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科学的なストレス対策

平成27年12月より会社でストレスチェックが義務付けられていて、チェックを受けた人は「こんなんでチェックになるんだろうか?」と思うかもしれません。

出典:厚生労働省 ストレスチェック制度
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/

人によっては「ホントはこの項目Yesなんだけど、うつ認定されると仕事休まなきゃならなくなるし、面倒だからNoにしておこう」と自ら改竄してしまうことがあるかもしれません。(正直に答えたほうがいいのは言うまででも無いですが)

このようにストレス対策は国を挙げて対策されるほど問題視されています。


鬱病になったり鬱病の予備軍(閾値下鬱(いきちかうつ)と言います)になると、夜中寝れなくなったり、突然起きてしまいます。

そのことが心身に支障をきたします。

「ストレスは誰にでもある」

そのこと自体は間違っていないですが、我慢してしまうことで悪化してしまい、自分で通院の判断などできなくなってしまうので、最悪自殺をしてしまいます。


【ストレスの種類】

ストレスには2種類あります。

〈頑張るストレス〉

自らが掲げた目標へ向かって頑張らねばならないなど。
心臓血管系などの体の反応がでてきます。
アドレナリンが影響しています。
結果的には心臓などを痛めます。

〈我慢するストレス〉

満員の通勤電車に乗らなければならないことや、嫌な人(上司など)と顔を合わせなければならいなど。
現代社会に多いです。
コルチゾールが出ます。
そして脳が損傷します。

近年インターネットの普及も影響しています。
インターネットはテキスト情報が主です。
テキスト情報を読むと頭が回転しやすいため、過去や未来に考えを巡らせることにもなります。


【ストレスに強い人/弱い人】

生まれ育った環境がストレス耐性に大きく影響しています。

子だもの頃にストレスを強く受けた人は大人になって扁桃体が大きくなることがわかっています。

扁桃体が大きくなると小さなストレスにも強く反応しやすくなり、些細な刺激でストレスホルモンが分泌されやすくなります。

遺伝の影響もあり、先天的にストレスに強い人もいます。


【どういった人がストレスに強いか?弱いか?】

規則正しい生活をしている人の方がストレスに強い。

怒りやすい人や、欲しいものをどうしても手に入れたい人はストレスに弱いです。

今の自分の状況に満足していられる人がストレスに強いとされています。

しかし、みんながみんながゆったりと生きてはいけないので、ストレス対策が必要です。


【ストレスはなぜ心を蝕むのか?】

ストレスを受けると恐怖や不安を司る脳の扁桃体という部分が活動をします。

脳から副腎に司令が下されて、副腎から様々な物質(ストレスホルモン)分泌されます。

ストレスホルモンは心臓の鼓動を早め、血圧を上昇させ、血液を固まりやすくします。

これは肉食動物に遭遇したりした時に行動力を高めるための準備のため、生命維持に必要な優れた機能です。

ストレスホルモンのうちコルチゾールという物質が脳にたどり着き吸収されますが一定の量を超えると脳の一部を破壊してしまいます。

コルチゾールが長時間分泌されると海馬が萎縮し、海馬の神経細胞に突起が減るという変化が現れます。

海馬というのは有名な脳の器官で、記憶や空間把握の働きを持ちます。

鬱病の人が通常の生活を送れないほど能力が低下してしまうのは海馬の萎縮が影響していると考えられます。

また海馬は記憶を司るので認知症にも影響します。

ストレスホルモン自体は緊急事態に必要なものです。
しかし緊急事態が去れば不要なものです。

天敵がいなくなった現代では使われなくなったのでしょうか?

いいえ、扁桃体は恐怖や不安に反応するため、仕事や人間関係などでもストレスホルモンが分泌されます。

このため、ずっとストレスホルモンが出る社会になっていて、ストレスホルモンが慢性的に過剰になっています。


【なぜストレスホルモンがずっと分泌されてしまうのでしょうか?】

これには記憶力と想像力が影響しています。

記憶力は過去のストレスを今の自分に脳内再生します。
外で叱られたことを家で思い出したりします。

想像力は未来のストレスを今の自分に脳内再生します。
これから叱られたり、失敗したりすることを想像したりします。

これはマインドワンダリング(心の迷走)と呼ばれ、生活の多くの時間を占めています。(47%)
目の前のことではなく、過去や未来に対してです。

記憶力や想像力は言うまでもなく必要な機能ですが、これがストレスに関しては悪影響します。

通勤列車が満員だったり、上司からの叱責だったり学生ならばイジメなんかが顕著なストレスの例です。

このマインドワンダリングの対策として最近脚光を浴びているのがマインドフルネスです。


【マインドフルネスとは】

瞑想のことです。

日本では瞑想というと宗教的な色合いが強いですが、宗教から切り離して考えて下さい。

マインドフルネスは名だたる大企業、刑務所、学校でも採用されています。

アメリカ心理学界でもストレス対策の柱に位置付けられています。

iPhoneを使っている人であればヘルスケアの中にマインドフルネスという項目があることが確認できると思います。

毎日10分程度から始めるのが一般的です。

8週間ほど続けると、ストレスからくる体の不調は35%、心の不調は40%軽減されることがわかっています。


【実践、マインドフルネス】

体の力を抜き、背筋を伸ばして座ります。

体と呼吸に意識を向け、その様子を感じるようにします。

呼吸をただ感じてください。

お腹が膨らんで平らになる。

胸がゆっくり上がったり下がったりする。

体に起こる脈動を感じることです。

このとき注意をするのは体をコントロールするのではなく、自然に任せて体を見守るだけにしてください。

やがて(2分後)様々な雑念が浮かんできますが、それは考えないようにします(難しいですが)。

再び今の瞬間の体や呼吸の感覚に意識を戻します。

体全体で吸った息が行き渡るようなイメージをします(5分後)。

空気の動きや部屋の広さなど、周りの空間に意識を広げて今の瞬間を見守ります(7分後)。

最後はまぶたの裏に注意を向けて、そっと目を開いて終了です(10分後)。


【マインドフルネスはなぜストレス対策になるか?】

マインドワンダリングは前述のように記憶と想像でストレスを体内生産することですが、過去や未来ではなく「今」に自分の注意を向けることで、このマインドワンダリングを断ち切ることが出来ます。

その結果、脳に変化が現れます。

マインドフルネスを続けると海馬の一部が増加します。

マインドワンダリングで萎縮してしまった海馬がマインドフルネスにより回復する傾向があるそうです。

マインドフルネスにより扁桃体が5%減少したという結果も出ています。

これはストレスに対する過剰反応が減り、ストレス耐性が付くことを意味しています。


【宇宙飛行士のストレス対策】

宇宙飛行士は少しのミスが死に直結し、多額の費用をかけたプロジェクトのためプレッシャーも半端ないです。

JAXAではストレス対策のため宇宙航空医師(日本では10人しか居ないそうです)が宇宙飛行士のストレス対策に取り入れているのはコーピングというストレス対処法です。


【コーピングとは】

ストレスがかかったときにどんなことをすると気晴らし(ストレス解消)になるかをできるだけ沢山リストアップします。

例えば、音楽を聴く、歌う、笑う、植物を見る触るなど。

ストレスを受けた時にあらかじめリストアップしておいた気晴らしから選んだり組み合わせたりしながら実践します。

自らのストレスの観察・対策を行い、どれくらい解消されたかを自分で評価します。

点数(10点満点)をつけることで客観性を付けるとどの行動がどのくらい効果があるのかを意識できます。

ストレス解消につなげます。

宇宙飛行士は私物を宇宙に持ち込んでストレス対策をしています。

インターネットで家族と対話したり、地球を眺めたりしています。

コーピングを行うことで閾値下鬱の人も健康なレベルに回復するとのことです。

ストレスを数値化すると、脳にある変化が現れます。

コーピングをするとストレスを受けた時に扁桃体と前頭葉が同時に活動します。

これにより扁桃体の活動を前頭葉が抑制してくれるようになります。

車のアクセルとブレーキの関係です。

扁桃体は古い脳で、前頭葉が新しい脳です。

扁桃体が暴走すると前頭葉によるコントロールが難しくなります。

自分のストレスと対策を認知をすると認知を司る前頭葉が活性化し、扁桃体にブレーキをかけてくれるようになります。


コーピングには質より量です。

100個書くと良いらしいです。

具体的な行動や妄想などストレス対策と言うと「ストレスが解消されるには?」と構えて考えがちですが、構えずに単に気分の良くなるものをどんどん挙げていってください。

書き出しておくと、ストレスを受けたときに頭を働かせずにストレス解消法を知ることが出来るのでとても良いです。


〈注意点〉
鬱病で医師の処方を受けている方は医師と相談の上で実践してください。

出典:NHKスペシャル「キラーストレス」
http://www.nhk.or.jp/special/stress/index.html

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