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小説|パラレルハウス|⑥2つの扉―眞子編

眞子は入口の中に入った。

「明?!いる?」

「・・・・・」


返事が全くない。。

眞子は一気に不安になった。
入口前に戻ろうと思い、扉を開けようとしたが、全く開かない。

(え、、どおしよぉ(T_T))

気づいたら眞子の目の前に数字の「9」と書かれた大きな扉が2つあった。

(どっちか選べってこと?)
(なんで、明いないの•́ω•̀)?)

じっとしていると不安になるばかりなので、泣きそうになりながら、とりあえず左側の扉を開けることにした。


そして意を決して、眞子は再び扉の中に入っていった。。。


*****


扉を開けて入ると、眞子は自分の部屋にいた。


(あれ?なんで?!)


眞子は状況の把握ができないまま、何が何だかよく分からなくなっていた。
そんな眞子の気持ちとは裏腹に
外は明るく、窓からは陽の光がさしていた。


眞子は本当に自分の部屋か確かめるように、引出しを開けたりしながら部屋中を歩き回った。


「眞子〜?!いるのー??」


家の中から、聞き覚えのある声が聞こえる。


「眞子〜??」
眞子の部屋の扉が開いた。

ガシャ。


そこには、6年前に亡くなったはずの母が立っていた。

眞子「お、おかあさん、、、、」
母「眞子ー、いたのね!昨日は全然帰ってこないから、いないかと思ってたわ。今日はお芝居のお稽古はあるの?」

眞子「おかあさん、、、なんで、、、、、」

母「なんでって、ご飯用意するのに、いるかいらないか教えてもらいたいからだけど、、」

母の普通すぎる受け応えに、眞子は動揺した。

眞子「エ、、、キョウワ、、ケイコ、ナイヨ。。」
母「そうなのね。また出かけるなら教えてね。」

母はそういうと、キッチンへと戻っていった。

眞子は何が起きたのか、全く把握できなかった。死んだはずの母が目の前で普通に喋っている姿を見て、訳がわからなくなっていた。

落ち着かない気持ちを抑えるために眞子は大きく深呼吸をした。気持ちを整えて、眞子はキッチンにいる母のところへいった。

眞子「お母さん、、、あのさ、、私が高校生の時に病気で入院してた、よね。。」
母「うん、それがどおしたの?」
眞子「あれから、病気は、もう治ったの?」
母「あれ?話してなかったかしら。あの時退院してからしばらく病院通いしてたでしょ。それでね、先月ね、先生から、”もう通わなくても大丈夫です”って言われたのよ♪(^^)」
眞子「え!?治ったってこと?」
母「そういうこと♪」

眞子の眼から一気に涙が溢れてきた。溢れる涙と感情が抑えきれず、母親に抱きついた。

母「なに、どおしたの」

眞子「お母さんの病気が良くなって、嬉しい。。神さまありがとう。。。」

母親の服をぬらしながら、子供のように泣きじゃくる眞子を母は優しく受けとめた。

母「ありがとう。眞子は優しいね。。。
お母さんも嬉しいよ」
母は眞子の頭を撫でながら、一緒に涙を流した。

その後しばらく眞子と母親は、兄や妹の話をしながら昔話に花を咲かせた。

眞子は母と話して、久しぶりに心から笑っている自分に気づいた。。
(私、こんな風に笑ったの久しぶりかも。。)


しばらく母と話し込んだあとに「部屋にいるね」と言い、眞子は自分の部屋に戻った。


(なんで、母がいるんだろう。。。。でも嬉しい♪)
ベッドに横になりながら、幸せな気持ちに浸っていた。
眞子はだんだんと眠くなってきた。。。。


****


そして、気づいたら、、、
また別の部屋にいた。


(あ、そうだった。パラレルハウスにいるんだった。。)


部屋の真ん中には小さなテーブルがあった。
その上に1枚の紙が置いてあった。

そこには
「ドチラヲエラブ?」
と書かれていた。

最初と違い、眞子にはもう不安はなかった。さっきの幸せな気持ちがずっと続いていたからだ。
そして紙から顔を上げると、目の前には階段が2つあった。



上りの階段と下りの階段。


眞子は母がいるという心の支えができ、それが、どちらを選んでも怖くない気持ちにさせてくれた。

(せっかくなら、上りの階段行こ♪)

眞子はまた母に会えるかもと期待を込めて、階段を上がって行った。


ところがなかなか終わりがない階段だった。


しばらく上って、眞子は少し疲れてきた。

(・・・まだ、階段上がらなきゃダメなの?)

いい加減少し休憩しようかと、途中で座り込んだ。

(引き返すにも、かなり登っちゃったしなぁ。。。。。も少し頑張るか。。)


しばらく座り込んだ後、”よし、また上ろう”と顔を上げると目の前に扉が現れた。


(あ、また扉。)


とりあえず、入ってみることにした。


今回はかなり重い扉で開けにくかった。
眞子は体重を精一杯かけて、なんとか入ることができた。


つづく……

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