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祖父が魔法で作ったラーメン

子供のころ、夏休みは祖父と伯父が住む家に泊まりに行ってた。

平日の昼間は、祖父母が僕や従兄弟たちを、つまり孫の面倒を見てくれてた。

ある日、祖父から 今から昼食のインスタントラーメンを作るよ と言われたが、自分の記憶ではラーメンの買い置きが無かったような気がしたので、ラーメンどこにあるの?と聞いたら

これだよ って見せてくれた袋めんのラベルにはどう見ても やきそば と書いてあった。

てっきり祖父は現代のインスタント麺には、やきそば もあることを知らなくてラーメンだと思い込んで作ろうとしてると思い、

これはラーメンじゃないよ と教えて差し上げたところ、

あらためて これはラーメンだよ と言われた。

無印良品よりもシンプルで写真も使っていないデザインの包装で薄青地に白で やきそば と書いてあるだけなので祖父が間違えるのも無理はないのだが、かわいい孫がいくら ラーメンではない と言っても、このこは何を言っているのか?と笑って取り合ってくれなかった。

特に険悪になるまで主張する事でも無かったので、 やきそばが出来上がってもしらないぞ と思いつつ、僕はまた従兄弟たちと何かをして遊んでいたら、祖父から ラーメンができたぞ、みんなおいで と言われた。

そうやってキッチンのテーブルに着くと、それはそれは見事なインスタントラーメンが人数分 どんぶりに入って出来上がっていた。

ちょっと不思議に思いつつも食べてみたら普通のおいしいインスタントラーメンだった。本当においしいインスタントラーメンだった。

食べ終わるころには不思議に思ったことも全部忘れてまた従兄弟たちと遊んで過ごした。

思い返すと、わざわざスープを作るような時間は無かった。もしかしたらスープの素になる調味料があったのかもしれないが、あれほど普通のインスタントラーメンとして違和感なく食べれるものだろうか という疑問が残る。それに祖父は普段ほとんどラーメンさえ作らない人だった。

そもそも自分の勘違いで祖父は最初からインスタントラーメンを用意してインスタントラーメンを作っていたのに僕が勝手に これはやきそばだ と言い出したり不思議がっていただけかもしれない。そうだとしたら相当変な子供に見えていただろう。

あの時どうやってラーメンを作ったのだろうか。大人になるにつれ余計気になってきたが、いざそういう事を聞いても祖父が全然覚えていなくて変な空気になるのがめんどくさくて聞かなかった。そうこうしているうちに聞くこともできなくなってしまった。

これに限らず、昔の事を思い出した時に矛盾しているというか、なんでそうなったか分からないことが時々ある。論理的に説明できないことがある。

記憶違いなのか、偽の記憶を植え付けられたのか、その時々で違うパラレルワールドで過ごしてきたのか…と考え込んでしまう。

一応の結論としては、一番大好きだった祖父が僕たちの為に魔法を使っておいしいラーメンを作ってくれたんだ っていう自分の子供のころに起こった不思議なお話ということにしている。





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