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フラワーシャワー

 今日昔の職場の同期が結婚式を挙げたので、出席するために東京まで行った。
 彼と会うのは久しぶりだったけれど、彼は僕の親友の一人だ。

 だけど今でも僕のパートナーが同性であることは言えていない。
 まだ僕がどう生きようかぼんやりしていた時に出会ったから、そのままぼんやり言えずにここまで来てしまった。

 そして、これは本当に偶然なんだけれど、同じ日、友人の式場から徒歩で行ける会場で、別の結婚式が行われた。
 それは同性婚のイベントだった。

 同性婚はまだ日本では認められてないけれど、みんなで同性カップルの結婚式を祝福しようということで、何組かの女性同士のカップルや男性同士のカップルの挙式が行われたようだ。

 僕のパートナーはそちらの同性婚のイベントに申し込み、出席することになった。だから東京まで僕と一緒に来てくれて、最寄り駅からそれぞれの会場に向かった形だ。

 当日は少しだけ雨が降っていた。
 僕の友人の結婚式は、幻想的な音楽が流れる教会で行われた。

 いつも面白いことばっかり言ってる友人が、誇らしげな顔で、奥さんの手を取った時、胸に込み上げるものがあった。

 それぞれの親御さんの優しい涙も、賛美歌も、フラワーシャワーを作る僕ら友人も、何もかも綺麗だなと思った。

 そして、その優しい気持ちのまま、その式と同じ時間の中で、もう一つの結婚式が行われていることも忘れないでいようと思った。

 今僕が見ている愛も、僕のパートナーが祝っている愛も、違いを探せばいくつも見つかるんだろう。それぞれの人生が全く同じなんてありえる訳がない。

 そんでも、穏やかな彼らの笑顔に、組まれた腕の温もりに、彼らの母親の涙に、同じ祈りを感じずにはいられない。僕らは本当はみんな同じものを守ろうとしているんだってことを、信じずにはいられない。

 どちらが素晴らしいとか、どちらかが正しいとか、誰かの幸せを天秤で測れるわけがない。そんな資格誰にもない。

 その代わりに、同じ強さで、どちらの幸せもぐっと抱き締めたい。色んな出来事を見てきたけれど、その気持ちに一つも曇りがないことが僕の人生の誇りだ。

 式が終わった後、パートナーを迎えに行ったら、「あんまり良くて泣いちゃった」と笑った。

 雨はほとんど上がっていた。きっとそんで、そうして、どこかでまた虹が生まれるんだろう。

 大切な人の手を取って、雨上がりの、澄んだ明るい空気の中を散歩するように、人生を歩いていけますように、そう願う。

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