見出し画像

2020年12月新刊|『スケッチ&フィニッシュ ミルトン・グレイザーのデザイン作法』


画像1


皆さん、このロゴをどこかで目にしたことはありませんか?

ニューヨーク州観光局のロゴマーク1977年制作_sのコピー

あるときはTシャツにでっかくプリントされていたり、
あるときは同僚の旅行のお土産にもらったマグカップに印刷されていたり、
あるときは「これは明らかにパチモンでは?」というパロディ商品になっていたり。

国境を超えて世界中に愛されるこのロゴをつくったのは、ニューヨーク州ブロンクス出身、グラフィックデザイン界の巨匠「ミルトン・グレイザー(Milton Glaser)」です。

画像13

Photo/Getty Images


作品集は過去に何冊か出版しているグレイザー氏ですが、本書は彼がはじめて書いた「デザイン論集」。
そして同時に、このデザイン論集が彼にとって最後の作品となりました。
グレイザー氏は自身の誕生日である今年の6月26日に、91歳で逝去されました。


本書ではグレイザー氏自らが、作品のスケッチから仕上げまでの創造的なプロセスを説明しています。

グラフィックのみならず、展示会からインテリア、プロダクトデザインまで総合的に手がけてきたグレイザー氏。
彼の代表作からあまり知られていないものまで、さまざまなプロジェクトを例にその制作背景が語られています。


「I♥NY」ロゴ誕生のストーリー

ニューヨーク州観光局のロゴマーク1977年制作_s

ニューヨーク州観光局のロゴマーク(1977年制作)


誰もが知る「I♥NY」ロゴ誕生の裏には、意外なストーリーが隠されていました。

観光客数の世界的上位にランクインするニューヨーク。
しかし1960年代後半から1970年代半ばのこの都市は、ドラッグや売春、強盗や暴動が起こり、過去最高の犯罪率を記録する“危険な街”でした。
荒廃した街は観光客が離れ、財政危機に。

そこでイメージ回復のため、1977年にNY州の観光キャンペーンを行うことになり、ロゴ制作のデザイナーに抜擢されたのがグレイザー氏でした。

画像12

 Photo by Artem Zhukov on Unsplash


当初のデザインは「I♥NY」とは全くちがったものでした。
しかし、彼が仕事に向かうタクシーの中でふと、この「I♥NY」のイメージが閃いたのです。

グレイザー氏は本書で、当時のことをこのように記しています。

「このアイデアは、制作したロゴマークをニューヨーク州に認められた数日後に、タクシーに乗っていたとき思いついた。クライアントとの打ち合わせに向かう途中に、いたずら書きをしていたら、別のアイデアが心に浮かんだのだ。私はどうにかビル・ドイル(ニューヨーク州商務省の幹部)を説得して新たなデザインを検討させ、承認にこぎ着けた。もう少しで世に出なかったかもしれない、この小さな走り書きは、私の制作した中で最もいろいろなところで流用されるデザインとなった」(本文より)


グレイザー氏はニューヨークの公共の財産になるならと、ロゴのデザイン料は受け取りませんでした。

キャンペーンは大成功。
「アイ ラブ ニューヨーク」のキャッチフレーズがCMで流れ、ロゴはさまざまなグッズに使用され、観光客だけではなく市民も街への愛着を取り戻していきました。

ロゴは誕生から40年以上経った現在も、ニューヨークの観光キャンペーンに使用されています。


スケッチと完成作品、約200点を収録

そのほか、ボブ・ディランが1967 年に発表したベスト・アルバム『Bob Dylan's Greatest Hits』の同封ポスターをはじめとするミュージシャンの作品や、出版物の装丁、商品広告や啓発ポスター、オブジェのデザインなど多岐にわたるスケッチと完成作品、合計約200点を見開きごとに紹介しています。

『ディラン』コロンビア・レコーズのポスター1967年制作_s

『ディラン』コロンビア・レコーズのポスター(1967年制作)


『アレサ・フランクリン』ポスター1968年制作_s

『アレサ・フランクリン』ポスター(1968年制作)


ポピー・レコーズのポスター1967年制作_s

ポピー・レコーズのポスター(1967年制作)


『エンジェルス・イン・アメリカ:ペレストロイカ』イラスト1993年制作_s

『エンジェルス・イン・アメリカ:ペレストロイカ』イラスト(1993年制作)


『読書の喜び』ザ・ブック・オブ・ザ・マンス・クラブのポスター1986年制作_s

『読書の喜び』ザ・ブック・オブ・ザ・マンス・クラブのポスター(1986年制作)


ジュリアード音楽院のポスター1989年制作_s

ジュリアード音楽院のポスター(1989年制作)


『教える人たち』シンプソン・ペーパー・カンパニーのパンフレットのイラスト1988年制作_s

『教える人たち』シンプソン・ペーパー・カンパニーのパンフレットのイラスト(1988年制作)


『クロード・モネの空想生活』1982制作_s

『クロード・モネの空想生活』(1982年制作)



多くの日本のデザイナーやイラストレーターにも影響を与えたグレイザー氏によるグラフィックデザイン実用書は、デザイナーのみならず多種多様なクリエイターのためのモノづくりのヒントが詰まっているでしょう。

また、帯には53年来の旧友であるグラフィックデザイナー・横尾忠則さんからのコメントを寄せています。
横尾先生の言葉、グッときます……。

ぜひ書店でお手にとってみてください。


ー・ー・ー・ー

画像14

Photo/Getty Images

《著者情報》
ミルトン・グレイザー(Milton Glaser)

アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク、ブロンクス出身。
グラフィックデザイン史の中で最も有名なグラフィックデザイナーの一人。1954 年に革命的なプッシュピン・スタジオを共同設立、1968 年にクレイ・フェルカーと「ニューヨーク・マガジン」を創刊、1974 年にミルトン・グレイザー社を設立、1983 年にはウォルター・バーナードと共同で出版デザイン会社WBMG を設立した。
2004 年にクーパー・ヒューイット国立デザイン博物館から特別功労賞、2011 年にはフルブライト協会から生涯功労賞に選ばれ、2009年にはグラフィックデザイナーとして初めて全米芸術勲章を受賞。

●Webサイトhttps://www.miltonglaser.com/
《書籍情報》
スケッチ&フィニッシュ ミルトン・グレイザーのデザイン作法

編著:ミルトン・グレイザー
発売日:2020 年12 月23 日(水)
定価:本体価格2,700 円(+税)
仕様: B5 変形(241mm×165mm)/並製/オールカラー
ページ:168 ページ
ISBN:978-4-908406-77-5


ー・ー・ー・ー

現在一部の書店様で刊行特典としてステッカーをプレゼント!
リンク先に取り扱い店舗様をまとめています。

数に限りがございますので、ぜひこの機会にお買い求めください。

※在庫については各書店様へお問い合わせください。
※先行販売と、通常発売の書籍は、同じものです。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?