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Found the Authentic -ロンドン旅行記② 2011.3.26

旅行記の続き。



鳥のさえずりとともに清清しい目覚め…ということもなく、時差ボケで早朝に目が覚めたのは言うまでもない。
朝食はよくあるコンチネンタルタイプ。やっぱり民宿みたいな狭狭しいレセプションルームでトーストとティーを頂く。ボス(と呼ばれていたじーちゃん)が親切に
「明日からはサマータイムだから、寝る前に時計1時間回しとくんだよ。」
と教えてくれる。そうなのか、ありがたい。しかしあのじーちゃんも、日本人女子グループのところに行くと饒舌だな。日本も英国もあんま変わらんなと思った瞬間だった。ほかのクルーたちは家族なのかわからないけど、なんだか若い女の子やお母さんみたいのがいて、所狭しとトーストを運んでいた。

ところで、今回の移動ではちょっとした実験をしてみました。事前に調べておいたオイスターカードと地下鉄のデイパスのどっちがお得かってこと。結果から言うと、この日の移動分では完全にイーブンな結果になったんだけど、ほんとに1日中地下鉄で巡るとなればもしかするとデイパスのほうがお得かもしれません。

ちなみにオイスターカードはこれ

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ただオイスターはSuicaようにタッチタイプなので、待ちがないって言う意味では非常に速いです。

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クレジットカード専用の機械もあるので自販機が混んでるときはこいつが使える。

大英博物館のオープンまで時間があったのでとりあえずサウスケンジントンからナイツブリッジまでウインドウショッピングをしながら歩いてみた。このへんも割とモダンな店が多いんだけど、店の建物の造りはとても重厚。こんなときだから考えざるを得ないのだけど、地震がきたらソッコー終わるだろうな。

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サウスケンジントンを降りるとすぐ見えてくるのがこのヴィクトリア&アルバート美術館。今回は行かなかったんですが、いろんな人のポートレイトが飾ってあるそうで。時間があったら今度行ってみたい。しかし表だけ見ても見ごたえはあるね。16世紀ごろの建造物なんだろうか。

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たぶん、ナイツブリッジのどこか。こうやって見るとグランドフロアだけ改築してお店にしてるんだね。たいていは上のフロアからアパートになっているよう。

ラッセルスクエアまで地下鉄を乗り継ぎ、大英博物館へ向かう。ついでに前回泊まったホテルの前も通過してみたんだけど、どうやらヒルトン系に買収されたらしくてすごくリッチなカンジになってた。このへんもすごく栄えてるなあ…。
しかしアジア人が多い。言語を聞いてると大体半分がEU諸国、もう半分がアジア系ってところ。意外と英語圏の人間が少なかったりする。まあ東京も似たようなもんか。

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有名な大英博物館の入り口。入館料は無料だけど、有志の寄付箱がある。まあパンフ料というところか。しかしただ見て回るんじゃなんもわからないので、入ってすぐ左側にあるインフォメーションででっかいiPodみたいなガイド音源を5£で借りることができます。ただここのインフォの人は全然やる気なくって、待ち列できてるのに電話してるかと思えば全然人の話聴いてなかったりするので値段間違われないように要注意。

大英博物館は知ってる人も多いと思いますが、ざっくり言うと時代と地域ごとにセクションに分かれて展示物が置いてあります。日本と違うのは、順路がないので自分が見たいものだけピックアップしていく見方がおすすめかも。

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有名なロゼッタストーン。前と配置が変わったような気がする。上から順にヒエログリフ、デモティック、ギリシャ語で同じ文章が書かれている。なぜこいつの発見が大事件だったかっていうと、これがまったく同じ文章を3言語で書いてあることによって、ギリシャ語からさかのぼってエジプトの古代文字の解明が可能になったから。何でそんなこと思いついたんだろうなーとふと思ったんだけど、感情論で考えると、これは僕らがときに懐古的になったりするのと同じことなのかな、なんて思ったりもした。常に歴史はリンクしていて、その連鎖によって文明は発展してきたんだ。それを感じさせられる。

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壁の扉。やはりどの時代にも下克上は存在したようで、セキュリティという観点は古代からあったみたい。扉かって言われると…少々謎な気もするけど、王を守るためにこういう工夫やシステムが作られていたことは確か。

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古代エジプトのミイラ。人間は昔から存在を残したいと考え、それが魂の存続に繋がると考えてきたことを象徴する遺産。そもそもに、生死論からすればなぜ死ぬことが前提条件でありながら存続願望を持つのか。これは人が生きてくうえでの重要なヒントだと思う。

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ミイラとともに埋葬された装飾品。こうやって見ると古代エジプトの保存技術は発展していたことがわかる。そして、ともに日用品も埋蔵していたという記録からは、なにか現代の人々の感情とリンクする部分があるようにも思う。

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これは非常に興味深い。古代エジプトでは猫や魚もミイラにしていたよう。されたほうはたまったもんじゃない(?)と思うが、動物に化身した神を崇拝していたことからも頷けるのかと思ったりもする。

エジプトセクションを過ぎると向こう側には古代ギリシャのセクションがある。主にパルテノン神殿の遺産があります。

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パルテノン神殿の屋根の装飾品。いわゆる三角のところ。

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風化してしまってるけど全部大理石。この衣の流れ方にもそれぞれ意味がある。すごい造形だよなあ。

大英博物館をぐるっと回っていろいろな感情に浸るのに十分な時間を費やすと、(まだまだ写真撮ったんだけどね。)少しテムズのほうに足をのばしたくなった。相変わらず鈍色の空だな。と思った矢先に気まぐれな小雨が。ああそうか、こういう気候模様があの哀愁漂うトレンディドラマだったりUKロックの何か感傷的な表現に繋がっているのか。とふと思う。

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ロンドン塔。血なまぐさい歴史で何か陰鬱とした雰囲気を醸し出している。でもこれも世界遺産。今でこそ死刑制度の廃止された英国のさまざまな歴史を残している。

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対岸には軍艦ベルファスト号。このサイズでも軽巡洋艦というから驚き。二次対戦中に活躍した戦艦。

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そして有名なタワーブリッジ。このぶっ飛んだ造形のせいで跳ね橋にせざるを得なくなったのか、或いは元から跳ね橋という前提でこの造形なのかはわかりかねるが、どっちにしたってこういうゴシック調は本当にロンドンの象徴とも言えると思う。何を願い、何を遺したくて造られたのだろう。

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このカットが有名な気がする。僕は一般的に周知されてるロンドンの景観の中ではタワーブリッジが一番好きかも知れないですね。

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橋上から。以前ロンドンを訪れたときにこんな話を聴いたことがある。ロンドンはテムズの南と北(写真では左と右)で、現代建造物と古代建造物を棲み分け、ニューシティ、オールドシティとしているんだ。と。ただ単に、何か歴史のイコンとしてそういう棲み分けがなされただけではないと思うけど、これも英国人ならではの趣といったところか。芝公園のど真ん中に東京タワーがある東京とはまた違う景観美。

ひとしきりテムズの流れに沿いながら、改めて見ると河自体は隅田川と変わらないくらい汚いもんだと思いながらも、ソーホーの中心へ向かう。この時代に生まれた性かもしれないけど、なにかこう、歴史的な瞬間に立ち会う場面では現実的な問題も同時に脳裏に過って、人間の文明の然るべき反比例について嘆いてしまう。美しさにも犠牲は不可欠なのか。端的にはそう言わざるを得ない気がしてくる。

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ウエストミンスター寺院。ロイヤルウエディングの影響もありこちらは参拝客で溢れてました。

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荘厳なゴシック建築。ごく基本的なことだけれど、崇拝場所を絢爛にする目的はやはりその重要性なんだろうか。或いは、神に受け入れられるため?

しかしウエストミンスターに着いてからというもの、なにやら街ではかなり騒々しいことが起きている様子。上の写真でも警官の数が異常。
そういえば土曜日はデモが起きるって言ってたような。この場所に訪れたのは無作為だったのだけど、日本ではあまり馴染みのないこの文化、とりわけ、先進的であり紳士の国といわれているここで人々が言論の自由を行使する理由や目的を少なからずの好奇心(というと語弊を生みそうなんだけど。)に駆られて観たくなった。

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デモの様子。方々で反戦(主にリビア)、政権交代、学生の学費に対する抗議、リストラへの抗議等々、思いのままにデモをしていました。ただ、彼らの様子はなにか逼迫した様子ではなく、家族ぐるみで楽しそうに練り歩いているのだ。日本のお祭りみたいな感覚なんだろうか。ともあれ警官隊の見張りがあることに変わりはなく、これらのデモの後始末をするのもオフィシャルの清掃会社だった。(夜には暴徒化して衝突があったらしいし。)客観的に見れば、なんて無駄な行為なんだと思うんだけれど、こうやって労働者に一定の社会的発言権を与えることが一種の統治なのかもしれない。ともあれ、体裁を気にし、会社に忠を尽くすことが徳とされる日本ではまずありえないし、そんなドライな感情でデモを起こせる人もこれだけの数は日本では集まらないだろう。

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とにかく楽しそう。

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ロンドンの大通りを色で表すなら、主に白と言えるかもしれない。それは物理的に白を基調としたゴシック建築やバロック建築、シラカバやナラの木が多いという意味でもあるし、或いは美しいのは表通りだけ、という風刺的な意味も込められる。決して美しいとはいえない黒歴史がありながらも、常に趣を兼ねてきたこの国の特徴がこうした部分に投影できる。ある意味、シンガポールの法律なんかにも影響を及ぼしてるかもしれない。

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ロンドンといえばダブルデッカー。低価格でどこへでも行ける。市民の心強い味方だけど、夜には図らずもこいつに乗ることになる。

このあとバッキンガム宮殿に行ったんだけど、ここはロンドンで一番つまらないアトラクションと言われたしまっただけあって、さすがに何もないです。笑 まあ日本なら皇居の周りを歩くようなもんだ。衛兵交代の時間を調べてくれば楽しめたのかもしれないけど、冬場は交代回数も少ないし、あまり期待はしていなかった。(以前見たからというのもある。)

鳩バスの都内観光よりもすさまじいんじゃないかというペースで回った市内観光もそろそろ夕方に。サマータイム直前なので日暮れが早い。この日はは事前に調べてあったレストランに行ってみた。ナイツブリッジのさらに南東、スローンストリートの近くにあった"THE STOCKPOT"

驚いたのはオフィシャルのディナーメニューで春巻きが出てきたこと。そーいえばよく読まなかったけどSpring rollって書いてあったっけか。まんまやん。あとはラザニア、ササミのフライとチップスの盛り合わせみたいのが出てきたけど確かにレビューどおり美味しです。
そしてなんといってもこれ

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Apple Crumble with Custardというメニューなんだけど、砕いたアップルとクッキーの上に熱々ののカスタードをかけるデザート。英国ではカスタードがけが主流らしいです。スプーンのサイズを見てもわかるけどこいつがラザニアと変わんないくらいの器できた。さすがにびっくりしてたら、
「そいつは君のメニューの中で今日一だな。」
と隣でワインを嗜んでいた英国紳士のおじさんたちの一人が。
以下おじさんズとの会話。(うろ覚えだが)


僕:「ホントですよ。びっくりですよ。」

おじさんA:「君のプリンはまるで小さいな。こりゃあっちの彼が正解だよ。」
(僕は普通のプリン、弟がこのクランブルを注文していたのだ。)

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僕:「さすがにも少しちっちゃいのくると思ったんですけどね。」

おじさんA:「まったくだな。わしもティラミスじゃなくてクランブルにすればよかった。」
おじさんB:「クランブルといえば、ここいらではな、オールドチャーチストリートのアップルパイとクランブルが絶妙なんじゃよ。君らここいらは初めてかい。」

僕 :「そうなんですか。はい。僕らはこのガイドブックでここを知ったんです。」

おじさんA:「そいつにオールドーチャーチストリートの店(なんか店名言ってたな)は載ってるかい?」

僕:「(言われた店名をしばし探す)…ないですねえ。」

おじさんA:「ダメじゃな。その本ここいらに関しちゃまだまだだな。」
おじさんB:「初めてって言ったな。このへんだとなタイ料理の美味い店があるんじゃ。わしらの行きつけじゃよ。それからロンドンは中華も美味いんじゃ。アジア料理はなかなかじゃの。」

僕「そうなんですかー。じゃあ…日本料理についてどう思います?」

おじさんB:「日本料理か…わしの口にはあんまり合わん気がするな。(と言ったような気がした。)」

僕:「マジですか。僕ら日本人です。笑」

おじさんB:「ほう日本人か。そういえば先日はとても悲しいことが起きたね。心を痛めていたんだよ。津波がヤバかったらしいじゃないか。こっちでは津波なんて経験しないからね。どんななのか想像すらつかないよ。」

僕:「ええ。ひどい地震でした。うちもかなり揺れました。」

おじさんA:「で、大丈夫だったのかい?壊れた?」

僕:「いいえ。倒壊は免れました。」

おじさんA:「そうかよかった。」
おじさんB:「何はともあれ、今日はクランブルを食べた仲として君らはわしらのベストフレンドじゃよ。」
おじさんA:「そうとも。是非オールドチャーチストリートに行ってみるといい。」

僕:「どうもです。お友達になれてよかったです。おじさま。」


こういうのがあるからなんたって楽しい。最後にはおじさんズみんなと握手した。ほとんど英語なんかできないけど、ひとつの話題で気さくに話して熱中してくれる。そんな白髪の紳士たちは悠々自適な老後を送ってるのだろう。素晴らしい。
それから店内の雰囲気やウエイトレスの雰囲気もなにかアットホームだ。店員のおねーさんも気さくに話しかけてくれるし、帰り際の挨拶はカウンターに肩肘ついたウエイトレスおねーさんがウインクで見送ってくれる。(美人なブロンドだから許されるのだけど。笑)リーズナブルなお店でも、日本でありがちな形式ばった文言ではなく、精神態度で表してくれるホスピタリティがなんとも素敵だ。これこそがCSの本質だろう。

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楽しいひと時をすごした"THE STOCKPOT"。ドア越しに写ってるのがおじさんB、そのまわりにいるのがおじさんズ。

気づけば夜も8時ごろまでふけっていて、近くからちょうどHammersmith行きのバスが出ていたので帰途につく。ちなみにオイスターでも地下鉄のデイパスでも乗れるので安心。

しばしおじさんズとの会話の余韻に浸り、果てには国民性の問題だろうかという考えにまで発展するとなおさら移住したくなる。そんなことを思ってたら睡魔に襲われていた。明日はソールズベリーだ。(続く)

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ちなみにラザニアもかなり美味しかったです。ここのシェフはなかなか繊細な味付けができるようでした。

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