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読書感想

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読んだ本の感想。主に読書メーターから転載。たまに長いものも。
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2022年1月の記事一覧

読書感想-「日本語の文章」外山滋比古

読書感想-「日本語の文章」外山滋比古

おぼえのある著者だと思えば、「思考の整理学」の人だ。品があるのに面白い。こんな文が書けたらいいな。

■「自由に」書けるのが作文の醍醐味と思っていたが、そこを筆者は憂えている。暗唱や音読で「型」を身につけることもせずに、自由も独創もないと。

■たしかに、昔の人はやたらと文章が上手い。文意の分からぬ漢文を延々と読みくだす教育も、苦いだけの効果はあるようだ。

■名文を書くには読者を見据えることだ、

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読書感想-「炎環」永井路子

読書感想-「炎環」永井路子

主人公が切り替わる連作短編は、話全体も薄くなりやすい。しかしこの「炎環」はまったく逆だ

■主人公が替わり、新たな話が進むたび、読者はぐっと歴史の深みに潜ってゆく手応えを感じる。ほんとうの主人公は「鎌倉幕府」という、権謀術数がうずまく化け物だと言える

■「一人一人が主役のつもりでひしめきあい傷つけあううちに、いつの間にか流れが変えられてゆく」……。著者は、自身が綴った歴史をこう表現した。ほれぼれ

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読書感想-「私の個人主義」夏目漱石

読書感想-「私の個人主義」夏目漱石

昔は講演会も立派なマス・コミュニケーションだったのかな。それが数百円の古本で読める。良い時代だ。

■漱石の指摘は、ほとんど現代に通じるものばかり。専門家のタコツボ化や、世間に合わせない人を誹る風潮など、明治の人なのに「隔世の感」を思わせない。

■どの講演も面白いが、表題「私の個人主義」は何度も立ち返りたい。「自分の個性を発揮するなら、他人の個性も尊重しなければならない」という。

■それを未来

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