2023年3月の記事一覧
読書感想-ルポ トラックドライバー
僕たちの日常は物流に支えられている。外からは見えにくいそのエッセンシャルワーカーが、危機に瀕している
■トラックの助手席で取材を重ねた骨太なルポ。貨物車を操るのは、掛け値なしに高度な作業だ。乗用車を擦った時を思い出してみるといい。あれが大事故になるのだ
■物流業界は2024年から労働規制が強化され、人手不足がより鮮明になる。モノが運べなくなって困るのは、僕たちであることを忘れてはいけない
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読書感想-女神のタクト
好きなことに夢中なだけなのに、壁にぶつかるのはなぜだろう。音楽と向き合う人々の姿に、そんなことを思った
■挫折した人々が集う、小さなオーケストラ。そこに加わったのが少々乱暴な主人公の明菜と、世界の舞台から転落した天才指揮者の拓斗だった。彼らは一歩ずつ、音楽と人生の再生を目指す
■キャラクターの力を借りて、物語は加速し続ける。数々の障壁もぶっ壊し、前へ。特急列車のような小説だった
■「あんた、
読書感想-不道徳教育講座
本当の話は感興をそぐもので、嘘や噂話には毒があると、三島は言う。その極致が小説だと。「作り話」だと分かりきった上で、毒を身体じゅうに染みこませる
■タイトルの”不”道徳にも、同じ魅力がある。道徳教育講座なら、犬にでも食わせておけばいい。不道徳だからこそ、人間が読み、考える意味がある
■嘘をつけ、約束を守るな、人の失敗を笑え……。目次を見ると「なぜ?」が浮かぶ。その時点で筆者の思うつぼ。卓越した
読書感想-傲慢と善良
愛は巡りあうものでなく、育てるもの。だから意志と努力が要る。相手を大切にし、関係を築こうとする決意が要る
■婚活で知り合った婚約者が失踪した。ストーカーの影を追い、男は花嫁の過去を知る。見つかったのは呪縛だ。娘を囲い込んだ親の傲慢と善良が、人生を呪っていた
■盤面はひっくり返り、花嫁のストーリーに。関係を断った見知らぬ土地で、彼女が自分を築く過程も読み応えがある
■傲慢に目を覆われ、善良に意