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#ファンタジー

ダンジョン探偵2 断片

   *

 アスフォガルには、俺が転生してくるずっと前から地域密着型のマフィアが根付いている。
 その名もイージンドゥと言い、これは彼らの言葉で“青ざめた手”という意味を持つ。
 領主や迷宮検査官といった治安維持に携わる者たちは『青手組』と言ったりする。
 彼らの主に手首から先には、青いレースの手袋のような精緻な刺青がびっしりと施されているためだ。
 青ざめた手は組織というよりひとつの民族であり

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ダンジョン探偵2 冒頭

「ジェリーの旦那、もう勘弁してくれよ」
 アスフォガル領主直轄の騎士団に所属する、いい歳をした男が情けない声で俺にすがり付く。
 騎士と言えば聞こえはいいが、迷宮検査局との縄張り争いでしょっちゅう揉めてるお巡りさん~自衛隊って感じの、ようは世知辛い立場の大人だ。
 まあ、暗黒中世バリバリのこの異世界で、はりきってるのが自警団だけではないのはいいことだと個人的に思う。
「あんたの家のメイドがあんたの

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ダンジョン探偵(仮) 前編

「やっちまえ!」とそいつが言おうとしたのが俺にはわかったので、「や」の時点でそいつの喉を鞘ぐるみの剣で突いた。
 辺りは薄暗い。どんな街にもそういうよどんだ場所があって、迷宮があって冒険者なんてヤクザな人間が集まればそりゃもう言うまでもない。暴力が生業の連中にとってはコンビニみたいなもんだ。俺を囲んでいるやつらもそのつもりでいることが《《俺にはわかる》》。
 まったくもって不本意だ。
 俺は死んで

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