今日もごちそうさまでした
角田光代さんの食べ物エッセイ。角田さんのエッセイには安定感がある。これはあくまで個人の感想。というか、こう言った本はどれが一番と言うものはなくて、自分のその時に合う、合わないだと思う。
「肉、脂」大好き角田さんが、羊肉から始まってタン、鶏、卵、豚とまず好きなものと続く。そこから春は筍、山菜、初鰹、アスパラ、夏はもろこし、ナス、ゴーヤ、秋は秋刀魚、栗、きのこ、冬はさつまいも、白菜、蓮根、白子と身近な食材を多く取り上げて書かれている。気を衒ったものはなく、そこにまつわる話がどれも面白い。
子供の頃は偏食で、お母様もそれを咎めるのではなく、食べられるものを食べれば良いと言う方針だったそうな。それは子供を甘やかせるのではなく、自身が戦中戦後に食で苦労されたからの思いだったとのこと。
角田さん自身20代中盤から料理を覚え、30代で色々なものを食べることに目覚めたという。味覚の変化もあるが、食べることの大変さ、品種改良で食べやすくなったり、加工方法の改善、食べる時のシーンの変化などさまざまな要因で、「これは一生絶対に口にすることはない」と思っていたものが食べられるようになったりする。口にすることはないと思っていたものに箸を伸ばすきっかけは、公的な食事会であったり、疲れて油断していたり、ほんの少しの好奇心だったりするが、その時に自分の記憶が更新されると、これまで避けていたことを悔やむことになる。
自分は「白アスパラ」がこれ。最初に食べた時の、フニャッとした食感と缶詰の匂いが強烈に残った。以来口にすることはなかったし、そもそもこれが食事に出てくること自体がなかった。が、大きくなって食べたホワイトアスパラの衝撃は大きかった。この本では「ホワイトアスパラ革命」と名付けてあり、自分の経験がそのまま書いてあった。
この本はあるサイトに連載だったとあり、今は更新されていないのが残念。また新たな本を探しに行こう・・・