アクセルとブレーキの踏み間違い事故について

アクセルとブレーキの踏み間違い事故について

【はじめに】

最近踏み間違え事故の報道がよくされています。

踏み間違い事故について解説します。


【踏み間違い事故のシーケンス】

シーケンスといってもはじめの一歩はアクセルとブレーキの踏み間違いです。

以降以下になります。

①ブレーキを踏むつもりでアクセルを踏む
②車が進む
③アクセルを踏んだことに気がつく
④アクセルを離す
⑥ブレーキに踏み替えようとする
⑦ブレーキを踏むつもりで再びアクセルを踏む
⑥車が加速
⑦ブレーキを踏んでいるのに車が止まらないと思い、思いっきり(アクセルを)踏み込む
⑧車は最大加速で突っ込む

踏み間違えが事故に至るのは踏み間違えて、踏み替えをした際にブレーキに踏み替えるつもりがもう一度アクセルを踏んでしまうことです。


【踏み間違いを起こしやすいシチュエーション】

〈急いでいる時〉

TVCMでもやっていますが、急いでいる時は運転操作がおろそかになりがちです。


〈左足の位置が普段と違う時〉

人は絶対的な尺度が苦手です。

相対的にものを測ったり、相対的な位置関係を把握したりします。

左足からの相対的な位置関係を自然に感じ取ってアクセルとブレーキの位置を探り当てます。

シートからの相対位置はシートへの腰掛けた位置や角度によって影響を受けます。


〈体をひねっている時〉

これは先ほどの例の具体的なシチュエーションです。

バックで体をひねっている時は、脚の位置が曖昧になりがちで、アクセルとブレーキを間違えやすくなります。


〈レンジ選択ミスを起こした時〉

レンジ選択ミスをすると、慌ててリカバリーをしようとしますが、その焦りがさらなるミスを誘発します。

レンジ選択ミスについては下記のノートを見て見てください。


【踏み間違いの要因】

オートマ車のブレーキペダルは踏み間違いを防止するために工夫されています。

ブレーキペダルそのものが大きく出来ており、奥行き方向にアクセルペダルと大きな段差があります。

足探り状態にあっても明確な違いが感じられるように狙ったものです。

しかし、この2つが踏み間違いに悪影響もします。

アクセルペダルが奥にある関係上、踏み替えるときには大きく足を戻さないとブレーキペダルの上に足を載せることは出来ません。

しかもブレーキペダルが大きいため、直線的に斜めに引き戻そうとするとブレーキペダルに引っかかります。


【踏み間違いを防ぐ運転方法は?】

〈じんわり発進する〉

ハンドル、ブレーキ、アクセル全てにおいて急の付く動作はよくないです。

中でも駐車場などではミスがそのまま事故につながりやすいです。

Pから発進のためにレンジ選択を行った時に、トランスミッションの中で空転していた駆動力はトルコンを介して車輪に伝わります。そしてそれをブレーキで止めている状態です。

まずその時に駆動系の遊びのぶんだけ少し回り、ブレーキに止められたときに少しだけショックがあります。

この状態でブレーキをゆっくり離すとジワリと駆動力が伝わりますが、少しでも抵抗があると進行方向には転がっていきません。

タイヤが転がるのに必要な必要最低限の駆動力がかかるギリギリを狙ってブレーキを開放します。

それでも進まなかったらアクセルをジワリと踏み、駆動力が伝わるまで待ちます。

待つのはアクセルを踏んでから駆動力がタイヤにかかるまでタイムラグがあるからです。

必要最低限の駆動力が伝わるまでアクセルをジワリと踏んで待つを繰り返します。

このように操作すると、アクセルとブレーキの踏み間違いに気づいた時に速度が出ていないので、踏み替えも自然と落ち着いてゆっくり確実に行えます。

レンジ選択ミスを防ぐのにも役立ちます。

ジワリと車が動き出すため同乗者の快適性も高くカーノックも起こしません。

カーノックについてはこちら


〈ドライビングポジションを正しくする〉

ドライビングポジションを正しくすればペダルの位置関係が曖昧になりにくくなります。

ドライビングポジションについては下記のノートを参照ください。


【踏み間違えてしまったら?】

最近の車はアクセルとブレーキを同時に踏んだ際にブレーキを優先する制御が組み込まれています。
(ブレーキオーバーライドと言います)

踏み替える時に両足で踏めばブレーキペダルが大きいので、左足の方はブレーキを踏むことが出来ます。

ブレーキオーバーライドが付いていない車では、アクセルを踏んでいるとブレーキブースターの効きも悪くなるため、停止できる可能性が低いですが、被害を軽減できる可能性があります。

しかし少し前の車は装備されていません。


【どこで起きやすいか?】

道路以外での場所がトップです。

駐車場で起こりやすい事故だと言えると思います。

駐車場は歩行者と車が混在し、店舗などの施設との距離も近いので、重大事故につながりやすいです。


【高齢者特有の現象か?】

高齢者でも若者でも踏み間違えはあります。

実際若者の踏み間違え事故に遭遇したこともあります。
(コンビニの正面に頑丈な柱がなければ危うく轢き殺されていました)

統計上では65歳以上で踏み間違い起因事故が増加する傾向にあります。

また、24歳以下でもかなり多いことがわかります。

出典:運転操作の誤りを防ぐ 交通事故総合分析センター
https://www.itarda.or.jp/itardainfomation/info107.pdf

若者は運転の不慣れや、リスク認識の甘さが招いているような気がします。

高齢者は特有の事情により、若者よりも踏み間違い事故を起こすリスクが高いです。


【高齢者特有の要因】

高齢者特有の要因として大きいのは四肢の運動能力の低下です。

ブレーキを踏む時やアクセル→ブレーキの踏み替え時に足首や膝が自分の思っているように動かないことです。

ロコモティブシンドロームという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

膝が思った通りに上がらず、わずかな段差にもつまづきやすくなってしまう症状などがあります。

アクセルとブレーキの踏み替えではブレーキの高さまで足の裏を上げる必要があり、スネの筋肉を使ってつまさきを上げるか、膝を使ってひざ下を持ち上げる必要があります。

また、足首をひねる事で踏み替えを行う人も多いかと思います。

高齢者はそのどれも動作が衰え、上手に出来ません。

認知症に代表される認知機能要因もあるかと思いますが、身体的要素の方が可能性としては高いと思います。


【最近起こるようになったのか?】

踏み間違い事故自体は昔からあります。

しかし、高齢者の割合が多くなったため、リスクの高いドライバーが増えたことが要因で増加傾向です。

高齢者の運転による死亡事故は、平成27年に一旦微減していますが全体としてはほぼ純増です。

出典:警察白書 平成29年 警視庁
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h29/gaiyouban/gaiyouban.pdf


【偏向報道】

統計上では65歳以上で踏み間違い起因事故が増加する傾向にあります。

しかし「高齢者(60歳)の運転する車が暴走しました。やはり高齢者の事故が多発しています。」等と高齢者の幅を広げて報道されることが多いようです。

ちょっとうがった見方をすると、自動車メーカーや国土交通省の運転支援装置普及のための世論作りをしているかもしれません。

日本は世界最速最大の高齢化社会を迎えようとしているので、高齢化社会対応を理由にするとなんでも通りそうです。


【誤発進抑制後付け装置】

〈ナルセペダル〉

アクセル・ブレーキの踏み間違いといえばこれです。

これはかなり昔からある装置です。
が、全く普及していません。

製品のHPはこちら。
http://www.onepedal.co.jp/products/

踏み間違いがアクセルとブレーキを「踏む」という同じ操作方法から起こる現象だと捉え、アクセルの操作方法を「踏む→レバー操作」に変更したものです。


〈ペダルの見張り番〉

急発進を防止することで踏み間違いに対処します。

前後の障害物の検知は行わず、車速とペダルの踏み加減の条件でアクセルペダルの信号をカットする装置と思われます。

ブレーキ信号を入力することで、ブレーキオーバーライド機能も付与されるようです。

周辺監視用のセンサーを設ける必要がないところが優れています。

出典:急発進防止装置「ペダルの見張り番」mirareed
http://www.mirareed.co.jp/pr_%E3%83%9A%E3%83%80%E3%83%AB%E3%81%AE%E8%A6%8B%E5%BC%B5%E3%82%8A%E7%95%AA/


【誤発進抑制機能】

近年自動車メーカーがこぞって新車に搭載している安全装置です。

前方や後方をカメラやレーダー、ソナーで監視して障害物が検知出来ている状態では発進を抑制する機能です。

予防安全装置については下記のノートを参照してください。


【MT車だと踏み間違い事故は無いか?】

MTでは踏み間違いがないかと言えばあります。

ペダルが3つもあるし、その関係でブレーキペダルも小さいので踏み間違い自体は起こしやすい構造と言っても良いでしょう。

しかし、常に両足を使って運転することから、ペダル位置に関しては曖昧になりにくい性質もあります。

また、何かあった時にはクラッチペダルを踏めば駆動力を切ることが出来るので、リカバリーはしやすいです。


【あとがき】

AT車は簡単だという誤認からくる事故という側面もあります。

ドライビングポジションや丁寧なペダル操作でも誤発進の防止には役立ちますので、普段から丁寧な運転を心がけると良いでしょう。

若者や高齢者だけの問題と考えずに、誰もが当事者になりうるという目線で捉えて安全運転に努めてください。


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