モルディブ・リッツ滞在記7【もうひとつの島】
▽うやうやしい挨拶
部屋で一息ついてから、島内を散策してみた。
もちろん、どこをどう切り取っても画になるのだが……ブランコや大きなチェスなど、明らかに撮影向きのスポットもいくつかあった。
僕らも撮ってみる。
おぉ。見事な出来映え。
旅行に合わせて、携帯をiPhoneに替えてよかった。旅の記録には欠かせない、心強い助手である。
リッツのスタッフたちは、庭師や改修工事の作業員に至るまで、ゲストが通るたびに胸に手を当てて、小さくお辞儀をしてくれる。
まるで王様に対するように、うやうやしい。
ただ、これにはちょっと参った。ただの会社員夫婦が、こんな厚遇を受けていいものか……面映ゆい感じがする。
こうした「手厚すぎる」もてなしにおそれをなした僕らは、一旦、逃げるようにして隣の島に遊びに行くことにした。
到着早々、忙しいものだ。こういうのを貧乏性と言うのだろうか。
▽別の島で、最初の食事
さきほどの発着所から、再び小さな舟に乗り込んだ。
出航のスケジュールは約1時間おきで、目的の”Fari Marina Village”には15分程度で到着する。この島は、おそらく別のリゾートが運営しているようだ。
レストランがいくつかあり、夜になると大小のランタンが暗がりに浮かび上がる。幻想的な、良い雰囲気になる。
中心部の広場にはハンバーガーやジェラートなどのフードトラックが3、4台並び、そこでも食事が楽しめる。
リッツのレストランやバーと比べて値段はやや良心的だが、やはり「リゾート価格」であることには変わらない。僕たちはフードトラックでハンバーガーとジェラートの「コンボ」を頼んで、2人で分け合った。
ハンバーガーが美味しいのはもちろん、ジェラートではトッピングもしてくれた。
ココナッツ風味のアイスに、クッキーを砕いたような粉と、ハリボーの熊の形をしたグミを大量に入れてもらう。あぁ、なんて贅沢な……。
ハリボーと言えば、子どもの頃は高くて贅沢なグミだった。しかし最近は国内のお菓子も価格がつり上がってきており、相対的に手が届きやすくなっている。
僕の中でブームになりつつあるハリボー。最近、パッケージの「合成着色料不使用」という記載に気付いたのは、個人的にここ数年で最大の衝撃であった。
閑話休題。
ハリボー、もとい、ジェラートをスプーンですくって一口。おいしい。
滑らかなアイスに、クッキーのもそもそした感じ、それにグミの噛みごたえが加わり、得も言われぬ複雑な食感である。これがモルディブの味か。
日差しが少しずつ和らぎ、いよいよ心地よくなってくる。本当にリゾートに来たんだなぁと、この日何回目かの感慨が押し寄せた。
「うまい、うまい」と言いながら食べていると、妻から「さっきからハリボーばっか食べてるじゃん」と手厳しい一言が飛んでくる。
聞こえないフリをして、なおも食べ続けた。おいしい。おいしい。
(続き)
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