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小説|パラレルハウス|⑦最後の扉―眞子編

眞子は重い扉を入ると
小さな劇場の中にいた。


そこは円形の舞台が中央にあり、周りを観客が囲む形の場所だった。

(どこかで来たことあるような、、、)


辺りを見回すと、前の方に見覚えのある人が独り座っていた。
だんだん近づくと、その人が明だということがわかった。

「明?!!何してるの!?」

振り向いた明も少し驚いた様子だった。

「眞子!!なんでここに?」
「それは、こっちのセリフだよぉ!
全然トイレから出てこないから、先に入ったけど、明がいなくて、めちゃくちゃ不安だったんだから〜」

すると、ガタガタ物を運ぶ音と一緒に向こうから何人かの人が歩いてきた。

「あ、眞子!何してるの?!」

話しかけたのは、劇団の先輩のさやかだった。
「今日は大事なリハなのに来ないし、電話も繋がらないから心配して、後で家に行こうか皆で話してたとこなのに。。大丈夫??」

眞子「さやか先輩!!」
(ということは、もう日付はパラレルハウスの次の次の日?)

眞子は一気に現実に引き戻された。
パラレルハウスに入る日の3日後には、新しい舞台の初日の予定だった。

さやか「彼、知合い?」
明から少し離れた場所にさやかは眞子を呼出し話した。

眞子「えぇ、まぁ、、、」
さやか「さっき、少しリハしてたんだけど、私たちが来る前からいたみたいで、ずっと席を離れないから、何か関係者かと思って話しかけなかったんだけど、、、眞子の知合いなら良かった。」
眞子「さやかさん、ところで、、啓太先輩は、、?」
さやか「けいた??誰のこと?」
「それより眞子、今からリハ参加できる?」

(啓太はここにはいないらしい・・・)

眞子「あ💦はい!大丈夫です!!」

眞子は今まで懸命に稽古してきて、ようやくセリフのある役ももらえて、何としてでも成功させたい舞台だった。眞子はいつも中條啓太が優しくしてくれてたから頑張ってこれた。眞子は啓太がいないことに少し不安を感じたが、前日の大事なリハを休むなんてありえなかった。
迷わず眞子はリハの準備に入った。

舞台監督「じゃあ、スタートするよ!」
「音響、大丈夫ー?」
・・・

リハーサルが始まった。

それぞれの迫力ある演技に明は魅入っていた。あまりの楽しさに明はトイレも行かずにずっと見ていた。

***

眞子「明、、、あーきーら!!」

突然、名前を呼ばれて明は驚いた。
明「ごめん!俺、、、、」
眞子「もう、終わったよ。明、終わってからもずっといたんだね。大丈夫?」
明「う、うん。。眞子、いつもこんな感じの練習してるの?!」
眞子「うん、まぁ練習というか、仕事というか、、、一応私、女優志望なんだけど(`ーωー´)イラッ」
明「あ、ごめん、そういう意味じゃなくて、、、、δ(´д`; )この舞台の台本って、誰かの本とかでつくるの?」
眞子「いや、まぁ脚本家さんとかいるから・・・」

眞子は明に舞台のことを色々話した。
思い返せば、明に舞台の話とか劇団のこととか、こんなに話したことなかった。眞子は明がこんなに興味持ってくれるとは思わなかった。
今回の舞台で初めて役者らしいセリフももらえて、もう少し慣れたら明を呼ぼうと思っていたから、こんな形で明に役者としての自分を見てもらうことになるとは思っていなかった。

明「俺、、脚本、書いてみたい。。」
眞子「え?!」
明の突然の言葉に眞子はただ驚いた。

眞子「脚本って、、、明、そういうことした事あるの?」
明「ないよ。ただ、、、書きたいって思った。」
眞子「う、うん。いいんじゃない。。」

明も自分が何を言ってるのか、よく分からなかった。ただ心にあったことを、言葉にしただけだった。

「そろそろ閉館するので、いいですか?」

劇場の関係者が眞子たちに言った。

眞子「あ、はい!すみません!もう出ます」

2人はあわてて席を立ち、手をつなぎながらホールの外をめざした。
眞子は明の手を離さないように意識した。


そして明は外に出るための扉を開いた。


****

扉を出ると2人は薄暗い部屋の中にいた。



部屋の中には3つの扉が並んでた。
そこには数字が書いてあった。

「1」「2」「3」

2人はしばらく無言で扉を眺めていた。



はじめに話し始めたのは眞子だった。

眞子「私、、またお母さんに会いたいってずっと思ってた。。。」

「だけど、お母さんはここに居た。ずっと。。。」
眞子は自分の手を胸にあてた。

「私、今まで全然気づいてなかった。。。」

明「俺は、、、脚本書いて、それをいつか眞子に演じてもらいたい。」

2人は目を合わせた。

どの扉に行くかは決まっていた。


2人は手を繋いで扉に向かって歩き始めた。


そして扉を開いた。
眩しい光とともにシャッター音のような音が聞こえた。


外が見える入口のようなところへ2人は導かれるままに歩いた。


****


外へ出ると黒服が立っていた。

黒服「お疲れさまでした。パラレルハウスはいかがでしたでしょうか。お手荷物の番号札をいただけますか。」

明は黒服に番号札を渡した。

黒服「少々お待ち下さい」

スタスタと黒服はその場を離れたが、少しすると手荷物を持ってすぐに戻ってきた。

黒服「こちらがお手荷物になります。もし少し休憩したいようでしたら、あちらにスペースがありますので、ご自由に休憩してからお帰りください。それでは、本日はパラレルハウスへご来館、ありがとうございました。」

黒服は一礼すると、どこかへ行ってしまった。


2人は休憩スペースに行った。


明「眞子、ありがとう。。。俺、人生、舐めてた。。。眞子たちが一生懸命、稽古してるのをみて、自分がどれだけちっぽけなくせに、傲慢だったか痛感して、恥ずかしくなった。」

眞子「ありがとうって、私何もしてないよ。私こそ、いつも誰かに頼ろうとばかりしてたのかもって事に気づいた。いつもあるものに気づかないで、自分にないものばかり、誰かを通じて埋めようとしていたのかも。」


パラレルハウスの外は明るく太陽の光が降り注いでいた。


明と眞子は明るい陽の光を浴びながら、パラレルハウスをあとにした。。。



おしまい♡♡


******

前回の記事はこちら

眞子編だけを集めました⤵︎⤵︎⤵︎

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