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完璧ではなくベストを

心身共に100%元気な私が生み出す完璧と、40%くらいの状態の私が生み出す完璧は、そりゃ全く異なるでしょうよ。

そんな当たり前なことにすら気づけていなかった、生粋の完璧主義な私です。

生きていれば、心を揺さぶる出来事や、思いがけない体調不良、その他さまざまな不調というものは、大体が想定外にやって来ます。

でも、私の思い描く“理想”や“目標”の基準は変わらない、変えたくないものだから、その時々で実際に出来ることとの差に愕然としたり、イライラしたり。

その心の焦りによって心身が硬くなり、ますます結果が出しにくくなったり。

そうしてほとんどが、結局、自分で自分を追い詰めてきたように思います。

結果主義的な世界に生きる私は、どんな時でも言い訳は許されず、なんとしてでも100%の完璧を出さねばならないと思い込んできました。

痛いとか、悲しいとか、自分が我慢すればどうにかなることは簡単でした。我慢すればいいんだから。

でも、心身の不調によって、自分の意志ではどうしようもない、どうにもこうにも思うようにはいかないことも増えてきました。

それは、自分の目指す基準がどんどん高くなってきている証であり、喜ばしいことでもあります。

だって、そのおかげで足を止めることなく向上し続けてこられたのだし、実際に生きる場所、ステージも変わっていっているのを体感しています。

ただ、その目標と、現実的な結果との差に、愕然とすることも多くなりました。

そんな時に、フィギュアスケートNHK杯での宇野昌磨選手と、ステファン・ランビエールコーチとのやり取りに関する記事と出会いました。

いくつかありましたが、宇野選手が優勝という結果を手にした後のこちらの記事をご紹介しておきます↓

世界で戦う選手と自身を重ねるなんておこがましい……なんてことは無くて。

これは、完璧主義を自認している全ての方にとって、もちろんそれ以外のどんな方にとっても、とても参考になり、何より救われるものなのではないかなと。

公式練習で思うような滑りが出来ないご自身に苛立ちを見せる宇野選手を、練習後にコーチがレストランに呼び出し、言葉をかけたそう。

「完璧を求めすぎないように。完璧というのは一つひとつやった先に待っているもので、目指すものではないよ」(Numberより引用)

実はこのやり取り、先日すでに目にして、とても印象的だったので心に残ってはいたのですが…

その数日後、私自身の様々な不調による、思い描くものを生み出せないもどかしさと苛立ちに、鬱々とした気持ちがまさに頂点を極めようとしていた頃。

私がメンタルコーチと仰ぐ方が声をかけてくれました。

「出来ない自分を許してあげて。」

「今はどうしたってその結果なのだから。」

と。

その言葉をきっかけに、先述の宇野選手についてのことがぶわぁーっと思い出され、点が線になるかのように繋がっていき、自分のことに置き換えて腑に落とすことが出来たのでした。

そこでやっと、最初に書いた通り、100%元気な私が出せるものと、何かを抱えた私が出せるものに差があるのは、当たり前だよね、と気づけたのです。

もちろん表現者として、お金をいただいて芸事の世界に生きるものとして、そんなことは関係なくいつだって理想の100%を出すのが当然だ!!!…と思いたくなってしまう気持ちは消えませんが、

それでも現実的に考えたら、無理なものは無理なのです。

その中で、工夫を凝らし、最善を尽くし、それだけでも心はいつも以上に頑張っています、そうして出す結果というものは、その時の100%であることに違いはないのです。

人生や、体調や、心、全てには波があります。

その波の中、いつも同じ基準のものを生み出す訓練はしてきたつもりですし、出来る限りこれからもそうします。

そして変わらず、ぶっ飛んでいると思われようが、私自身が思い描く理想を目指して進んで行きます。

でも、どうしたってその波に抗えない時もあるということ。

そんな中でも《ベストを尽くす》ということ、それこそが尊いことなのだと、ようやく知ることが出来ました。

宇野選手が優勝した後にも「完璧」という言葉では無く「ベスト」と発したこと。

そういうことなんだと思います。

向上心が高いからこそ、今の私がいる。

だけど同時に、そのいつも変わらない向上心と理想の高さが、自分自身を苦しめていることも間違いなくて。

出来ない自分を許し、その時々に出来得るベストを尽くす、そういう生き方をしていきたいです。

完璧とベストは違う…ようで、そのベストこそが本当は完璧なんですけどね!

頭では、文字では理解しているようでも、自分自身の体感としては全然わかっていなかったなぁ。

どんなに不調でも精一杯頑張ってくれていたのに、いつも責めて、がっかりして、ごめんね。

ありがとう、私。

そしてそんな尊い出来事を、生き様を私達に共有してくれた宇野昌磨選手とコーチに、心からありがとうございます。

トップアスリートから学ぶことは、本当に本当にたくさんです…!

(ヘッダー写真 by 野村梨絵)

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