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詩まとめ

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書いた詩のまとめ。
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#詩

【詩】聖歌と旅路

これ(以下)の続き 長い間夢を見ていた 未来予想地図を片手に、輝く世界を掴めると 一人ではなかった 同じ夢を見る者は他にも沢山いた しかし輝くのは未来ではなく過去の栄光、偽物の太陽、ハイエナの目 世界はいつまでも闇の中で、出口も正解も何一つ見えない 冷たくて現実的、思えば太陽が偽物なのだから、あたたかい訳がなかった 人々は僕らを「夢追い人」と揶揄し、「新しいものは、変化はいらない」と叫ぶ 既に棺の準備を始めて時を待つ人々に、僕はなれなかった 書き込みだらけの地図も、やがて擦

【詩】執念

蓮の台にひとり、 分かつ者がいない 嗤う人、蔑んだ 心がない お前を許さない 怒りは詩にした 憎しみは糧にした 生きねばならない 身体は大地に縛られた 無垢な空の青 無邪気な手毬花の白 コンクリートの大地に爪は立たない 傍で笑うきみ 助けもせずに 「まだ奔れるでしょう?」と、この身体を燃やす 空を睨み、手毬花に唾棄した 美しい顔だけしやがって 唾は届かなかった おれは無力だ おれを許さない ──逃がさない!── 這った大地に爪痕も残せない それでも身体はもう底にい

【詩】約束

12年目 うたう、ふと 誰もいない青空と草原の狭間 名前も知らない木がひとり それは「誰か」に入らない だってそいつは「居る」だけだ うたうことも、ほほえむことも、 逆らうことも、花を咲かせることでさえ それがさみしかった ひとり未満のその木は、ただの景色だった けれどそいつがいなければ、ここは本当にからっぽのゴミ箱みたいに、ゴミ箱のアイコンがあるあの景色みたいに、アイデンティティもクソもなくなる だからそのさみしいゼロ人の木は必要だった ここを液晶の世界にしないために

【詩】Catch my voice

この声が届くのなら。 この声は届くのか? 幾度なく繰り返した言葉。あなたもどうやらもしかして? 星の灯りも届かない、歌ももう消えそうなこの東京のどこかの街で、願うように縋ってみる。 あの日を思い出す。 届いた知らない声。 届きたいと思った人。 届かないと諦めたり。 無数の星のように流れ落ちた声のすべては拾えなくても、きみの声は届いたよ。 だからそれだけは固く掴んだ。もう零さないように。 その名を呟いてみる。忘れたくなくて。 この声はどこに届くの? この声が届く人はいるの?

【詩】蕎麦

朝、蕎麦を食べた 昼、蕎麦を食べた 夜、素麺を食べた そんなだから嫉妬されて、身体中に蕎麦の花が咲き乱れた 蕎麦よりも素麺に似た白い花 あたしの肌も白かった そんなに羨ましかったか? 夏によく映える肌より、小麦色の方が夏らしいのに ああ、口を滑らせた また花が咲く でもやっぱり美味いから、今夜は蕎麦にするよ

【詩】紫陽花

ぼくの動脈ときみの静脈 合わせたら何色なるかって? 答えを知っていたから、髪を染めたのかも そうでないなら、ただの不幸だろう リトマス紙の裏返し 青い紫陽花の中 赤いジャケット 翠のピアス そのどれもが混ざらなくて ぼくのものではなくて 「ずるい」なんて思わないけど、ただ欲しかった だから髪を染めたのかも そうでないなら、ただの下らない恋だ

【詩】Logicalist

君はとても頭がいいので、正しい論理で僕を諭す 僕もそれに納得し、それを受け入れる そんな生活も10年を超え、11年目 君は変わらずロジカリストで、僕は夢見がちなロマンチスト 幻想の方がロジカルだなんて、間抜けな話 君はどこにもいないのに その声だって聞こえやしない 見えもしない はじめからどこにも存在しなかった だから君に宛てたケーキも僕が食べる 君に宛てたチョコレートも僕が食べる それでも手紙は書いてしまう まるで君がどこかにいるかのように それは、愛した罰だ 下らなく美し

【詩】学び

常に忘れぬ向上心。 常に絶やさぬ好奇心。 学ぶことに事欠かない世界で、何度でも気付きを得る。 捨てられたゴミの数と散らばる花びらの数を数えながら、この二つの違いについて考えた。 僕はどちら? 君はどちら? 君の答えは、正しく僕を抉っていった。 日が暮れていく。 街の灯りが消えていく。 青暗い部屋の中、昼間の答えを探そうとして、床にゴミ達が散らかっていく。 ノートの命が無駄に削られていく。 それは人間によく似ていた。 不意に光りだす液晶画面。なんてことはない。よくあることだ

【詩】スタートライン

「よーいどん」で出遅れた。最下位確定、最悪のスタート。こころは早くも折れそうだ。 「二位じゃ駄目なんですか?」 トップに躍り出たその言葉。独り歩きの独走状態。人々が一位に仕立て、茶化し囃した結果だ。 足が縺れて転んでしまう。膝より見上げた首が痛い。 遥か遠く、泥の王冠を被らされた君は、今にも泣きそうだ。 望んだ笑顔は此奴等か? 泥の代わりに花を飾りましょう。 手を繋いで仲良く歩きましょう。 競うのも悪くはないけれど、僕らはそれでいいのです。 紙吹雪を撒きましょう。 そしてまた

【詩】青息吐息

給食の時間に流れるカレーの匂い 森色のラテ 白い空の向こうには青き山 ひとり身動きできない僕は注文番号を間違え、 そもそもの番号を忘れ、 ガムシロップと間違えて森にミルクをこぼした 白む森をかき混ぜながら、青息吐息 変化を嫌う風が僕の周りで吹き荒れ、僕の体温も奪っていく 甘い蜜もくれないのに 苦いままのラテも美味しいけれど、望んで選んだ味じゃなかった 現実とやらもこの程度なら飲み干せただろう そうじゃなかったから動けなくなった 14万は想像よりも遥かに渋く、辛い 残念ながら僕

【詩】Catch your voice

星に願いをかける 星に手を伸ばす 夢見がちなぼく 奇跡なんか信じちゃって 裏切りと敗北で刻んだ黒星を数えてはため息をつく ある日、君の声を聞いたよ 一等星でも何でもない、ちっぽけな君の声 君も奇跡を信じたの? ぼくが「奇跡」になれることって、ある? 星に願いをかけた 星に手を伸ばした その先にある、君の声を掴めたのなら! あてもなく歌を歌おう 神様もエデンもいらない 信じたぼくらの歌だけが、きっとこの世界を変える

【詩】ポケットコスモロジー

長い隔たりを超えて与えられた世界 「ポケットの中の宇宙」なんて トゥンカロンみたいに太っちょ はみ出すアンドロメダ 手に負えない、大き過ぎる世界 無限の可能性はまだ大いびき リアルに反してインフレーション 暴落したのはだあれ? 左手の中、歌う世界 感情とコネクト 自分拡散 ひとりぼっちのぼくたちへ 150グラムの魔法がかかる 未来の境目バグった世界 きみは正確に時を刻む そのくらいでいいのかもしれない 軽い世界は首かしげ、微笑んだ

【詩】みどりの日

五月四日、みどりの日 まだ開店していないスーパーの前でうぐいすが死んでいた 家に向かう途中、自販機の横でアイコスメンソールが死んでいた さらに歩いた先、大きくて古いマンションの花壇で、草葉が紙巻きタバコと心中していた タバコは、死ぬと煙が立たない 紫立ちたる雲の切れ間に星が落つ そんな馬鹿げた嘘浮かして 新たなみどりを看取り過ぎてゆくみどりの日

【詩】反逆罪、或いは3月4日

かみさまのいうとおり すくすくそだったぼくは かみさまのいうとおり うたがうことをおぼえず かみさまのいうとおり 違和【言わ】れたことにはめをつむる かみさまにさからったあかつきには "さばき"のこえがぼくをたたく "さばき"のてでかみをつかむ さばかれたぼくはかみさまのいうとおり すべてをうけいれ、犯行【反抗】をやめた 現在【原罪】 この体が、"現在"の姿ならば この意思持つことが、"原罪"であるならば 一生涯背負っていくのだろう 焼きついた呪いの如く 業の炎に抱かれ続