[12]パイロットまで、あと2年。
外出するには面倒な手順が必要だ。
まず平日に外出申請を行う。
これはフォーマットに外出する日を書いて、
教官に提出すればいい。
俺たちは土日しか基地の外に出れないから
書かなきゃいけないことも大してない。
しかし県外へ移動するには
もっと詳細な行動計画が必要になる。
いつ基地を出て交通機関は何を利用して
帰りは何時になるのか報告する必要がある。
面倒なのは上官に見せなければ
許可をもらえないと言うことだ。
これが毎回質問攻めに合うから
下手に嘘を吐こうものなら後が怖い。
しかしながら、
年に数回はきつい訓練に耐えかねて
基地から逃亡するものが出てくる。
記録が必要なのは必然なのかもしれない。
作成には自習室のパソコンを使用する。
俺とブン太、東川と詩音が昼休みに集まった。
「ありがとう、詩音様!
このために頑張ったんだよ!」
「友達もちょうど彼氏が欲しいらしくって
話したら喜んでっていってたわ。
福岡まで行くことにはなるけど。」
「全くもって問題なし!
喜んで行かせてもらいます!
なな!それよりみんな可愛いの?」
「はぁ?普通そんなこと聞く?
下心丸出しのサルなんか相手にされないわよ。」
「だーいじょうぶだって!
当日はうまくやるからさ!」
「本当かしら?
この間の遠泳もあんたたちが
1番騒がしくて迷惑だったし。
前橋の猿芝居だってバレバレだったわよ。」
迫真の演技だったのに見抜かれてたのか。
そういえば詩音はトイレどうしたんだ?
「そういえばお前はトイレどうしたんだ?」
考えた側からブン太が口に出す。
それは禁句だろ…。
「レディにそんなこと聞くな!」
一喝された。
あいつ顔はいいんだから
もう少し発言に注意すれば確実にモテるのに。
「それはそうと、東川。
行動計画作ってもらって悪いな」
俺はパソコンで行動計画を作る
東川の背中に声をかける。
行動計画は代表者が1人作成すれば
後の人間は同行者として1枚で済むのだ。
「いいんだよ。色々あったけど
遠泳で助けてくれたのは事実だし、
合コンにも連れてってくれるからさ。」
東川が照れながら答える。
俺も合コンは初参加。
「いよいよパリピの仲間入りか。」
「心の声ダダ漏れ。
そんなキモかったら当日は撃沈ね」
「く、、!」
「悔しかったら言い返してごらん?」
経験がないから返す言葉がない。
俺は尻に敷かれるタイプなのか。
それ以前な気もするが、
詩音の気が強すぎるからかもしれない。
「で?できたの?」
詩音もパソコンを覗き込もうと
東川の肩に手をかける。
ビクッ!
東川が固まる。
「ちょっと、何よ。
少し触っただけじゃない。
あんた女子と手くらい繋いだことあるのよね?」
「な、な、ないよ」
「えぇ!マジ?今どきそんな男子いるのね。
となると、どうせ前橋もそうなんでしょ?」
「はいそうです。その通りです。」
詩音が憐れみの目で見つめる。
くそ〜、絶対今回で彼女作ってやるからな!
俺はこの前の訓練よりも硬い意思で誓った。
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