見出し画像

雨の日のコインランドリー

久しぶりに豪雨でもなくぽつぽつと降る雨の日。空は一日中こんな感じなんだろうなというどんよりとした色。
室内干しはなんだかんだにおいが気になるので乾燥だけコインランドリーを利用することが多い。

10台ある乾燥機もほぼ埋まっている。家族の多い家は大変だろうな。

30分程度なので車の中で音楽でも聴きながら待っていても良いのだけれど、コインランドリーの中で乾燥機がゴウゴウと回る音に囲まれ、本を読みながら待つのも嫌じゃない。車にはいつでも時間が潰せるように文庫を2冊ほどとイヤホンを入れた手提げが置いてある。

活字から離れると少し不安になる。文章が読めなくなってしまうのではないかという不安。短編集でも良いから活字に触れていたいと思う。枕元や仕事の鞄にもそれぞれ文庫を入れたり置いたりしてある。

そんな自分を考えると、小さな頃見ていた父親と全く同じことをしているなと思わず笑ってしまった。父はどこへ行くにもカバンに文庫を一冊、車の中にも一冊、枕元にも一冊、というような人間で、それは今も変わらない。

読みたくて買った本が積読されている。父の歴史小説に比べたらミステリーや短編集など比較的力を入れて読まなくても入ってくるものが多い。先日実家に寄った時、母がたまりにたまった父の本類を処分していきたいと嘆いていた。状態が良ければ取っておいて欲しいと言うと、父本人がケースに入れてきちんと並べてとってあるからそれならそれで置いておくけど…と少し嫌そうな顔をして言ったのがおかしかった。

コインランドリーの中に座っていると、男性が乾燥機に入れにくる率が多いのに驚く。単身赴任なのか家族のものなのか。お父さん暇ならコインランドリーに行ってきてよ、と言われるのか。そんなことはどうでも良いのだが。つい妄想する。

ゴウゴウという音の中に時々カチャカチャという音が混じる。チャック(ジッパー?)の金具がドラムに当たっている音なんだろう。そのうちに終了を告げる電子音が掛け合うように鳴り始める。リズミカルで面白い。

夜のコインランドリーもなかなか好きで、23時に入口の自動扉が閉まる。中からは出られても外からは入れなくなるのだ。この前はギリギリだったのでやはり中で座って待っていると23時を過ぎた。他にも乾燥機は回っていて、駐車場の車の中で待っている男がいた。23時を過ぎて入ってこようとしてもドアが開かない。

中からその様子を眺めていたら目が合った。男はドアを指差した。ドアにそう書いてあるだろう、と思ったが中からドアを開けた。こんな時間にコインランドリーに来るある意味同士だ。困った時はお互い様。入ってきた男はぺこりと頭を下げた。

23時を15分も過ぎると中の電気も消える。それまでには出ていけということだろう。出られなくなるわけでは無いのだが、止まる時間が遅くなって電気も消えてしまった時には何とも言えない悲しい気持ちになる。それだけは避けたい。

そんなことを考えていたら乾燥が終わった。さっさと出さないとな。雨の日はみんな順番に乾燥機が止まって衣類が出されるのを待っている。うっかりすると待っている人に出されてしまう。それもなんだかもやっとするのだ。

さあ途中のコンビニでアイスコーヒーでも買って帰ろう。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?