトを、試作開発を得意とする町工場や、多様なアセットを持つ大企業などを巻き込みながら、行なってきました。

ディープテックベンチャーなど研究開発の世界では、誰も答えを持っていない社会課題の解決に向けて、仮説を立て、解決策を形にして、検証を重ね、社会実装・課題解決をアジャイルに推進していく必要があります。そんな研究開発に伴走する中で、「研究開発の世界で一番輝くのは高専人なのではないか?」という仮説を抱き、そのポテンシャルを最大化したいという想いが芽生えたことが、高専アンバサダー活動のはじまりです。

きっかけは、「台風でも発電できる羽根のない風力発電機」を開発する株式会社チャレナジーの清水さんとの出会いでした。清水さんも実は高専出身の方で、高専の先輩の中でも私が一番に尊敬する方です。

リバネスに入ってはじめて取材したのがチャレナジーの清水さん

清水さんは、3.11での原発事故をうけて、原子力発電に置き換わる新たな電力源を開発しなくてはならない、原子力の恩恵を受けてきた我々世代でこの問題を解決し、次世代にこの問題を背負わせるわけにはいかない、と思い至り、次世代型風力発電機の開発を決意します。

当時は、大手メーカーに所属するエンジニアの一人で、風力発電の開発に全く関わったことがない中、課題解決をしたい想いだけで、次世代型風力発電の開発に着手。ホームセンターで買ってきた資材で、初期のプロトタイプをGW期間で一気に作り切り、考案した機構で特許取得できた後に、脱サラをして起業するという、ものすごい「行動力」と、これが世界を変えるという良い意味での「勘違い力」で、走り始めました。

初期のプロトタイプ
羽根のないマグナス式の風力発電

しかし、そのプロトタイプと特許を持って、様々なビジコンに出てもなかなか結果が振るわず。そんな中、2014年リバネスが主催する第1回ディープテックグランプリに出場して、見事に最優秀賞受賞しました。そのグランプリでは、今となっては日本一有名な町工場・浜野製作所さんと出会い、リバネス・浜野さんと3者で試作・研究開発を推進していきます。

第1回ディープテックグランプリ(旧・テックプラングランプリ)
リバネス・浜野製作所・チャレナジーの資本提携

そして風洞実験機を具現化して、エビデンスと実証実績を重ねて、資金調達とパートナー企業との提携へと繋げ、現在では世界でもトップクラスの台風が通過する沖縄・フィリピンのエリアで実証と改良を重ね続けています。

フィリピンで稼働中の風力発電機

それぞれの段階でも紆余曲折のアツいエピソートがあるのですが、長くなってしまうので割愛させてもらいます。詳しい開発秘話は、STEAM&アントレプレナーシップ教育の動画教材にしているので、ぜひご覧ください。

経産省 未来の教室で開発した教育プログラム「ハッケンLENS
アントレプレナーシップ教育プログラム版

高専人の行動原理と未解決の課題が出会う時、サイクルが回りだす

清水さんの課題解決への道のりをきかせてもらい、高専の先輩にこんなにカッコよくて、社会課題の解決に向けて本気で挑んでいる方がいることに、驚き、尊敬し、嬉しくなりました。

ただ、その一方で、高専出身だから研究開発が推進できたというよりも、清水さんが特別な人だったから、ここまでできたのではないか、と当時は思っていました。

そして時は経て、数年間リバネスで創業前後のディープテックベンチャーの発掘・伴走を行い、数百社のベンチャーと出会う中で、あることに気がつきました。「あれ!この人、高専出身じゃん!」「え!この人も高専だ!」経歴を見ると高専出身の方がとても多いのです。

これだけ高専出身の人がいるということは、何か共通項があるに違いない。そう思って、創業前のお話などを伺うと、いずれの高専人も課題に出会ってからの行動パターンに共通点がありました。一般的に多くの人は、答えのない課題に出会ったら、その解決プランを練りに練って、最適解を思いついてからアクションする傾向にあります。しかし、高専人は、課題に出会ったら、まずは手を動かして感覚的に手応えを掴みながら、解決策を模索します。高専生は、「説明書を読まずに機械を使い始める」という話はよく語られますが、まさにこの行動原理を未解決の課題に出会ったときも実行しているのです。近年では、アジャイル開発やOODAサイクルなど、MVP*を作りながら仮説検証を行うことが当たり前になってきましたが、それを無意識的に実行しているのが高専人です。 (*MVP=Minimum Viable Productとは、課題を解決できる最低限のプロダクト)

では高専人には、なぜこのような行動特性があるのか?そんな問いを深めて考えていくと、この行動を引き起こしているのには、先天的なものと後天的なものの2つが影響しているのではないか、という仮説に思い至りました。

その因子について、書いていこうと思いますが、長文になって、書く側も、読む側もそろそろ疲れてきたと思うので(笑)、次のnoteで触れていきたいと思います。

後天的な因子は、下記のスライドに少しまとめていますが、詳しくは次回に!

参考|高専生が持つポテンシャル

参考|過去に取材した高専人

↓ついでにご紹介。以前、開発したSTEAM教材について取材いただいた記事


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