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総理大臣のいない国家、それが日本!!(憲法夜話)17

こうすればクーデターは起こせる!

それにしても国家意思の決定において、国会と内閣に加えて、天皇の存在が不可欠であるという現行憲法の規定は、実は危険そのものだと言える。

というのも、外務大臣をクビにするなら、短期間の空白で済むわけだが、この規定を徹底的に悪用すれば、国会も内閣も完全に無力化することが可能になるからである。

もし、筆者がカルト教団の教祖で、死ぬことを恐れない信者が周りにいて、クーデターによって日本をわがものにしようと思えば、地下鉄でサリンをまくなどといった方法は取らなくてよいのだ。

もっと簡単な方法でクーデターは起こせることを知っているからである。

その方法を詳細に書くことは控えるが、要は天皇と内閣、そして天皇と国会との連絡を完全に遮断するだけでよい。

交通と通信を封鎖してしまうのである。

これさえまず行なっておけば、あとはやり放題である。

例えば内閣総理大臣を暗殺したとする(安倍首相ごめんなさい)。

今の憲法の規定では、内閣総理大臣が死ねば、その後継者が国会で指名されるまで、総理大臣は空位になる。

総理大臣がいなければ、日本の行政機関は事実上、そこでストップする。

たとえば、内閣総理大臣を最高指揮官とする自衛隊は一歩も動くこともできなくなる。

では、そこで臨時国会を召集して、後継総理大臣を決めればいいかといえば、そうもいかない。

なぜなら、以前述べたように国会を開くには、天皇による召集がその要件となっている。

天皇と国会との連絡が不可能になれば、国会の召集はできなくなる。

それではいくら議員が集まっても正式な国会とはならないし、ましてや新総理大臣を成立させることなど、できもしないわけである。

かくのごとく日本の中央政府は、簡単に機能停止に追い込むことができるというわけだ。

この危険性について、日本を代表する天才学者小室直樹先生は40年前から警告を鳴らしているが、いまだに憲法改正はおろか関係法の整備すらなされていない。

そもそも「これは大変な欠陥である」という認識すらされていないのが実際だろう。

このような事態を防ぐために、戦前の日本では実に緻密に規定がなされていた。

天皇の非常大権が定められていたので、たとえ閣僚が全滅しようと、国会議事堂が封鎖されようと国家としての意思決定は可能であった。

戒厳令があったのも、それゆえである。

ちなみに戒厳令の発令には、枢密院に対する指紋だけでよヵった。

議会が封鎖されたり、混乱していても関係ない。

また、枢密院も機能していなければ天皇の非常大権で改変れいを決定してもよかった。

それが実際に役に立ったのは、2・26事件の時である。

この事件では、総理大臣の安否も確認できず、しかも都内の交通も電話も完全に反乱軍の統制下にあったが、それでも天皇の大権によって戒厳令が出され、反乱軍を鎮圧することができたのである。

このように政府や国会の機能が麻痺しても、戦前の日本では天皇の意思決定という道が残されていた。

しかるに、今、同じような事件が起きれば、日本は完全に麻痺してしまう。

ところが、こうした憲法の欠陥を修正しようという議論はいっこうに生まれてこない。

また本気で研究する人もいない。

これはまことに困った話である。

国家としての危機意識が欠落しているのだ。

国家意思の決定には、一瞬の「空白時間」も許されない。

これは主権国家としての鉄則である。

たとえば、某国が日本を急襲し、永田町や霞ヶ関一帯を廃墟にしてしまったとする。

このとき、何らかの形で中央政府の機能を存続していなければ、その時点で日本は主権国家としての国際的地位を失ってしまう。

中央政府が機能していなければ、たとえ国民の大部分が無傷であっても、その国は国際社会からは「消滅」したも同然になるのである。

つづく

【参考文献】『日本国憲法の問題点』小室直樹著 (集英社)

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