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【何者】読書感想文







『何者』
著者:朝井リョウ
出版社:新潮社

あらすじ

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。

新潮社HPより



2016年に佐藤健さん主演で映画化されました。

映画は観ていないのですが、ポスターの記憶があったので、小説を読む間、私の脳内は完全に彼らで再生されていました。



物語は常に観察者である拓人の視点で描かれています。


就職活動というものを通してお互いに支え合ってチームで協力しあっているようで、実はお互いに少しずつ牽制しあい、相手よりも自分が優位なところをみつけて安心する所があったり。


そういう「人間くささ」が上手く描かれていると思いました。
ある種オーデションを受けているような状況下では、人の業みたいな部分がより顕著に現れるんだろうなと。




私自身は高校を卒業したら美容専門学校に進んだので、就職活動でいわゆるリクルートスーツを着てエントリーシートを書いてという経験はありません。


美容学校という環境上、言い方が合ってるのかは分かりませんが、特殊な人たちはたくさんいました。笑

クラスメイトにはアフロがいたし、みんな古着やらなんやらを上手に着こなしてファッションを楽しんでいました。個性がある事、目立つ事、カッコいい事、可愛い事がある意味正解でした。
そしてみんな「美容師になるという夢」がある事が大前提でした。

本当に特別な才能がある人。
そうまわりに見せるために努力で補った人。
その努力する人たちをちょっと引いて見ている人たち。
色々な人がいたなーと思います。

私自身は、才能がバリバリあってコンテストで賞を取る友達に憧れながらも、本気でやってみて才能が無いことを証明されるのが怖くて、少し引いて俯瞰で見ている、たぶん拓人的な学生だったと思います。

小学生の時になりたい職業を決めました。
美容師かお医者さんか陶芸家かカメラマン。
その中で、美容師を選びました。

それが今度、いざ就職活動をする時になると選ぶ側から選ばれる側になる。

私たちの時は青山・表参道に就職できたらいわゆる「勝ち組」で、ヘアカタログや雑誌に載るような有名店以外に就職するのは「その他大勢」。


有名店ではないけれど、たまたま面接を受けた2つ目で私は内定がもらえて、そのお店で17年も美容師を続けてこれました。
学生の時憧れた才能に溢れた友人たちはほとんどが美容師を辞めています。
(ちなみに美容師の離職率は1年で50%です)

でもこれってどっちがスゴイって話でもなくて、彼らはやってみて「違った」から新しい道を選んだだけなんですよね。

何事も挑戦してみなくちゃ合ってるか合ってないかなんて分からないし、続けてみてしか見えないものもあるし、逆にどんどん他の仕事を見つけていけるフレキシブルさも才能だしな。
それから今になって思うけど、特別な才能があると思ってた友人たちは相当努力していたんだよね。



大好きだった矢沢あい先生のご近所物語の中で、こういうセリフがあります。

この学校の連中はさ
みんなそれなりに夢やら目標やらがあって
それを当然のことみたいに思ってる
おれらのトシでそんなの見つかってる方がめずらしーのによ
そんなやつらの中で
自分見失って置いてかれるやつの気持ちがお前わかる?
置いてかれないように必死になってるやつの気持ちがわかる?



ご近所物語は高校生たちの話でしたが、大学卒業の就職活動の時なんて、ほとんどがこの状況なんじゃないのかな?と思いました。


大した事ない志望動機を大した事のように話して、スーツを着て大きく見せて、社会に出た事もないのに社会でやっていける事を証明しなきゃいけない。


さすがにこの歳になって選ぶ側にもなったので、合わない人を採用するのはお互いに時間の無駄だから、素の自分で来てくれよとも思いますが。笑


ああ、でも、これからの時代はもっと多様化していってオリジナル性を求められるようになるのかしら。それはそれで大変そうだなぁ。


なんてまとまりのない文章になってしまいました。

ぜひこれから就活の人もそうじゃない人も読んでみて欲しいなと思います。

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