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最高の黒歴史

久しぶりに会った人は違う仕事をしていた。

その仕事というのは、なぜその仕事を?と思う仕事だ。

特定の仕事ができるように、その職業につけるように特化された学習スクールに一緒に通って切磋琢磨したものだから、てっきりゴールはそれしかないと思っていた。でも、違った。

「もう黒歴史だよ」と言っていた。

ウィキペディアで調べると、「黒歴史(くろれきし)とは、アニメ作品『∀ガンダム』に登場した用語。物語中では、太古に封印された宇宙戦争の歴史のことを指す。転じて、なかったことにしたい、あるいはなかったことにされている過去の事象を指す日本語(若者言葉)として定着しつつある。」とあった。

その人がいうのは、きっと「なかったことにしたい、あるいはなかったことにされている過去の事象」という意味で使ったのだろう。

犯罪や悪いことをしたわけでもないのに、その時期をなかったことにしたいというのは複雑な言い回しだ。

実際、違う仕事をしても良い。一緒に同じ時間を同じ目的で学習に割り当てて頑張ったからといって、どうするかは本人次第だ。どうなるかも本人次第。

勝手な決めつけをしていた。「いいんだよ、違う仕事をしていて。」

本人が望んだことなのだから。思っていた仕事をしていてほしいと勝手に想像していただけ。勿体無いとか、そんなことはこちらの勝手な感情だ。

本人自体も思ってもいない仕事をしていたことは十分に分かっていた、そして罪悪感を感じていたよう。だから会うこともしなかったし、会うまでに時間が必要だったと言っていた。近況を語り合うのが嫌だったらしい。

なぜ罪悪感を感じるのか、それは薄っすらと分かる気もする。

「もう黒歴史だよ」はなぜか悔しかった。悔しかったのは「黒歴史」という言葉なのかもしれない。

なかったことにするのは良くない、きちんとあったことにしてほしい。

学習スクールというのは「TECH::EXPERT=テックエキスパート」、今は「TECH CAMP=テックキャンプ」と呼ばれている。知ってる人は知ってるのでないだろうか。

エンジニア育成スクールだ。2019年の12月ごろに私は卒業した。丁度、1年経過した。10週間ぐらいだったが楽しい時間だったと記憶している。その10週間の1日1日はハードで濃厚だと思う。3日で辞める人もいるので10週間を全うできる人は限られた人だ。卒業はゴールではなくスタートだからその後の就職活動は一番大変である。

エンジニアを募集する会社の間では、TECH::EXPERT (TECH CAMP)卒業者は書類審査で落とすようにと人事部に伝えられていたらしい。これはあくまで噂、そんな噂が立つのが残念でならない。仮に入社できたとしても、社内でそう言われていたら黒歴史と言いたくなる。単純に実力不足、戦力外もあるだろう。TECH CAMP=テックキャンプに入ればなんとなると思う人もいるだろう。そんな甘くない。

記憶が曖昧だが、デザインの学校で以下のようなキャッチコピーを見たことがある。

「良い学校です。でも、どうなるかはあなた次第です」

覚悟を確かめるコピーだと思う。入ればなんとかなると思わせない、全ては自分次第。授業料を高額にして敷居をあげるのも良いがブランディングも必要だ。

話を戻す。

久しぶりに会った人はエンジニアではなく、別の仕事をしている。

卒業後は長い就職活動を経て、無事にエンジニアの会社に入社。入社してから本格的な業務に苦戦、分からない日々を繰り返し、前進しているのか止まっているのか、思考と身体は疲弊し、次第に何もかもが嫌になり、会社を辞め、今はアルバイトを経て携帯の販売員になっていた。

「明るい1年になることを望んだけど、1年後にはそうなっていないな。」と悔やんだ後に「でも、1年というのは気持ちを整理できる必要な時間でもあるよ。だからこうやって近況を話せるんだよ。」と清々しい表情で言われて素直に受け止められなかったが、次に言われたことで安心した。

「販売員をしながらアプリは作ることはできる。今は時間が作れないけどいつか作る。スマホ売ってたら作りたくなった笑」

「技術は忘れているかもしれないけど、思い出せば良いしね。笑」

忘れたら思い出せば良い。良い言葉だ。あの時期にやった学習時間が無駄ではない。技術は磨くものだ、錆びても良いのだ、使うことが大事だと思う。

1年は短いようで長い。1年で色々変わるし、何も変わらない時もある。変わる機会は沢山あるし、変わる機会をスルーもできる。本当に人生は変わる。

やったことは無駄にならないと思う。だから「黒歴史」なんて言葉は嫌いだ。なぜなら残ることをやったのだから。


ここで脱線。

好きな漫画に久保ミツロウ先生による「アゲイン!!」というものがある。

ざっくり話すと、3年間の高校生活を友達も出来ず部活にも入らず自堕落に生きてきた主人公の今村金一郎は、卒業式の日に階段から転がり落ちてしまい、3年前の入学式の日にタイムスリップしてしまう。3年前にタイムスリップして何もなかった3年間を、何か残る3年間にした内容。

主人公の今村金一郎が発言したセリフが好きだ(以下はずっとスマホに残してる画像です)

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今村金一郎「最高の黒歴史 作ってやろーぜ」

「最高」をつけるだけで「黒歴史」は変わるような気がする。やり直すことができると思う。忘れていたなら思い出せば良いのだから。

何か理由があってやろうとしていたことを途中で辞めた人も、諦めた人も、単純に挫折してやめた人も、ただの「黒歴史」にするのは勿体ない。

「黒歴史」を前向きに使おう。なかったことにしたいことを作り直すことだってできる。「黒歴史」はなくしたい、隠したいことではない、別の形でも使える武器だと思う。


携帯の販売員になった人に「最高の黒歴史だね」と伝えたら、

「今のところはね、色関係なく歴史だから大事にするよ笑」と言われた。

卒業して1年間色々あって、久しぶりに会った、いや、会えたのか。

会えて良かった。あって良かった。


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