グラナダ生まれの絵描きさん・モイセ
工房をオープンして素敵だったことの一つが、たくさんのアーティストさんに出会えたことです。
工房の内装はとてもシンプル。
白壁に一本だけある柱をちょっと控えめな赤で塗って
少し日本の国旗を思わせるようにしたけれど
あとは着物や家具が彩ってくれるので、心掛けているのは色のバランスだけです。
外から色とりどりの着物がガラス越しに見えて
着物に少ないグリーンを植物で補充して
着物に使われるトーンや家具の温かい木材の色と合わない色は扱わない。
色の種類よりもトーンの方を意識してうまくできているのか分からないけど、
自分が心地よく感じる雰囲気を目指しています。
その成果あってか、
画家、額家、音楽家、各種クリエイターが次々と訪れてくれました。
そのうちの一人、モイセはもう定年退職しているグラナダ出身のおじさん。
美術学生時代に日本人のマサコさんという同級生がいたそうで、懐かしい!と言って話をするようになりました。
私にとってはとてもありがたいご縁で、とにかく色々知っている。
木彫りの模様が、これは何世紀の何様式だとか、
宗教像のこのスタイルはどこどこのものだ、とか。
その知識量は何を話題にしてもどんどん出てくるので
いつも話は長くなるけれどとてつもなく面白く勉強になります。
一度は、Sagrado Corazonというキリストの像を直していた時、
「僕はこれと全く同じ像を持ってるよ!」と言って
手が壊れていたので見本にできるよう、彼の像を工房まで持ってきてくれました。
ありがたかったし、同じシリーズの像を見れて貴重な体験でした。
そして、私が自信満々で作った着物の額に批評もくれました。
はっきり言ってこの着物の額、全然理解してもらえないんだけど
(まあ、そんなにアピール戦略も練ってないから仕方ないけど。今年中にこちらのプロジェクトは再運転する予定です。)
この額、着物の一番魅力的なとこをぎゅっと詰め込んだものなんですが
こちらもやっぱり色のバランスや繊維のトーン、輝き具合などを
着物を着るのに帯や小物を合わせる時のようにしっかり考えて組み合わせています。
詳しくはこちら⤵︎
この額を見て、開口一番に
「バランスが最高だ」と言ってくれました。
黒の配色がいい、そうです。
そこを意識した訳ではなかったけれど、言われてみればそうだな、とか。笑
やっぱり芸術肌の人って感受性が豊かというかセンシティブ。
ちょっとしたことに何かを思える、感じられるセンスがあります。
モイセの学生時代、
日本人の教友・マサコさんがある日、作業中に手を切ってしまったことがあって
その時、ポタっと一滴の血が白い床に丸く落ちた、
それが日本の国旗に重なって彼の脳裏に深く深く刻まれた、と言っていました。
小さなことにドラマやストーリーを感じられるから絵が描けるのかな。
私はそういう繊細な感受性を持てる人が好きです。
そんなロマンチストなので、木の古い箱とか、年月が経った小物に
どうしようもなく惹かれてしまって、そこに芸術的知識も重なるので
コレクションが増えて増えて仕方がない!といつも嘆いています。笑
いつかコレクションルームにしている倉庫が片付いたら招待してくれるそうです。
だから私は2年前から抱えている仕事があるのでこちらをクリスマス前までに終わらせるという抱負を立てて
どっちが早いか競争です。
いつになることやら。笑
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