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まちだ丘の上病院見学記

机上の空論


『学生の時に悩んでいたことって、意外と現場では複雑すぎて手が出せなかったり、実はさらにその先で悩んでたりする。』

ちょうどこの前、元同期で今1年目の研修医と話していて、こんなことを言っていたのが印象的だった。
楽し樹という組織に関わってからというもの、講演会でお話を聞く機会が増え、そこで色々なことが頭のフックにひっかかって質問するわけだけど、ふと、この質問ってただの机上の空論になってないかなあと思い始めていました。
冒頭の研修医の彼は学生時代から勉強熱心で、様々な勉強会に顔を出していて、だからこそ色々なことに疑問を感じて問題意識を持っていたと思う。
そんな彼にこう言われると、現場の手触りのある視点からは、どんな景色が見えているんだろうと思ってしまう。大学生生活というモラトリアムは終わりに向かえば向かうほど離れがたいですが、早く医者になりたいなぁとも思う。(もちろん、学生で現場を知らない時に悩むことそれ自体はもちろん意味があると言ってくれて、きっとそれはそうだと思うけど)

今日はそんな不安が少し和らいだような体験について書き記します。備忘録。

まちだ丘の上病院


先日、町田にあるまちだ丘の上病院に行ってきました。以前講演会でお話を聞いたこの病院の理事長の方に図々しくも見学のお願いをしたら、ありがたいことに受け入れてくださったわけです。

この病院がどんな病院かは、是非こちらのNoteでも読んで欲しいわけですが、ざっくり説明すると、
2017年までは脳性麻痺による重症心身障害児の機能改善のための整形外科病院。当時の院長が引退するに当たり、病院は財政赤字に直面し、一時は廃院が決定。ところが、病院を潰すわけには行かないとスタッフが奮闘し、藤井さんが理事長に就任し、1年半後には黒字化、職員が一体となっての病院の改革が記事に取り上げられたり、現在は地域のまちづくりにも大きく貢献している病院です。

運営やらマネジメントやら


なんでこの病院を見学したいと思ったのかというと、4月から組織の運営ということに関わり始め、病院の経営やらマネジメントみたいなことに興味が湧いてしまったからです。
4月から楽し樹という組織の運営に関わらせてもらって、大学に入ってふらふら興味のあることだけをしていた僕が、初めて組織の中で何かをするという経験をしました。
楽し樹は驚異的なことに半年で400人近い人が集まり、講演会をしてくださる人も凄い人ばかりの面白い組織です。何もないところから組織がどのように形成されていくのか、更にはある程度人が集まったところで、どんな方法でそこに人が接着するような工夫を施せるか、みたいなことを微力ながら考えたりしてました。

そしてそれが案外楽しかった。人って全く想定通りに動いてくれない分、考え方によってはストレスだけど、それでもそこから何かが生まれたり、企画が形になる瞬間はやはり面白くて、もしかしたら自分はこういうことに興味があるのかも…ということに図らずも気づかされました。

そんなことを考えていた時に、あるメディアでフォートナイトについて知りました。フォートナイトというのはアメリカ発のオンラインゲームで、世界中で3.5億人がプレイしているそう。なんでそんな膨大な数のプレイヤーがそこにいるのか。
それはフォートナイトがただのゲームではなく、オンライン上でのコミュニティスペースになっているからです。学校から帰る、友達となんかしたいなー、ログインする。放課後に校庭に行く感覚で、仕事後に飲みに行く感覚で、みんなでどこかに集まる場所、それがフォートナイトになっている。そこにわいわいする仲間がいるということ。そしてワイワイできる何かがあるということ。それがキーポイントらしい。一緒に何かに熱中する、何かの作業をする、ただ話すだけなら話題は尽きるかもしれないけど、そこで共同作業をすることで、何時間でも一緒に居られる。これって今の組織の運営にとっても共通する、気がした。

病院のマネジメント


楽し樹で講演して頂いたある病院の院長の方に懇意にしていただくようになって、こんなことに最近は興味があると話した時に、病院のマネジメントに向いているかもよ!というアドバイスを頂きました。その方は30代で、潰れかかっていた病院の院長になってから、様々な働きかけをして病院を立て直した方で、詳細はこちらでも見てください。かっこいい。


僕自身この先生のされている病院での活動や地域づくりの話は、ある種のロールモデルのように感じていて、必然なのか偶然なのか、不思議なくらい短期間で点が少しずつ繋がっていったわけです。

もしかしたら今考えていて楽しいと思っていることは、病院の中で同じように出来ることなのかもしれない、それってめちゃくちゃわくわくするなあ、そんな風に思いました。卒業試験やら国家試験やらが待ち構えている中で、こんな変なことに手を出してしまった訳だけど、将来したいことの選択肢がまた面白い形で増えたんじゃない?的な高揚感にワクワクしていました。

そんな感じでワクワクしていたからこそ、冒頭の疑問で少し冷静になったのです。自分の中のイメージってどれくらい現場と乖離があるんだろう。ワクワクしていることってただの妄想なんじゃない?ちょっと浮かれてない?これがまさに最初に書いた“不安”のことです。
ここまでがまちだ丘の上病院に行くまでに考えていたこと。

想像と妄想の乖離


そんな不安もあったし、あとはこのタイミングでお話を聞けて繋がれたのもなにかの縁だろうと、自分の都合のいいように解釈をして、実際に現場を少し覗きに行ってきました。
さて、見学にいって何を感じたかというと
①“想像”がそこまで現実から乖離した“妄想”ではなさそうなこと
②妄想する仲間がいるならそれはそれで、今を大切にして妄想する意味はありそうだということ。

半日インターンさせて頂く中で、実際に経営会議やデバイスの開発会議みたいなものに出させていただいたり、そこで一緒に議論させていただいたりしたんですが、それがとても面白かった。半日垣間見ただけでそれに伴う苦労などはきっと全然見えていないけど、何かを良くするということに対してわちゃわちゃ考える、そんなことができたら楽しそうだなあと純粋に感じました。そして自分の中でのイメージと、病院で実際にされていることに激しい乖離はないのかもしれない、そんな感覚を持ちました。
この数ヶ月とても疑問に思っていたこと。どうやったら組織や病院を素敵にしたい、そういう火を灯し続けられるのか、継続性をもたせられるか、そんな質問をした時に理事長の藤井さんが、わかるー、それわかるー、と言ってくれたことがとても印象に残っています。僕が半年の間組織のマネジメント的なことについて、ド素人ながらちょっぴり考えていたことを、現場の人が同じように悩んでいるのか。だとしたら何かしらやはり共通点があるんだろうな。勝手にそんな事を考える。

企画をしていても、火をつけられる人とそこに加わって火をさらに大きくする油になる人の2種類がいる気がする。きっと自分は小さな火種を作って、そこに人を巻き込んでどんな色の火になっていくかを見るのが好きなんだと思う。そこで大事なのは、藤井さんが言っていた、コアになってエンジンを動かせる人が何人か集まるといいよ、という話。それから、新陳代謝が大事だよという話。

ガソリンスタンド

まあなんだかんだ言っても、それを仕事の中でやっていくことに対して、自分がどれだけの熱意と時間をかけられるか、かけたいと思えるかは将来になってみないとわからない。間違いなく、半日覗いた程度でわかった気になるのは早計で、あとは働いてみてからもう少し深く覗き込めばいいし、覗き込めるような環境にとりあえず身を置こうと思えたのは今回の収穫。

研修医になったらきっと今ある熱意や初心は、現実や忙しさの中ですり減って消えていくんだろう。でもそれを話せる仲間のところに戻ってきて、エネルギーを補給出来るガソリンスタンドのような場所があるといいねと話したことがある。そういう場所をしっかり持ち続けて、今を今なりに過ごしていけたらおーるおっけいかもしれない。きっとそこで繋がった人との出会いには意味があるだろうし。

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