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《共通規格》の発明闘争『コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった』(2007年の書籍)

めちゃくちゃ面白い時代小説「十兵衛両断」を中断してまで『コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった』を読み始めている。

※本レビューは2007年版です。2019年発行の増補改訂版の内容は含みません。

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった(増補改訂版)

本記事は[代わりに読んでおいて]システムで執筆されたものです。(発注主 明石さん(悪のリスト創始者)

おおまかな話にまとめてしまえば、

「輸送手段としてコンテナが発明されコンテナ船を用いた大量輸送が可能となり輸送コストの観点で世界の距離は縮まってグローバリズムが開花していくことになった」

というサクセスストーリーなのだけれど、本書はもう少しコンテナ自身に目を向けて、その来歴とか発明者の周辺を掘り下げてみようという点に新しさがある。

本書は若干のタイトル詐欺があり、発明されたのは「箱」ではなく《共通規格》であることがすぐさま暴露される。「箱」自体はこれまでも無数にあった。これを共通規格化したこと自体が変革を起こしたというのだ。

『コンテナ物語』は序文の時点でかなりおもしろい。というか、この時点で語られるべきところは語られているのではないかという気すらする。

コンテナ発明前の時代。船舶物流費用の大半は、輸送中ではなく港湾利用料金に費やされていた。当時の梱包はいい加減であり、船倉にパレットに積み込まれた砂糖袋やワイヤーや様々なものが乱雑に保管されていた。これを積み下ろしする港湾労働者達には繊細な技術と筋力が要求され、たいへん拘束時間も長かった。

港湾労働者の確保、接岸利用料金、器物の盗難や破損、混然一体となった闇のコストが存在しており、また港湾労働者たちは仕事にあぶれることを恐れ結社化し荷主に対抗するようになった。港湾の男たちは荒くれものであり腕力と技術にモノを言わせてストライキすら平気で行う社会ヤクザと化していったわけだ。

そして結社内の序列化、異分子の追い出し、仕事を振り分ける親方が賄賂を要求し、地下チンチロに参加しないものは仕事を得られず、勝っても負けても親方に借金することになる。

現代のコンテナ港では、接岸したコンテナ船がガントリークレーンでコンテナごと積み下ろしをしてトレーラーがどんどんコンテナごと運んでいく。1アイテムごと振り分けたり荷揚げをする必要はなく接岸時間は数時間。港湾労働者もエンジニアが数名で十分という規模に縮小されている。序文でコンテナ規格が世界を変革したことが語られているものの……港湾地帯の工場の閉鎖、旧式港湾労働結社の崩壊、海外工場への労働需要の流出、どう考えても穏やかに事態は遂行しない。コンテナ発明者は、物流の旧支配者達との闘争を強いられることになる。

現代グローバリズムの抱える問題点の発端にあたる『コンテナ物語』これはスリリングなサスペンスとなるだろう。

※本記事は第二章まで読んだ時点で記したものです。

【第三章予告】

「キミいますぐ50ドル稼ぐ気はないか!?」事態は急を要しているが取締役会を開催するための定数が足りない。顧問弁護士はオフィスを出て通行人に声をかけ役員は定数に達し決裁が行われた。

お望月さん 2020/1/29 から読み始め

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